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105話 領域騒動⑧



「精鋭部隊、十番隊『暗黒満月』の第十位、ユリナ・ギウナ……。まだ子供なのに」


「あら、魔王なのにそんなことを心配するんですか?」


 最古の魔王、赤紫色の長髪、魔女のような見た目である第五位“繁栄の魔王”マリテア・ヴィティムでさえ、敵対組織の精鋭部隊の一人が少女であることは予想はしていなかった。


「そうよ。悪い? 別に誰にでも高圧的な態度じゃないわ。でも、精鋭部隊の一人なら、油断はできないわよね?」


「そうですね。マリテアは周囲の警戒をしてください。私が彼女の相手をしましょう」


 と最破の一人、黒を基調としたドレスを着用し、黒と紫の長髪を靡かせた長身の女性はハイヒールの音を響かせながら、敵対組織の少女の元へスタスタと歩き、五メートルの距離を空けて立ち止まった。


「たった一人で私に勝てる? もし勝ったとしても後ろには魔王が一人、頭が良いなら、たった一人で相手をするなんて無謀もいいところじゃない?」


 ベルーナは女として少女、ユリナに忠告する。


 静かすぎる街、そして三人がいる道路に更なる静寂が流れる。少女は考えている、悩んでいるだろうが、すぐに顔を上げて抜いた刀の刃を見せるように構えた。


「無謀であろうと敵であるあなたには関係のないことです。ここでやるべきことは敵の抹殺、それが私の使命だから――」


 少女は悩んではいたが、最初から納得しなければならなかった。

 いや、正確には納得しようとしなくても、組織の命令に従わなければ、手段は想像はつかないが死んでいた方がいい手段で従わされるため、当人が納得するかなんてもはや関係ないのだ。


 刀を構え、強い意思をベルーナに向けたことで彼女の意思を確認して右手を後ろへ動かし、背中に携えた武器を掴むように虚空を握る。


「シャード」


 その声とともに彼女の足下から影が蠢く。

 それは影だ。光に照らされたものの後ろに生じる影。通常は物質ではないが、彼女の力でそれは手で触れることができ、影が物質界へ顕現し、ベルーナの手まで伸び、それは瞬時に形を成す。


 そしてベルーナ・ジルミゾンの手に大鎌型の神器《影鎌シャード》が顕現した。


「殺されたくなかったら、逃げてもいいからね?」


「それは煽りですか?」


 いいや、これはベルーナからの純粋なアドバイスだ。


「――『蒼焔神冠カルフィマ』」


 その瞬間、ユリナは青い炎に包まれる。


「炎系、しかも青い炎ですか」


ほむらッ!!」


 ボォウッと炎の音が鳴り、ベルーナの目の前が青で染まる。通常の赤い炎とは違い、温度が高い青い炎が触れる寸前で横切る。戦闘態勢の証である神器を顕現したのにも関わらず、炎の熱がしっかりと伝わってきた。

 熱い、と反射でベルーナは地面を蹴って距離を取る。炎なんて見飽きたものだが、青い炎はベルーナであっても真新しいものだ。


「その太刀筋……いいね」


 見た目に反して、そして刀を手に入れるからこそ剣術、そして体躯の大差など気にせずに刃を向け、流れるような無駄のない動き……。

 なぜ、ここまで分析できるのかは無論、仲間に刀使いがいるからだ。

 それも一つの究極を体現した技術を持った、そんなジュウロウの太刀筋、戦い方をまじかで見ていれば、刀の他、刃を扱う相手の技量を簡単に見定めることができる。


「ふん、刃の筋ならこっちも負けられないねッ!!」


 長身であるベルーナと対照的なユリナ。素早さで言えば、ユリナに分があると思われるが、それで最破の一人に数えられたベルーナ・ジルミゾンに勝てるのだろうか。


 そして何の理由もなく、大鎌を主武器としているわけではない。ベルーナは軽々と大鎌をブンブンと振り回し、武器に目線を向けさせると利き足を前に出して踏み込み、地面ギリギリの低さから斜めに振り上げる。


 それは大胆な軌道であり、跳ねるような軌道だ。武器自体の長さによるリーチの有利、技量による武器の扱いから刃の射程すら慣れるまでに時間がかかる。


「くッ!!」


 青い炎を刀身に纏い、鎌の弧を描く刃を刀で弾く。


「――〈蒼焔そうえん身影しんえい〉」


 その瞬間、ユリナの身体が青い炎に包まれて人型の青い炎となる。隠れたつもり、いや防御系の能力か……。

 だが、それは同じ形を成す分身だった。

 外見は正確には模すことができないため、自分も分身と同じように青い炎で包まれることで判別を防いでいるのだろう。


 そして彼女自身の魔力量がレイムやエマのように一目見て、膨大であり、放出することで流れを生み出すほどの魔力量はなく、ジュウロウのように剣士としての運用する魔力量しか持っていないのだろう。

 存在の位階が高い神様や魔力を多く体内に保有して性質が似ている存在は後天的に体内に保有する魔力量が増加するなど才能が関係し、個人差も激しいものだ。


 だが、それで片付けられるほどに神クラスの能力を保有する少女は甘くなんて見られるはずがない。存在が保有する魔力量の差によって戦闘は確かに左右されるが、それをカバーすることができる要素として魔力発生量が奔流のように溢れ出すなら、話は別だ。

 でも、ユリナがそんなことを成せるとは思えない。


「違いが判らないが、全てを斬ればいいだけ」


 ベルーナは鎌に影を纏わせて漆黒の斬撃を飛ばす。

 青い炎の人型を一体一体を消していくが、本物であろうユリナは炎の中身に彼女はいなかった。

 魔力量が少ないからこそ、分身と同じような力と酷似することができる。


 そしてどこからかユリナの声が聞こえてくる。


「――〈蒼焔そうえん燃海ねんかい〉」


 その瞬間、周囲が青い炎に染まる。

 決して広範囲ではなく、炎に包まれているベルーナの身体は燃え始めているが、最初の身体強化で炎が纏わりつくだけで済んでいる。

 ユリナの魔力が周囲に存在するため、魔力感知が敵地である領域の特性上、判断することは不可能となっている。


 だからベルーナはその眼で判断するためにあちこちに目を向ける。


 そして人影が視界の端に映った瞬間にそれを追い、全ての感覚を研ぎ澄ます。


「――〈蒼焔そうえん斬断ざんだん〉ッ!!!」


 その声の方を向いた瞬間、巨大な青い火柱がベルーナ・ジルミゾンに迫り、大鎌を振りかぶるが、問答無用で青き炎に包まれた。




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