152話 月海に漂う少女②
どんな時でも厄介となり得るもの、魔力を加算することで威力は単純に跳ね上がるという法則がある以上、その威力を削がれるものはレイムにとって天敵だ。十番隊の領域にも組み込まれていた魔力吸収だが、レイムはもう既に対策を考え済みだ。
だが、まずは吸収速度を見る。
五、六……元のものより半減するのに約六秒なら、完全に吸収するには十二秒はかかる計算だ。
「はぁ、はぁ……」
ルエナールの息が荒い、あの動作で多くの体力を消費したのだろう。
「十二秒って、かかりすぎだよ」
それは戦いにおいて大きすぎる隙間だとレイムは皮肉を込めて忠告する。あの一撃でそんな状態なら、連発で勝負はつくだろうと先を見据える。
そしてこの戦いは本気、ではなく遊びだと改める。
「じゃあ次、行くよ~」
それはまるでキャッチボールにおいて投げ返す時に合図するように無邪気まじりの声でルエナールに投げかけ、自分の背丈ほどの大剣を振り上げる。
「ッ――――」
その時――ヤバい、とルエナールは勘づく。
あの覚醒時点で察知するべきだったと後悔しながらも、この強大な存在を自分が打倒しようとルエナールは覚悟を決める。
初めから逃げることなんて考えていない、善を掲げる者として逃げるわけにはいかないのだと本気で信じている、いや思っているのだ。
そして火力対決では不利と悟り、ルエナールは絡め手で勝負をつける。
「ふんッ!!」
大きく振りかぶった大剣を振るい、さっきと同じような黒い極光の斬撃を放つ。
「――〈月界空箱〉」
そしてルエナールは浮上する。
回避行動のつもりかと追撃するために足を動かそうとしたレイムだったが、上空を見て足を止めた。
ついでにレイムは言葉を失った。
「なにあれ?」
それは単純に初めてみた光景だったからだ。上空を見上げるのは、夜で輝く星空を眺めることくらいだが、それに似ている。
さらに上へと浮上するルエナールを目で追い、初めてのものを目にした。
それは上空に乱雑に浮遊している半透明のキューブ、いつの間にか、存在していたそれはルエナールが大鎌を下に向けたことで重力に従って落下していく。
《解説――空間支配の応用です。半透明のキューブの内部に一定量のものを保存することができます》
「なるほどね」
それを防御として使おうってことか、とレイムは予想する。落下速度は物質の自然落下より速い、そのため斬撃と一つのキューブが衝突した。
すると半透明のキューブの内部に黒い極光の斬撃が閉じ込められた。
「多分、触れたら閉じ込められるか……」
あの半透明のキューブは上空、正確には空間支配を受けた領域の上空にルエナールの権能の一つである〈月界空箱〉はばらまかれている。
あの箱による閉じ込め、ルエナールの表情がさっきとは違い、平然としていることから箱はもう既にルエナールから独立しており、設定された機能を全うするだろう。
それとレイムはルエナールが距離を取ったことを再認識する。
通常状態と違い、この形態では斬撃だけでまともに受けると危険だと感じ、距離を取って中距離、遠距離の戦法へと即座に切り替えた。
ならば、こちらも――と、相手の戦法に合わせると自分とルエナールの間にあるキューブによって攻撃は無力化される。
流石にキューブにも限度があるだろう、ならば上空目掛けて神器解放をするしかなくなるが、ここが戦場の前に違う世界であることをレイムは念においているため、この『終焉神冠』の解放も『万象神冠』によって仲間達以外の人々に認知されないように影響力、出力ともに調整されている。
だからこそ、レイムは不利……というわけではない。
だからこそ、レイムはいつも通りの戦法をするため、刃を後ろに向け、駆ける体勢を取る。
「真正面から迎え撃つ――――!!」
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