150話 月海の代弁者
「――『破壊神冠』ッ」
能力の発動から戦闘までの時間は限りなく短い。元々の能力運用センスと最高峰の支援系能力である『万象神冠』の支援を相まったことでその時間は一秒を切る。
しかしそれは神クラス同士の戦いでは、それは些細なこと、どんなに早かろうと神クラスを自力で会得している存在は簡単に驚くことはせず、冷静に対応するだろう。
そう、それが目の前にいるウサギが正にそうだった。
「――『月海神冠』ッ!!」
それはレイムが剣を抜き、斬りかかる直前に能力を発動した。
レイム・レギレスが行ったことはただの空中歩行、虚空を蹴って迫っただけ、瞬間移動などではなく、ただの特攻であったからか、剣が届く前に発動できたのだろう。
その瞬間――空間を支配する力が相手から広がり、広範囲にそれは展開された。
「ッ!!」
それはレイムにとって肌寒いという感覚で察知した。
白銀のウサギから広がったそれは空間を支配するもの、『万象神冠』で解析する前に身体の表面を少し圧迫されている状況からレイムは予想した。
そのタイミングは能力と同時、全く同じであることから、能力発動と付随する効果こそが、この空間支配なのだろう。
銀色が塗りつぶした広さから支配領域と評した方がいいだろう。能力発動と付随する効果としては範囲がデカいが、別に珍しくはない。レイムの場合だと能力発動と付随する効果は魔力放出である。
特殊すぎる能力に対しては流石にレイムには経験がないため、正確な判断はできないが、基本的に能力発動はその能力とっての基礎、根本的な部分であり、それに付随する要素も必然的にそれに関している。
まぁ、だからなんの――と、レイムは一旦、問題を退かす。能力発動に関して深く考える必要はない、そんな小さな要素で勝敗が決まるなんて思わないと判断する。
現状では相手に自分を含んだ広域の空間が支配された。
しかしこの時点で空間圧縮などを使用してこないのは、敵に慈悲があるのか、出来ないのか、わからない。
「へぇ~、来ないの?」
初撃は空振りで終わり、白銀のウサギはいつの間にか上空へ移動している。
「私はルエナール・ルクスフォルマーナ。善を掲げる一人としてこの力、“月海の代弁者”があなたを倒します――」
礼儀が良いのか、自己紹介をするが、それと同時にレイムは宣戦布告をされた。
「ルエナール、月海……? 私は――」
相手が名前を言ったから、レイムも自己紹介をするのが道理だと名前を述べようとしたが、それは月の形をした刃によって断ち切られた。
「ッ!!」
一瞬、ルエナールが消え、瞬きの間に急接近したルエナールはレイムの頭の高さで大鎌を振るった。
少し気が抜けたが、瞬間的に集中力を上げてギリギリで避ける。大鎌というリーチが有利な状況で近接戦だが、レイムは冷静に刃を受け流し、隙をついて敵の胴体を蹴る。
「ふぅん、その魔力量に対してそんなもの?」
レイムの背中に漆黒の両翼が顕現する。
力の根底である能力を発動したことで、自身に内包されている魔力量が明確に垣間見える。
これは今までレイムが敵対してきた中でも一番多い、エマも含めるなら、エマと同じくらいだ。
《測定――適正存在の魔力量:SSランクの中の上。約、主の魔力保有量の半分です》
サポート役の『万象神冠』が主であるレイムの気になる問題を察知して解析し、報告する。
「まぁ、だから何だって話だけど、ねッ――」
空中を蹴り、レイムはルエナールに突撃する。
真正面から攻撃を仕掛けると思いきや、残像が残るほどの速度でルエナールの側面に移動して剣撃を放つ。
「ぐッ、ただ翼を生やしただけで――ッ!!」
いや、見た目じゃない、と白銀のウサギ、ルエナールは考えを訂正し、身体に力を流して応戦した。
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