125話 第四位・烈光華戦⑫
膨大な魔力が周囲に満ちたことで視界は光で埋め尽くされ、さっきまで満ちていた大気が押し出されたことで空気の振動がなくなったことで音が消えた。時間が経ち、ここに満ちる魔力が広がれば、視界と聴覚は良好になるため、体力が残り少ないミルウェはただ立ち尽くして時間を潰す。
「ふぅ~……」
緊張が解け、息を吐く。
さっきまでやる気で阻害していた痛みや疲労が押し寄せてくるが、それに耐えるようにゆっくりと全身に力を流す。世界系〈光華の世界〉はもう既に解除した。
もう余力はないと言えば嘘になるが、この後のために体力を残しておきたい。
そして真っ白だった景色に亀裂が入り、元の背景が見えると安堵した瞬間だった。
光。それは強い光だった。
太陽の光ではない、現在の舞台に昼間なんてものはない。月の光ではない、そんな淡い光ではない。
それは真っ白な景色を切り裂いて飛び込んできた。
光の刀身、光を纏う剣、光を反射して輝きを増している黄金の鎧を纏う少女。
金色の長髪から赤い血を流しながら、その目は獣が獲物を狙い定めたような鋭い瞳、そして必死の表情がミルウェの視界に現れた。
やっとの表情、さっきまで冷静なものだったが、やっとそれが崩れた。
「ッ――――」
ミルウェは反射的に反応する。
だが、反応が遅れたことを自覚する。
それは一秒にも満たないものだったが、接近許し、振り下ろせば、自身の身体の前面を斬り裂くであろう距離で後れを取ってしまった。
咄嗟に細剣を振り上げ、振り下ろされる聖剣とぶつかる。
「ぐッ……や、やっとの、必死? その表情の方が、いいと思うけど!!」
ミルウェは聖剣を弾き、後方に下がり、自身の後方から巨大な花を顕現する。世界系は解除したが、まだ力を振るうことは出来る。
「ふぅッ――〈光合開花〉ッ!!!」
その後、少しの溜めがある。
だが、ソピアはそれを待っているかのように両手で聖剣を顔の横で構え、姿勢を正した。
それは油断ではない、ただ決心を固めただけだ。
それを理解したミルウェの手に力が入り、限りなく最大の魔力が巨大な花から放たれた。
彼女が動いたのは魔力の光が放たれると同時にソピアは走り出した。
「はッ――――」
自身の権能である〈光合開花〉と衝突すると同時に剣を振るった瞬間、巨大な花が三日月型の斬撃に斬られた。
その斬撃は一定の距離で減速、停止して逆行、黄金の刀身に吸い込まれる。
それは『レスティアル流剣技』の一つ、第四剣技――《月牙翔斬》であった。巨大な花から放たれた光を食らう前提で〈光合開花〉を破壊し、立ち止まることなく、ミルウェに目を向けて走り出す。
その姿、言動にミルウェは釘付けになる。
今までの戦いが嘘のような所業、体力が尽きないのか、無理にやっているとしても不可能な域に達している。
計算が合わない。意味が分からない。本当に何者なのか……。
能力を昇華、覚醒させて、世界系をも展開した状態でミルウェの神器解放で生じた火力を諸に食らったはずなのに直立することができ、それで剣技も振るうことが出来るなんて……。
その瞳、その穴の奥、その果てには確かに彼女の『光』が存在した。
彼女が折れぬかぎり、挫けぬかぎり、その『光』が消えることはない、ただその意思だけで彼女、ソピア・レスティアルは立っている。
「ッ――――」
そして黄金の刀身が眼前で振り下ろされ、ミルウェの左肩から右の脇腹にかけて剣撃が刻まれた。
ミルウェは動くことはできなかった。
もし、動くことが出来ても勝つ気力はなく、体力もなかった。
そして剣撃に押されてミルウェは芝生の上に倒れた。
「こんな、の……規格外、だって――」
この戦いの感想をふと呟く。
戦いの前にあったであろう競技場は自分の力によって半壊したが、原形は留めている。天井が空いているから領域によって展開された暗い空と月が見える。
「規格外、でしたか……まぁ、そうかも、しれないですね」
ミルウェの呟きにそんな曖昧な解答をするソピアは歩み寄る。
「ふ……まぁ、もう、いいや……」
その言葉の意味を思考することも疲労するほどに燃料切れなミルウェは考えることをあっさりと止めてソピアを再び、見る。
お互いの金髪が自身の血で濡れている。自分と相手の共通点はそれくらいだろうとぼんやりと意味のないことを思う。
「もう、いいよ。さっさと殺して――」
潔くそう告げる。
敵に殺されなくても組織に殺されるため、この状況から察するに自分はもう既に詰んでいると言っていい。
それを言われたソピアは剣先をミルウェに向けた。
「いや、私はあなたを殺すために戦っていたわけじゃないから、じゃあね――」
さっきまで真剣な表情が崩れ、ただの女の子の表情に変化した。死ぬ覚悟をしていたミルウェはそれに呆気に取られて何も言うことは出来ずにソピアが視界から消える。
「……はぁ~、だと思った」
しかしそれは今までの戦いで見たソピア・レスティアルならとる行動だろうとミルウェは納得する。
ただの人殺しである自分はそもそも違う。
彼女は王道物語に登場する勇者のような人なのだから……。
「だから、なのかな――」
だからこそ、自分は負けたのだろうと納得する。
血が流れるのを感じる。斬り傷を治す力はないため、このまま時間が経過すれば、失血死するだろう。領域の特性によってソピアとサリアがここから離れていくのを認知する。
その先は領域の中心、まぁ、たどり着けるかどうかは知らない。
もうどうでもいい、血が流れるのが意外と早く、意識が朦朧としている最中、領域の内側から見える夜空、月を見上げながら、ミルウェはただ笑みを浮かべる。
勇者のような人に敗れたことを思いながら――
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