131話 第六位・黒竜戦機④
善と悪――それは対立する。
お互いが『違う』なら、それは些細なことであっても戦う理由、争いの引き金となってしまう。
一人は善。一つの世界で勇者と呼ばれた青年、悪に向けるのは竜の亡骸から作り上げられた聖剣にして星に通ずる代物、その刀身はまるで竜の鱗のように亀裂が入った《竜星剣ドラドゥーム》を漆黒の竜人に構える。
一人は悪。強制的に身体を変えられ、戦闘機械として生きる道しかなくなった少年。善悪など関係なく、自分が勝てばいいと戦闘態勢に入る。
例え、一人になったとしても……。
「あぁぁぁぁぁッ――――!!!」
お互いの敵対者、ソージ・レスティアルとルイカが再び、刃と拳が衝突する。
ガンッガンッガンッガンッ――――戦い、救うことを目的とする勇者と戦い、殺すことを目的とする竜人の重い攻撃が炸裂する。
戦闘技術はソージの方が上だが、戦闘経験はルイカの方が上だ。
第五剣技――《月影遊夜》
自分の動き、剣技を発動する際に『隙』が生じてしまうことを再確認し、それを踏まえた上でタイミングを見計らい、発動する。
お互いに遠近の攻撃を有しているが、双方にとってヤバいのは遠距離攻撃なため、距離を取らせまいとお互いが詰める。
光輝く剣の通った軌道上に影が現れる。
それは濃くはっきりとルイカの前方に塗られ、間合いの距離があやふやになる。
だが、魔力感知が良好なルイカにとってそれは視界の邪魔でしかない。竜の適合者として人間としては逸脱している身体能力で掻き消す。
拳の連打に剣で十分に防ぎながら、ソージはルイカの足を蹴る。
「ぐッ――」
ルイカは身体のバランスを崩し、その隙をついてソージは距離を調整して容赦なく、ルイカの左肩に目掛けて両手で剣を振り下ろす。
戦闘経験、それは文字通りの意味だが、それから何を学ぶかはその人の勝手だ。
そう、ルイカの戦闘経験はただ殺し合いの回数が多いだけであり、経験というものは微塵もなかった。
相手から学ぶことはせず、ただ相手を殺す技術を磨いてきた。強いて言うなら、ルイカが培ってきたのは殺し合いの心だ。
まず、ソージとルイカに差は存在する。
その大きな要因は能力の階位が違い、ルイカは完全上位の能力『神冠』を有しているが、経験の差が大きく戦況を変化させる。
竜の適合者、これは稀に見るケースだ。生態系の中でも最強に分類される生命の因子と人のキメラ、確かに素の性能は高く、経験するという流れにならないのも確かだ。
だが、それが彼にとって今――驕り、油断、怠慢、そして後悔となった。
格上であるはずの自分が跪いている状況、普段なら圧倒的な力でねじ伏せるだけで勝利の兆しが見えるはずなのに初歩的なことで躓いてしまった。
やっぱり今までの相手とは違う。
ルイカは再度、確認するとソージ・レスティアルという人物は障害の壁となる。
ガンッと竜の鱗で覆われた腕で聖剣の剣撃を受け止める。
流石、竜を元にした剣の威力は同種の鱗を容易く斬り口を生じさせる。何とか受け止めたが、全身の力を剣に集中しているため、この状態から弾くことは出来ないが、ゆっくりと膝を地面から離し、立ち上がる。
そしてその刀身を刃面から握り、振らせないようにしてソージの胴体へと拳を突き出す。
だが、その胴体は視界から姿を消した。
「は――ッ!!!」
彼は自分の武器である神器《竜星剣ドラドゥーム》から手を離し、その右手を握りしめてルイカの腹部へと突き出した。
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