117話 第四位・烈光華戦④
ふぅん、敢えて能力を制限していた? いや、少しの時間だが、戦いの中で垣間見えたソピア・レスティアルはそんな卑怯なことをするはずがない。
自分の能力である『神冠』に対抗するには最低でも同じ階位が必要になるが、二人はどちらも『熾帝』の階位であり、真正面からやり合ったら、まず敵うはずもない。
だが、こちらの技量も不足していることは確かだ。
神クラスの恩恵であっても、近接戦闘で押されることはあるが、文字通り力で押せば問題ないだろう。
そしてミルウェが一番気になったことが、なぜ“今まで能力を発動しなかったのか?”という純粋な疑問が後に残る。考えられる可能性として一般的なものは回数制限が妥当だろう。
【無限】と呼ばれるものの階位は力関係のヒエラルキーでは最上位と言っていいだろう。
そして逆に表すなら、それ以外は有限である。
能力の発動、それを維持するために必要な魔力量、自分の事はしっかりと理解している彼女なら、その制限を考えた上での行動だった。
それも理由として神クラスを所持しているミルウェにも拮抗し、上回る近接戦闘を身に着けたのだろう。
それを切ったということは本当の意味で『本気』になったのだろう。
そしてミルウェは予想する。
早めに潰さなければ、こちらの段階まで彼女らは登ってくる確率が高い。この段階で押されている要因がある自分にそこまで相手取れるとは思えない。
だから――
「さっさと片付けよう――」
息を整え、再び、自分の足下から花々の地形を形成して上へ上る。まだ自分の方が上だと物理的に見下しながら、最大限に警戒する。
ソピア自身が自分の才能は剣術だと言ったからには解放した能力は身体強化が主なものとなっているだろう。
なら、近づないということは不可能だろうから自分に近づくまでに消耗させるが、その前に……。
「ふぅぅ~――〈桜花爛漫〉」
次の瞬間、辺り一面が花々で埋め尽くされた。
既に展開した花々に魔力を流し、瞬間的に自己増殖を行い、全てにミルウェの魔力が帯びた花の風景が出来上がる。
この効果は単純に自分の優位に場所を仕上げ、花々による魔力の増幅で後に繋げる。
発動した能力【純潔】の効果を実際に確かめるためにリスクは大きいが、自らミルウェは近づき、細剣を振るう。
「ふッ――」
まさか自ら近づくとは思ってみなかったようで微かに驚きの表情を受け、ミルウェと刃を交える。
まずは力で押すが、やはり『才能』と言ってしまうほどに少女でありながら、屈強ではないが、足腰はしっかりとしてミルウェの力でその身体を揺らすことは出来ない。
純粋な身体能力はあっちが上、だからそれを拮抗に、上回るために一度、後方に飛び、花弁を刀身に纏わせる。
「――《七花八裂》ッ!!」
踏み出し、細剣による八連撃を繰り出す。
「――《月輝燦然》」
ガチンッガチンッと瞬く間に自身の八連撃を叩き、結果、細剣の刃はソピアに届くことはなかったが、刀身に花弁を纏わせたのは攻撃力の強化以外に使い道はある。
「――〈華吹雪〉」
剣先を向けた方向、ソピアに幾千の花弁が渦巻くが、ソピアは表情一つ変えずに剣を掲げて真正面に振り下ろす。細剣から放たれた〈華吹雪〉を『レスティアル流剣技』の一つ、第三剣技――《光来天幕》で断ち切られる。
「剣技のくせして本当にいやらしいものだな――」
一度、目にした攻撃を食らうわけはなく、ミルウェは回避して状況を確認する。弓兵、サリアは起き上がる様子はない、それを理解しているのか、自分一人で打倒しようという意思を感じられる。
権能の一つである〈桜花爛漫〉で競技場の全てを自分の力の象徴である花々が展開して周囲を自分の魔力で埋め尽くす。植物の特性を生かして花の自己増殖と自分の魔力を増加させて切り札を発動する下地を作る。
その速度は流石、神クラスと言ったところであり、もう要する魔力量に達している。
それを確認したミルウェは分かりやすく満面の笑みを浮かべて声を上げる。
「さあ、華々しい勝利だ――〈光華の世界〉ッ!!!」
切り札、それは神クラスの最大の権能。己の内に存在する『能力』の性能を最大限発揮することのできる権能。
