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9話 神と人の成長事情



 ザバッと黒い液体が打ち上げられて、白い身体が現れた。

 ソージと同じくレイムもジュウロウ式訓練をやってきたが、他の生物のように訓練の成果は身体ではなく、行使する力に現れるため、その身体は未成熟の子供のものだった。


「あ……」


 とリツリが声を漏らす。

 彼女の本心は主のレイムとソージの距離を縮めるための誘導だったが、それは予想外だった。


 黒い長髪、白い肌、俗に言う女の魅力であるものはまだ実っていないが、その姿は正に神々しいものでソージ達は釘付けになった。


「あ、あ……べ、べつに、自己責任だから、は、入れば?」


 初めは止めてと言おうとしたが、それでは嫌な雰囲気になって遠くに行ってしまうと考えて端的に言うなら、ムキになった。


 恥ずかしさを押し殺して、レイムは強者らしく誘ったが、三人の頬を赤らめた反応を見て、自分が恥ずかしさの対象に裸を晒していることに気づいて、驚き、声は出ずに、近くにいたリツリに抱き着いた。


 ザバっとまた黒い水飛沫が舞う。


「うぅ~リツリぃぃぃ」


 幼少期の頃に見せた甘えん坊を久しぶりに見せて、おまけに自分の胸に飛び込んできた状況にリツリは内心、ニヤついていたが、それの半分は顔に表れていた。

 リツリの胸に抱き着いており、湯船の高さ的に小さな背中が黒髪から覗いている。


「レイム様、いいんですか?」


 レイムは小さく頷いた。

 ソージ達は心を落ち着かせて、その湯にまず足をつける。

 バチッと電気のようだが、違う。ソージは少し驚いたが、それだけだと予想してソージは湯船の底に足をつける。

 レイムは蹲っていたが、リツリに抱きかかえられるようにしてソージ達を見る。

 彼女にとっては魅力的過ぎるソージの身体、ソピアは自分と一つ上の十三にしては自分より発育しているし、サリアはソージと十六歳の幼馴染、完全に成熟している身体をゆっくりと見渡す。


 それにソージ以外は気付かないわけがない。同性であるレイムなら理解しているが、自分の身体に来る目線に敏感なのだ。


「レイム様、そんなに身体が気になりますか?」


 ごもっともなことを言われて、レイムは硬直する。

 だって、だって、だって……と、そう連続して心の中で呟く。


「逆に、ならないの?」


 返答が分からないため、逆に質問する。

 この感情は間違っているのか、自分はおかしいのかとそう言われたら、疑問になるがソピアの表情は明るく、面白そうと興味津々な顔だ。

 基本的に好奇心旺盛で明るいソピアはソージを通り越してレイムに近づく。

 顔が近い、近距離だ。

 もっとも年齢が近いのはソピア・レスティアルだ。自分とは違う匂い、色、形をしている彼女にもレイムは顔を赤らめる。


「なります。なります。レイム様の身体も気になります!!」


 肝心な胸の方はレイムの二倍、いやそれ以上はある。勇者としての軽装備にしっかりと収まる大きさだが、それでもレイムには大きいに変わりない。

 そう、そうだ。

 圧倒的強者である自分、レイム・レギレスが唯一劣等感を感じる。


「私が唯一、劣等感を感じる要素……それはむ、む……成長事情だ!!」


 本当は『胸』と言いたかったが、恥ずかしいからやめた。


「まぁ、それは子供なら気にすることですよ」


「そ、そうだよな!!」


 そのことを自問自答していて別におかしくはないと分かってつい大声になる。

 その動揺の反応から感情を読みやすい人物、ソピアならすぐに理解できることだろう。


「で、何か知りたいですか?」


「え、ん……ふん!!」


 と、言葉では言い表せないものではないが、言いたくないレイムは軽く自分の胸を掌で叩く。

 女の子が悩むものは限られている。


「胸ですか~成長する秘訣は~」


「うん……」


 本気で気になるレイムはソピアに顔を近づける。


「揉む、ことですね」


 右手を前に出し、揉む動作をする。

 まぁ、レイムも聞いたことはある。リツリ、レイン、ベルーナ、ワーレストから成長するにはどうしたらいいかと質問をした。栄養を取る、運動をするなど納得できるものはなく、胸を揉むというものもあったが、それをワーレストはぶった切るように否定した。

 ワーレストに言わせれば、個人差という一言で片づけられてしまうがレイムに希望を持たせるためにそれは決して口が滑っても言えない。


 レイムも自分でやったが効果はないため、納得は出来ていない。


 そんな試行錯誤しているレイムにリツリが言葉を投げかける。


「湯船の中なら、筋肉が硬直していないので効果はあると思いますよ?」


「ん……なら」


 ダメ元だが、やらないよりマシだと思い至ったレイムは胸を前に出す。

 ソピアの眼前には小振りの中の小振り、ギリギリ膨らんでいるが、掴めるかどうかと言われたら無理なものが出された。

 神々の中の神にして世界を創造した偉大な神の末柄、五代目破壊神レイム・レギレスの胸を揉むなんてソピアは少し緊張したが、それを上回る興味があった。


「はぁ、はぁ……」


 と、お互いの息が上がる。湯の温度もそうだが、今日初めて出会った金髪に二つ結びの少女が急接近してきた。

 二人の息が明確に感じ取れる距離、自分より少し背が高く、胸も少し大きい。

 でも、自分と一番近い同性の存在。


 そしてソピアの右手がレイムの膨らんだところに触れた。

 指先からふんわりとした感触に伝わるが、その感触は一瞬にも思えるものですぐに胸骨の硬い感触にぶつかる。

 胸の肉の厚さを確認する。


 次に手を広げてレイムの左の胸を掌で覆うように触れる。

 ぷにっとした感触に掌の中心に胸の真ん中にある小さなものを感じる。手を萎めて胸を摘まみ、揉む。


「んんっ」


 胸に意識を集中していたレイムから声が漏れる。

 もう片手の方でも胸に触れて揉む。残念ながら掴めないが、掌で胸の肉を転がすように、小さく回しながらソピアは揉む。

 暖かさを感じるレイムの胸を数回、揉みしだくと止まらなくなる。


「あ、あぁっ」


 ソピアはレイムに寄り添い、腕、下半身、足を密着させる。


「そ、そぴ――」


 その光景は異性にとって毒に違いなかった。

 少しやり過ぎだとソピアを止めようといたが、言葉に詰まって目を背ける。


「大きくな~れ、大きくな~れ」


 おまじないを唱えながら、ソピアは続ける。

 その光景にリツリとルカルは何とも言えず、凝視してソージとサリアは目を背けながらちらちらと確認するだけだ。

 自分の胸を揉まれて喘ぐレイムの声ともう攻め続けるソピアのおまじないを唱える声だけが響き渡り、少し甘露な雰囲気に満たされた。




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