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165話 善の星

 その剣はレイムの剣より少し大きく、大剣より小さい。

 それは自ら虹色に輝いていることに興味を向け、屈みこみ、じっくりと眼に映す。

 この剣は自ら光っている、何も技術を駆使した細工などはしていない。

 だからこそ、皆が目を疑う。


「まるでこの中に……」


 レイムは純粋な眼でその不思議な剣を見ると、その刀身に幾つもの光、非常に暖かさを持った光がいち、にい、さん……その数は十七。

 それらはどんな理由で輝き、その剣はどんな理屈で輝いているのか、まだ未熟であるレイム・レギレスには理解できない。


「これ、どうなってるの?」


 レイムの疑問に知識者であるワーレストとレジナインが反応する。


「ん~、そうですね~……ん~、意味不明、ですね」


「あれ、物知りなあんたが、珍しいわね」


 レミナスが意味不明と解答した姉であるレジナインに皮肉と心配を向ける。


「ふふん、珍しいものだろ。確かにその仕組みはわからないさ――」


 ならば、興味はないのか――と肉親、というよりレジナイン・オーディンとの長い付き合いであり、左側に移動したエマとレミナスは、たしかにレジナインは何かを伏せた。

 しかしそれは悪意などではなく、気遣いであるとエマとレミナスは思い、それ以上、追求することはなかった。


「レイム・レギレス様、首脳部『心星円卓ハートスター・ラウンド』の御方々の準備が整いました」


 そう言い、レイム一同は入り口とは反対側、この空間において正面と呼ばれる側は縦方向に大きな窓が均等に存在し、宇宙空間が見えている。

 入り口に対して浅い五階段、その頂上に現れたのは五つの存在。


「この御方々はこの組織の首脳部『心星円卓ハートスター・ラウンド』のメンバーです」


 その数は五名。

 その内、後ろの四人は白を基調とした金色の紋様のローブを纏い、全身、顔すら隠している怪しすぎる者たち、一人は顔を顔を隠していないレイムほどの少女。

 だが、その違いだからだろうか、四人はクロノスとはまた違った雰囲気を醸し出している。


「え~、左から第五席“正邪の座”セルハルセ・セルベンストヴァルス様――」


 体格からして男性。


「次に第四席“保存の座”シーヴァレン・シルバロール様――」


 五人の中では二番目の小柄な女性。


「次に第三席“基礎の座”ジェクディス・ジールベルド様――」


 五人の中では一番の大柄な男性。


「次に第二席“裁定の座”サルレナ・サンテノール様――」


 レジナインに似た体格で美しい女性。


 そして真ん中に立ち、レイム達と外見年齢が近しい少女。


「最後に第六席“超越の座”レイルン・レギスレータ様です。彼女は真善実力部隊、第一部隊『全軍総括隊』の隊長を務めています」


 その人物は薄桃の長髪、金色の瞳。レイムはその人物を凝視する。

 その存在の雰囲気にどこか知っている感じを抱いたこと、そして一つの推測を導く。


「ねぇ、レイルン・レギスレータ……この力に見覚えは?」


 レイムは手を前に出して【破壊】の力をその掌に顕現させる。


「れ、レイム?」


「レイム様?」


 ソージにジュウロウ、そのレイムの行動に皆が戸惑い、それを様子見る。


「……あぁ、確かに私は過去に【破壊】を保有していた」


「あなたは初代破壊神? レオン・レギレスを知っている?」


「すまないが、それは知らない。信じられないなら、力を使ってもらっても構わない」


 レイルン・レギスレータと呼ばれた少女は至って冷静にレイムの質問に答える。

 彼女は、嘘をついていない、それを見極められる者はいた。


 しかしレイムは違った。

 少女が感じた感覚は親しみ、それは例外なく、敵対者である二代目破壊神レオン・レギレス、存在を感じた三代目破壊神レシア・レギレス、対面した協力者である四代目破壊神アレン・レギレスという同じ【破壊】を宿した者と対面したレイムはレイルン・レギスレータに同じものを感じた。


 何か、絶対に裏がある――そう、レイムは確信する。


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