164話 この宇宙の話③
「あ、ありがとうございます――」
クロノス、彼女の言葉には嬉しさで満ちていた。
説得する根拠など、レイムには必要はなかった。ただレオンを倒す、その前、良いことをしたいという願いを叶えるためにレイムは善なる組織というクロノスの言葉を信じて即断即決したのだ。
彼女を突き動かすのは自分が決めた指針、その目的というごく普通のものだ。
何か役割を持ったわけではなく、ただ自分が正しいと思い、信じている事柄についてのみを求める。
それは純粋な子供の行動に他ならないが、それを信じる者がいる。
まだ全てが明らかになったわけではないが、これにて一応、話はまとまった。
双方の情報を照らし合わせて、お互いの敵が悪の組織であることが判明した。
そしてレイムの決断によって加入することを決めた『無限の星』にクロノスは早速、善なる組織に案内すると言った。
そのため、即座にこの世界の拠点を元通りする作業を終えて、クロノスの力で善なる組織へと早速、移動する。
総勢、三十一人。
この世界の拠点として使用していた高級のマンションの一室で全員を許容する魔法陣を展開してクロノスは力を発動した。
一瞬の浮遊感、世界の壁を越え、星海という大海にダイブする。
そして彼らに見えたのは宇宙の模様――それは満天の星空だ。
自ら光を発する星、他の光を反射する星、生命が存在して生き生きと輝く星、今という現在の一片を表すものが視界に飛び込んできた。
その移動時間はあっという間だった。
レイム達は気が付くと一つの広場にいた。
「ここは組織の中枢、地面を基準にするなら高台に存在します。用途は会議室です」
中枢という割には何もない。
入り口にあたる両開きの扉、入り口から見て右側には大きな絵画、十三枚の破片から構成された一つの星が描かれ、その下には一本の剣が台座に突き刺さっている。その反対側には人物の絵画……。
「え……?」
「はい。あちらが“真善の管理者”ミレイヴァム・レギスレータです」
左右の壁から十メートル以上はあるため、遠いが、レイムの目には自分と瓜二つの姿であり、今のレイムの黒髪を黄金に塗りつぶせば、その絵と同じ人物になるほどに――
「……本当だ」
「もっと近くで見ていいですよ」
そう言われ、レイムは思わず足を進める。
近くに行くとその絵画の大きさに圧倒される。横幅は一メートルだろうが、縦の長さは一メートル以上の大きさだ。
そのキャンバスにミレイヴァム・レギスレータという人物は存在した。
この絵の感想にレイムは上手いどうのという評価ではなく、この絵の大きさと縁の豪華な装飾から本当に偉大な存在なのだと理解する。
そしてこの絵に描かれた人物は自分なのだろうか、自分ではないとレイムは抱く。
瓜二つだが、正確には違う。
それはレイムとレイネルのように……。
「では、この組織の首脳部『心星円卓』の御方々が来るまで、少しお待ちください。第十部隊は退出を、命令を待ってください」
優しい口調で第十部隊にそう言い、ライト達は一度、お辞儀をして会議室から退出していった。
まだ時間はあるのだと、レイムは認識する。
しかし目の前の事実について考えても、自分の中に求める答えがないと判断してレイムは反対側を目指す。
そのレイムの動きにジュウロウは配下筆頭として皆に自由にしろ、と指示を出してジュウロウはレイムについて行き、ワーレストはその場に留まるなど三々五々、各々の自由に行動する。
「ん~、しんせい?」
「『心星傑社』ですね。この方々はかつて“真善の管理者”ミレイヴァム・レギスレータと共にこの組織を創設し、今では『第一次善悪大戦』の最中で悪の組織に一矢報い、全員が殉職した十八人の総称です」
「ふ~ん……」
ジュンショク、という言葉の意味は分からないが、クロノスの雰囲気から彼らの存在はもういないことを理解して再度、彼ら十八人のシンボルを見て、その下の剣に視線を向ける。
「それは心星の英雄たち『心星傑社』の会長にして第一席“心星勇者”アルス・アグヴァルス様の剣ですね」
それを見た誰もが不思議に思えた。
勇者の剣のように台座に突き刺さっているそれは、誰も手を触れていないにもかかわらず、自ら虹色の光を発していた。
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