177話 隊長会議①
善なる組織『無限組織・対邪悪殲滅機構』において首脳部の次に重要な部署としては最高戦力と評される『実力部隊』だろう。
主な仕事として悪の組織が行う武力行使を武力で受け止め、悪の要因を殲滅するのが仕事であり、レイム達が戦った精鋭部隊との幾度となく交戦してきている。
その仕事内容から彼らに求められるのは『実力』だ。
最高戦力『実力部隊』の定員は十の部隊で構成され、それぞれが些細な役割を持ち、首脳部の命令で仕事を熟す。
第一部隊『全軍統括隊』
第二部隊『表明騎士隊』
第三部隊『光明聖護隊』
第四部隊『解明解合隊』
第五部隊『砂地彷徨隊』
第六部隊『水景抜刀隊』
第七部隊『暗衣交善隊』
第八部隊『空路機動隊』
第九部隊『焔烈特攻隊』
第十部隊『無滅神罰隊』
現状、欠落状態はないため、十の部隊隊長が集結する。
これを隊長会議と評し、部隊の編成、悪の組織の動きに関する情報共有、欠落部隊への追悼など状況によって頻繁に行われる。
そして今回は定例会議である。
長い机に五つずつの椅子、そこに男四人、女五人、そして一人の少女が椅子の後ろに顕現し、全員が席につく。
「では、定例会議を始めようと思う。まずは現状報告から行こう」
第一部隊『全軍統括隊』の隊長“超越神将”レイルン・レギスレータが仕切り、定例会議が始まった。
「第二部隊、連邦方面の調査の結果、連邦内の騒動以外は何もない」
気だるげに報告するのは、善なる組織の中ではベテランに位置しながら、その容姿は渋い色のコートを着て、緊張は無縁の無気力感を醸し出しながら、ブロンズの髪をオールバックにした男、第二部隊『表明騎士隊』の隊長“表明神将”ガローク・ガルベディスだ。
次に治癒部隊である第三部隊は報告せず、次に続こうとするが、一人の隊長が声を荒げる。
「ふん、どうせ、手がかりはあるわけがない。毎回、そうだろ。接触したとしても逃げられるだからなッ!! 第四部隊でもなければ、無理だろ。そもそも第四部隊が頼みの綱なんだから!!」
第九部隊の隊長“焔烈神将”アルド・レルブレムが怒りに任せて主張する。赤と橙色の制服を纏い、赤髪に獅子の耳と尻尾の特徴を持った少年の怒号に一人の女性が口を挟む。
「アルド!! 静粛になさい。ここは話し合いの場であって己の意見を主張する場所ではありません。第九部隊『焔烈特攻隊』の隊長としての自覚を持ちなさい!!」
それに対する怒号を放ったのは第五部隊『砂地彷徨隊』の隊長“砂地神将”サティア・ルヴァンクス、茶髪のセミロングを一つに結び、白いスーツを身に着け、黒い手袋、キツイ印象を受けるが、それは自分の隊長という立場を自覚しているが故に隙を見せないが、仲間には信頼されている大人の女性である。
「くッ……でも……」
無論、最重要事項が敵対する悪の組織の殲滅であり、その目的のために組織自体を特定する必要がある。
今までで一度は特定して暴いたが、現在は消息不明である。
その理由は悪の組織の大首領、アーヴァル・アルゲージュインが【宇宙的存在】の一角、宇宙の中でも上位存在である『管理者』の権能及び権限で組織の座標を狂わせているため、通常存在では暴かれることは不可能だと思われたが、一度、心星の英雄たち『心星結社』によって暴かれているため、何かしら糸口が確実に存在するだろうが、それ以降に糸口は一切見つかっていないため、悪の組織の要素が観測された際に即座に『実力部隊』を派遣するしかなくなっている。
それにイラつくことは十分、分かるが、この定例会議でもある隊長会議で口論することは間違っている。
「アルド、その気持ちはここにいる全員が持ち合わせているのよ。あなたが騒いだところで悪の組織が顔を出すなんてことはないのだから、冷静になりなさい。地道にやっていくしかないの」
そうアルドを諭すのは黒髪ロング、灰色の瞳、黒を基調とした《パワードスーツ:ドライブドレス》を着用した第八部隊『空路機動隊』の隊長“空路神将”エステル・イレジナスだ。
