135話 第六位・黒竜戦機⑧
光輝く輪は激しく回転し、渦となる。
全方位からの光の斬撃に耐える。能力が昇華したことで基本出力が上がっているため、暴走状態であるルイカも途切れることのない光の斬撃に動くことはできない。
もし、ルイカが決めた方向に突っ走ったとしてもルイカの周囲を回っているソージなら、すぐに特定され、攻撃を入れられる危険性を予想して自分が先に動くのではなく、ソージを先に動かせるためにただ耐える。
よし、やるか――
ルイカは動かず、少し姿勢を低くして突撃する様子がないことをソージは確認して行動に出る。ルイカの周りを周回し、ランダムで斬撃を放っていたが、ソージはルイカの方へ走り出した。
この動きをルイカは感知することはできたが、所詮は初動が見えただけだったのだ。
それは銃を撃つタイミングは分かったが、銃弾を回避や対処することは人間なら出来ないということと似ていた。
「ッ――――!!!」
眼前に現れたソージ・レスティアルの表情は冷静であった。距離を詰めた速度は音を置いていく光の速度に匹敵していた。
振り向いて間に合った、と思ったが、それは壮大な勘違いだ。
それを映した視界には違和感があった。間合いを詰めた光の剣士の姿は剣を振りかぶった、いや……振った直後であった。
一閃の剣撃。
それは己の眼前で生じたはずだが、理解したのは自分の腕が視界から消えていたこと、攻防の手段である腕を切り落とされたことを一秒後に理解する。
光の粒子は刀身から零れることはなく、音は後からついてくる静寂なる一撃であった。
「ぐッ――――」
時間が、動く。
斬られた腕から熱が湧き上がり、痛みという感覚が脳へ届く。
時間が、進む。
ソージは剣を振って即座に剣を自分の方へ引く。
時間が、過ぎる。
痛みが強い、だがすぐに慣れて反撃を――
そして光の剣士は聖剣を突き出す。
あのルイカの周りを回転していたのはただの体力の浪費ではなく、光の速度、覚醒した力を馴染ませる意図があった。
それは運動する前の準備運動、いや体力づくりのランニングが適切だろう。
本当の『光』が自分の身体に馴染み、全方位からの攻撃でどうゆう手段でルイカが動こうが、それを『光』の速度で凌駕する気であった。
そんな本気度のソージの一撃をルイカは避けることはできない。
突き出された剣先はルイカの心臓部に突き刺さる。
そしてこの光は対象を崩壊に導く。
「がああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ――――――――!!!」
その剣先は心臓へは突き刺さっていないが、その真上で光を溢した。
その量は大量ではない光の粒子だが、ソージが向けた対象に触れた途端にそれを崩壊へと導く。
光の粒子を加速させることで殺傷力を最高まで上げた刀身を対象に刺したことでその一点から瞬時に光が広がり、内側から魔力で相殺しなければ、肉体は瞬時に崩壊を迎えるだろう。
第九剣技――《星命・心星崩華》
レスティアル家の始祖が編み出した『レスティアル流剣技』の最後の技にして一撃必殺の技、相手を必ず滅する剣技である。
ルイカは誰に押されるように後退りしながら、絶叫している。
光の速度と威力を合わせた剣撃で腕を斬られたものとは違い、光の粒子たちが細胞レベルで肉体を崩壊に導く。
痛みとしては炭酸飲料のパチパチ感を尋常な痛みに変えて、それが心臓部から広がっているイメージだ。
心臓部という急所から始まったことで心臓や肺はすぐに崩壊し、血が流れ、息は消えていく。
すぐに声ではなく、ゴボゴボと液体が入った容器にストローで息を入れたようなものへと変わっていく。
――痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。いや、それより治療を……いや、間に合うか、いや、無理だ。ならば、これしかない。
致命傷となる傷を負っているが、根源から魔力は流れている。これが満身創痍なら、やる手段は一つしかない。
ルイカは全力で魔力を集め、固めて、掠れ、途切れつつも声を出した。
「――こ、く、りゅう、の……せ、か、い」
膨大な魔力がルイカの身体に収まった魔力の流れからルイカの世界系〈黒竜の世界〉は身体強化型だ。
「……」
ソージ・レスティアルはじっとルイカを見る。
世界系の知識はワーレストによって教えられたため、理解している。世界系を展開したルイカの状態はあまり変わっていない。
光の粒子で崩壊した傷は塞がる気配はないが、身体強化はされている。理由は分からないが、傷が塞がっていない今がチャンスだろう。
「ドラドゥーム……勝利を、ッ――!?」
ルイカは確かに動いていなかったが、自分の動きを見ていたのだ。
神器に力を込めた瞬間に一気に間合いを詰め、胸部ではなく、腕を再生させてソージに向ける。
だが、ルイカの速度はソージにとって反応できるものであり、剣で弾かれる。
「あああッ!!」
発した声は人ではなく、獣だった。
ただ目の前に敵、倒すべき相手、捻じ伏せるべき存在に敵意と爪を向ける姿は『本物の獣』と大差ないものだった。
意思はある。
それで身体を動かしているのだから――
勝つ気はある。
強い眼差しと爪を向けているのだから――
自信は……分からない。
もうそんな要素が作用する状況ではないのだから――
やらなきゃいけない。
ただただ、自分のために――
「ガァァァッ!! ガァァァッ!! アァァァッ!! アァァァッ!!」
ただただ、自分のために――
その『意思』だけが、『戦え』へと焚きつけるのだ。
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