123話 第四位・烈光華戦⑩
自分の鼓動が聞こえる。
あの一撃を食らい、あっという間に立っていた身体、その力はどっかに消えて地面に糸の切れた人形のように倒れている。なんて情けないのだろうか、あの二人とともに頑張ってきたはずだった。
人類の希望、人類の英雄として称えられる一族、レスティアル家。遺伝的な問題で元々光属性への強い敵性を持ち、それを身体強化、剣技に用いることで人類最高の剣技を実現した一族。
その始まりは初代剣聖ミーウェル・レスティアルという女性に遡るだろう。初代が生きた時代、第二神歴は魔王の脅威に怯え、平和とは程遠いものだった。
だが、彼女こそがただの人類の一人だったレスティアル家を剣聖の家系に変えた張本人であった。
恐怖に怯え、挫折したとしても剣を持ち、立ち上がる。
己の叩き、磨き、男達より強く精錬された剣技を作り上げて禍々しい前線で黄金の鎧を纏い、閃光のように魔王軍を迎え撃ったことで閃光の騎士と呼ばれたのが始まりであり、魔王討伐軍を率いてネルトシネアス領域に進行して魔王の一人を退け、その功績を称えられたことで“剣聖”の称号を与えられた。
そして先代の功績から自分の家系、レヴォルアント家も剣聖の家系に連なるものとなったことで偉大である以上に苦労があった。
別に大変じゃなかった、と言えば、嘘になる。
今ではサリアは仲間を思い、まだ子供でありながら、大人びており、自分という立ち位置を理解しているが、それ以前は家系を憎み、他人を恨んでいた。
何も間違ったことはしていないはずなのに、悪から人類を救った存在の家に生まれただけで他者から恐れられ、迫害された。
その理由は恐れからだ。
元々、レヴォルアント家はレスティアル家の親戚にあたることからレスティアル家のように才能を持つ者が現れることは何も驚くことじゃない。
今までレスティアル家のみだったのか、この何千年という時の中で一つ増えただけなのだから……。
かつての英雄、その子孫は秘めている力によって人類の中でも高い立場におり、名家に当たるが、他者はやはり恐れていた。
納得は出来なかったが、納得せざるを得なかった。
自分達が才能があるから、他者とは違い突出した才能を持っているから、自分達とは違う者を反射的に避けようとする、それは人間にとって普通なことであり、本能による防御手段なのだと……。
だからサリア・レヴォルアントは外側ではなく、内側を見て、自分の居場所を見つけた。
レヴォルアントの親戚、本家であるレスティアル家に生まれた同年代の少年とその妹である少女に……。
二人に出会ったのは必然、自分にも二人に比肩する才能があったから、対等に、いや親友にまで慣れ、お互いがお互いを支え合うことができたのだろう。
サリアはただ自分の居場所を作るためだったかもしれないが、ソージとサリアはより安心できる居場所を築いてくれたサリアを感謝している。
あのままでは善意だけではどうしようもなかっただろう。やり直しが効かないほどに落ちていくかもしれなかった。
今となってはそんな気もするほどにあの時の環境は英雄の子を歪ませてしまうほどに良くはなかった。
だから三人は救いを、せめて安心できるものを求め、出会い三人となったことで確かに救われた。
「ッ――――」
だから自分はソージとソピアのために、何より今はレイム様、多くの仲間達のためにサリア・レヴォルアントは立ち上がらなければいけない。
なにせ自分は英雄の子供なんだから……一人だけ倒れることなんて恥ずかしいから――
その瞬間、魂、精神、肉体の全てが震え、新たな力が圧し掛かる。
更に憎しみ、恨み、苦しみの辛い感情とともに楽しみ、喜び、希望まで今まで抱いてきた感情が溢れ出す。
その絶望と希望は立ち上がる力をくれる、戦う力をくれる。
今までの全てを糧にして少女は覚醒を果たし、新たな力を口にする。
「――『水晶神冠』」
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