まだ納得いかないのか、不満そうな顔で椅子に座り、定例会議が再開される。
「え~、はい。第四部隊は~。いつも通り~悪の組織の動向を探っているけど、敢えてバラバラにやっているみたいで、本部なんてわかるはずもないよね~」
赤茶髪のロング、金色の瞳、白衣と黒いタイツ、虫メガネを持った少女、第四部隊『解明解合隊』の隊長“解明神将”エリュシャ・イユールイが個性的な語尾の伸ばしで報告する。
「半分諦めてるじゃねぇか」
アルドの悪態が挟まれるが、第五、第六、第七、第八、第九と報告を終了し、後は第十部隊の報告のみとなった。
「え~、第十部隊は――」
そう、第十部隊『無滅神罰隊』の隊長“無滅神将”ライト・ロウハートが報告しようとした瞬間、またしてもアルドが口を挟んだ。
「もういいだろ。報告なしで定例会議なんてやる必要ないだろ」
また声を上げたことに大人である大半は呆れた表情を浮かべながらも、不満があればすぐに主張するアルドの性格を全員が理解している。
「ねぇ、アルド。今日は一段と不機嫌だけど?」
金色の長髪、青色の瞳、縁に金色が施された聖職者の服装に部分的に鎧を纏い、狐の耳と尻尾を持った美貌溢れる女性、第三部隊『光明聖護隊』の隊長“光明神将”ルーシー・ルフィスティアが優しい一色の声でアルドの様子を純粋に心配している。
「俺はいつも通りだよ」
「まぁ、そうだな」
そうさりげなく同意したのは第七部隊『暗衣交善隊』の隊長“暗衣神将”で、ピチピチな黒のスーツに身を包んだクールな紫髪の女性、テルシャ・オーリウス。
「あ?」
「ん……」
テルシャもどっちかというと外交的で好戦的であるため、この話が進まない状況に苛立って皮肉のつもりで相槌を打つように口を挟んだのだ。
だが、それが癪だったのか、年上かつ先輩のテルシャであろうと十人の中でもライトと同じく後輩にして新米の立ち位置であろうとそんな上下関係など度返しして歯向かう。
燃えるような苛烈な視線と、闇のように飲み込む紫色の瞳からの視線が衝突する。
これは一触即発に近い状況だ。
良くも悪くも、最高戦力に含まれている人物は『実力』が特徴的であるため、言葉の意思疎通がある程度終了すれば、次に以降するのは戦いによる意思疎通が始まる。
「おい、おい、ちょっと落ち着きなよ。団結力も重要だというのにさ?」
今まで背もたれに背中を預けていたが、テーブルの方に近づき、男は手をパンパンと鳴らす。
この中では一番、やる気の名さを感じている水色の髪を肩まで伸ばした男。
少し歳を感じる声色は覇気の無さそうだが、今まで見せていなかったから、目立っているその確かな存在感を全員が自覚する。
それは第六部隊『水景抜刀隊』の隊長“水景神将”スウレン・アスタレウス、水色の刀と青色の刀を左側に二本携えている。
「アルド君、少し落ち着こうよ。確かに君の意見は最もだ。期限を決めているわけじゃないが、大きな悪の根本を殲滅せず、このまま行けば被害は一定数起きてしまうし、君が最も危惧しているのはかつての英雄、その御方々の努力が無駄に終わってしまうことだろう? そしてこの変化のない期間が続けば、善なる組織の士気は時間と共に低下する。その隙をつかれて、悪の組織が攻めてくれた終わり――だが、皆、努力はしている。それを関係なしに声を上げるのは、知性ある生命体のやり取りじゃない、アルド、君は今、猿と同じなんだよ?」
その瞬間、会議室の温度が上がる。
一応、言っておくが、スウレンの最後の文言はわざとではない、大人として現実を見せるための彼なりの攻撃的ではない文言であるが、それが悪癖と言えるものになっていることを新米のライトも含めて全員が理解している。
そう、理解した上でこの場を宥め、日程とした定例会議の状態に戻すのかと思いきや、いきなり火付け役、いや、燃料投下をしたのだから――
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