これを発動してしまえば、同じ神クラスを所持していない者なら勝利は確信する。同じ神クラスであろうと先に発動すれば、有利に取れる。
「ッ――」
ソピアは目の前に世界が顕現したことを認識する。今まで花々から湧き出るミルウェの魔力で満ちていた空間が更に強く、周囲を支配する。
「これが世界系……」
今の自分では到底及ばない、一つの力の象徴である権能。
これが発動した今、力の上下関係は完全にミルウェに傾いた。ミルウェの世界系〈光華の世界〉は領域環境型、彼女の意思で環境を自由自在に変化させることが可能だ。
ソピアに内心、ヤバいと思わせるほどに……。
「――〈光合開花〉ッ!!」
能力の性能が向上する環境となる世界系〈光華の世界〉を発動したことで早速、権能を発動する。
三つの巨大な花が地面から顕現し、ソピアに向けて魔力砲を放った。時間経過というが、花々による魔力増加で領域環境型の最大効果である性能向上は通常より速く向上しているだろうし、物理的にあの魔力砲を三つ耐えることは出来ない。
「ッ――――」
剣を前に構えるが、黄金に輝く魔力にソピア・レスティアルは飲み込まれた。
さっきまでは剣で防ぐことは出来たが、一つの規模で人は防ぐものではなくなっている。
それが三つほど一点に集中し、ソピアは光の中に消え、地面を砕き、陥没させる。高出力の魔力を浴びせ、もう標的としていた存在の生死すら、外側から判断することはできない。
数秒間、自分が撃ち出す光を眺めて勝負がついただろうと止めようとした瞬間、光の中から別の力が芽生える。
「まだ生きている? でも、もう無駄でしょ」
高出力な魔力に晒されながらも対抗しているのだろうか。だが、神クラスにして世界系の恩恵を受けた攻撃を『熾帝』の階位しか持ち得ない存在が耐えられるとは思えない。
肉体はもう既に焼かれ、形を失っていると思われるが、確かに光の中に力の存在を感じる。
「……なんだ?」
このまま様子を見ようとしたが、姿が見えず、意味不明な状況であるため、一度、標的の姿を見ようとミルウェは魔力砲を止めた。
黄金の光が消えた後、陥没した底にいたのは全身火傷となり、横たわっているソピアがいた。
「まさか、それで済むなんて……」
世界系の恩恵が効いていないわけもなく、あの高出力の魔力砲、しかも三つ道地に諸に食らって全身火傷で済んでいいはずがない。
どうゆう状況なのだとミルウェは困惑する。
この状況を冷静に判断するなら――
「世界系に対抗できている!?」
それしかこの状況の説明はつかない、だが、神クラス以下の力を保有する者が神クラスに加えてその性能を最大限に発揮する世界系を展開した攻撃に耐えられるなんてあり得ないことだ。
そんな力の法則を捻じ曲げることなんて最上位の存在にすら不可能なはずだ。
ミルウェは思考錯誤するが、答えは分からないが、その意味不明な答えは目の前に明確に顕現した。
突如として今までにない魔力が出力される。
さっきまで高出力の魔力から身を護るために大量の魔力量を消費したはずだが、どこからそんな魔力が漲ってくるのか。
「ま、まさか……うそ――」
答えは頭の隅にあった。
そんなことはあり得ないだろうと今まで見たことがなかったため、あり得ないと信じきっていた。
だが、その答え……様々な答えの中で一番、嫌な答えが目の前で実現してしまった。
「能力の昇華……」
その漲る魔力は能力が神クラスに昇華した際に生じる反動という名の恩恵だ。神クラスに到達したことでその階位に適応するために一時的に魔力が与えられて適応する段階である。
「――『純潔神冠』」
そう昇華した能力名を呟き、ソピア・レスティアルは白い光に包まれながらゆっくりと立ち上がった。
「まぁ、まぁね。やっと同じレベルになったんだね。いいよ、それでも叩き潰してあげるから!!」
例え、神クラスに昇華したとしても自分は負けることはないとソピアを見下しながら、ミルウェは豪語する。
それは紛れもない覚醒であり、少女はそれを成したのだ。
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