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137話 胡蝶の夢②-断片的



「ふむふむ……七つの血族」


 セーラー服姿のレイムは広い図書室で本を読んでいる。


 ここは時間の感覚がないため、時間を測ることは出来ない。

 ここは場面転換の如く、無理やり風景が切り替わり、自分という存在は何かをしている特殊な空間であり、自分の無意識領域の要素も存在していることは分かっている。


 今、読んでいるのはこの世界の歴史の本だそうで小難しいのは嫌いだが、仕方なくページをめくる。赤、青、黄、緑、紫、白、黒の血が何とかなんとかと書かれている。

 レイムはこの知識を知らない、なら外部から流れてきたものだろう。


 ここの時間を測ることは出来ないが、長い時間、ここにいることは何となくだが、理解できる。

 ここは自分の無意識が混じっているということを理解している。

 自分の無意識、外部の情報が入り混じった空間だからこそ、『意識』は曖昧だ。


 そしてこの空間で上がるより沈んでいる方が適切だと、根拠はないが、自分の無意識がそう思っているなら、信じるしかない。


「はぁ~たいくつぅ~」


 だが、読書は長引かずにレイムは机に突っ伏す。

 なぜ、ここにいるのか……分からない。でも、行かなきゃダメだと『本能』が行けと或いはこっちだと呼んでいる。

 逆に何も考えずに行動する。

 椅子から立ち上がり、図書館を出て、あちこちに目線を向けながら、歩く。


「ん~、ん~、ん~」


 レイムの目には新鮮な光景、だけど変化はない。ただの建物の中だ。

 自分自身、その『意識』を明確にしようとレイムは頑張るが、雲を掴むようなもので時間はかかりそうだ。

 学校という建物、この世界の人工の道、自分以外誰もいない奇妙な地球という世界に再び、駆け出す。

 デジャブを感じながらも、街中を駆ける。

 大きな高層ビルが立ち並ぶ街、向こう側は白い光に包まれている方向に向かって走っていると何かにぶつかった。


「うッ……いた~」


 目の前に障害物なんてなかったはずだ、と前を向くがやっぱり何もない。痛みが生じる額を抑えて立ち上がり、前方に手を伸ばす。

 何かに触れる、透明な壁があるようだ。

 少し強く叩いてみても何も変化は見られない、この空間の境界線ならここを壊せば、外に出られるだろう。


「おいおい、ちょっと待てよ。レイム・レギレス――」


 ここに来て、レイムは明確に誰から声をかけられた。

 後ろを振り向くと白髪のショートの女性、強い目線、強い言葉、一歩間違えれば、戦いに発展してしまいそうな態度だ。


「……だれ?」


 いや、知っている。

 反射的に質問したが、初対面ではないことは何となく知っている。でも、思い出せない。白い髪はどこか印象はあるけど、何か違う感がある。


「私はロア。悪の組織『混沌神殿カオス・システム・対真善殲滅機構』の最高戦力、精鋭部隊が一角、十番隊『暗黒満月』が一人、ロアだ。また会ったね――最重要人物、レイム・レギレス」


「んん……あ!!」


 本気で思い出そうとはしなかったが、答えが脳みその中に落ちていたことで声を上げて指を差す。

 完全に思い出したことでレイムの感情は怒りに染まる。


「やっっって、くれたなッ!!」


 年相応にレイムはキレた。

 自分の前に立った敵、でも自分の頭を撃ち抜いたのは別の奴だったが、ロアと呼ばれた女性が命令したのは明白だ。


「そんなカッカしないの。冷静にならないとこの先も苦労すると思うけど?」


「ふん、あんたから学ぶことなんて何もないけど?」


 剣がない、でもレイム自身が念じれば――


「ルークレム――」


 それは少女が望めば、その手に顕現する。


「ふん、やっぱりそうなる?」


「他になにがあるの? 攻撃してきた、ならやり返すのが普通でしょ?」


 漆黒の鞘から剣を抜き、鞘を左腰に固定して剣を構える。


 ここは現実世界じゃないが、そうじゃなくても『自分』なら、現実と同じように行動することはできるはずだ。


「ねぇ、武器は顕現できたようだけど、ここではまだまだだね!!」


 レイムの背中から漆黒の翼が生える。

 この時点で『破壊神冠シヴァナーダ』の能力解放が可能にしている。

 だが、この空間と同じように雲を掴むようで感覚を掴みにくい感じがするが、その手から離れぬようにと強く保ちながら、動き出した。


「ふッ――――」


 一気にロアに迫り、剣を突き付ける。

 まだ万全ではないため、ロアにあっさりと避けられてしまう。


「ふぅ~……」


 感覚、意思は存在する――故に『魂』があるのなら、どこでだって現実と変わらない己の事象を顕現することができる。

 あの膨大な魔力、少女の器から想像もできない魔力保有量を以って身体強化をすることで目に見える規模ではなく、力の密度を上げることで存在規模を向上させる。

 レイムは自分の剣を避けたロアを見るが、余裕の表情は崩れていない。


 この空間は彼女が用意したものであることは分かる、ならここから抜け出すにはまずは自分の眼前に意気揚々と現れたロアを打倒するしかない。


「そのにやけ面を叩き潰すッ!!」


 自分の根源『魂』から魔力を引き出し、漆黒の刃に魔力を乗せて振るう。

 轟ッ!! と漆黒の斬撃がロアを襲う。

 ギリギリで回避したが、黒い翼と魔力で身体強化を行ったレイムの動きに今のロアは負えず、頭部に剣撃を食らい、吹っ飛ぶ。


「ぐッ――チッ」


 だが、打撃を食らったように流血はしたが、頭部はかち割れていない。

 しかしロアが想定していた以上に出力は上がっている。

 やはり、計画通りにはいかない。

 いや、予想を超えてくる存在、それこそが悪の組織の頂点、悪の大首領が定めた最重要人物、レイム・レギレスだ。


「面白い――まずはここで立場関係を分からせてやるよ」




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