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セカンドワールド!  作者: こ~りん
五章:旧き血を受け継ぐ者よ
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93.赤熱の鬼

 天蓋の森、深層。ハイエルフ達が言うには『古の森』。

 この世界で最も古くから存在する森であり、妖精郷と()()()()繋がっている土地だそうです。


 とは言え、実際に辿り着けた人は誰一人いないらしく、それもあって詳しい場所を知っているのは長老だけらしいです。

 それに、妖精か精霊の導きがあればどこからでも行けるのもあって、わざわざ知ろうとする人もいません。


 さて、深層に生息している魔物は最低でも80後半、たまにレベル100を超えた個体も徘徊しています。遭遇するのは稀ですが、見つけたら積極的に斃したいところですね。


「……噂をすればなんとやら。ベレスが大物見つけたみたい」

「おっ、じゃあ早速斃しにいこっか」


 中層よりも影が多いフィールドなので索敵をベレスに任せていると、先日集団で斃したレベル100超えの魔物に引けを取らない大物を見つけたようです。

 私達だけで斃せば、きっと大量の経験値が得られることでしょう。


「――いた!」

「ヘイトは任せるからね!」

「オッケー!」


 私が高火力を叩き出すには、相手に居場所を認識されないことが大事ですからね。加えて私には、森の中でも速度を落とさず縦横無尽に駆け回れる手段があるので、ユキには回避タンクを担って貰います。


 遭遇した魔物の名はタイラント・ハイオーガ。レベルは102でした。


 まずユキが単身で突撃し、ヘイトを奪います。

 それを確認してから私は木々に隠れて背後を取りました。


「たしかオーガは物理攻撃が得意なんだよね……っと、まあ受け流せるからいっか」


 豪快に振り下ろされた拳を受け流して、ユキはカウンターを叩き込みます。ですが、聞こえてきた音から察するに、かなり頑丈な皮膚を持っているようですね。

 物理ステータスに特化したオニビトでも、あの防御力を突破するのは難しいでしょう。


 ……ならば!


「ゴガァアッ!?」

「ナイス!」


 後ろは全く警戒していなかったのに、渾身の振り下ろしでも僅かしか食い込みませんか……

 しかし、本命は物理攻撃ではなく呪いです。【死呪】を圧縮して傷口に叩き込みましたから。


「油断しないでね」

「するわけないでしょっ!」


 素早い薙ぎ払いをその場で跳躍して躱したユキは、体を回転させてその腕に二連撃を繰り出しました。

 脇差しを手に入れてから、ユキは【二刀流】を取得しています。


 彼女曰く、『朱色鴉』は斬りつけた回数に応じたスタミナの奪取が主な効果らしいので、強敵との戦闘が今まで以上に得意になったそうです。


「ゥゥゥ……ガァアアアアッ!」


 一〇分ほど攻撃を続けていると、タイラント・ハイオーガは風圧が発生するほどの咆哮を上げました。

 赤褐色だった肌が赤熱し、しかも血が凝固することで傷口を塞ぎました。


「うわっ!?」


 タイラント・ハイオーガはその拳を地面に叩きつけると、あろうことか、()()()()()()ひっくり返しました。

 とうぜん、地面の上に立っていたユキは巻き込まれ、空中に放り出されます。


「わっ……と、ありがと!」

「お礼は後で。来てるよ!」


 いくら彼女が器用でも、空中では踏ん張るのも受け流すのも限界があります。なので【呪骸纏帯】でサクッと救出しました。


 タイラント・ハイオーガの顔がこっちに向きます。ヘイトはユキが集めていましたが……私にも向けられていますね。

 仕方ないので私も前に出ます。


「ベレス、攻撃形態」

「mya!」


 ついでにベレスにも戦って貰いましょう。

 攻撃形態はグレイを相手に使用した姿を改良したもので、その時よりもパワーアップしています。いつか本当にネームド認定されそうですが、絆アクセサリーが壊れない限り、何があっても大丈夫なはずです。


 今まで影の中にいたからか、タイラント・ハイオーガは突然現れたベレスに意識を奪われました。

 その隙をついて私とユキは攻撃を加えたのですが……さっきより硬くなっていませんかこれ。


「自己強化? 背水の陣かな」

「どっちにしろHPは削れてるだろうし、油断しなければ大丈夫でしょ」


 HPは生命力なので、この赤熱した状態のタイラント・ハイオーガは、ある程度追い詰められた状態と捉えることができます。

 まあ、動きが悪くなるどころか、キレが増しているんですけどね。


「《二刀流:花吹雪》!」

「《大切断》!」


 ユキは倍以上の速度で踏み込み斬り刻むアーツを、私は斬撃の威力が《スラッシュ》の二倍になるアーツを繰り出し、それぞれ両腕に痛打を与えます。

 しかし、それでも斬り落とすには至らず、タイラント・ハイオーガの両腕は健在です。


「myaaa!」

「グゥゥ……ッ!」


 ベレスは跳躍してから縦方向に一回転し、頭に叩きつけを食らわせています。

 たたらを踏んだのを見てベレスは、僅かな硬直の間に、刃と化した爪でその全身に浅い傷を与えました。


 たとえ浅くても、全身に傷を付けられれば鬱陶しく感じるものです。数秒だけヘイトを一身に受けたベレスは、即座に反転し注意を引きます。


「――変則《乱れ咲き》!」


 それに釣られて振り返ろうとしたタイラント・ハイオーガの首に、ユキの刀が食い込みました。


「……あ、やばっ!」


 威力が足りていないのは分かっていたはずなのに、どうやら油断したようですね。首の中程に食い込んで抜けなくなったみたいです。


「《フェイタルラッシュ》!」


 ですが、隙が生まれたのは事実です。

 つい最近修得したばかりのアーツをお披露目しましょう!


「グ、ガァ……ァァァアアアアッ!」

「これで、トドメ!」


 《フェイタルラッシュ》は、50台の魔物なら触れただけで即死するほどの呪いを込めた連続攻撃です。今回は【死呪】と【即死】を組み合わせました。

 トドメの一撃をユキがこじ開けた首に叩き込んで、タイラント・ハイオーガの目からようやく生気が失われました。


 その図体に見合う量の鮮血を傷口から噴出させ、大きな振動を立てて仰向けに倒れます。

 死体はポリゴンになってドロップ品だけが残されるのですが、苦戦しただけあってかなり上等な素材が手に入りました。

 ボロボロにした分、入手量は少ないんですけどね。


 それと、この戦闘でレベルが91になりました。レベル100はまだまだ時間が掛かりそうですが、トレントの枝を採取しに行くまでに達成できそうな気はします。

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