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セカンドワールド!  作者: こ~りん
五章:旧き血を受け継ぐ者よ
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90.天蓋の森にて

 翌日、アイテムと食事を補充した私達は天蓋の森にやって来ました。

 以前来たときもかなり奥まで進んだのですが、全体から見れば端の端、奥地とは到底呼べない距離です。

 ツェツェーリアさんの助言もあるので、暫くは天蓋の森の攻略に集中しましょう。


「――そっちいったよ!」

「任せて!」


 森という不整地での戦闘はスタミナを削られます。レベル的に格下でもジャイアントキリングが有り得ますから、油断せず確実に屠りましょう。

 幸い、ユキはクリティカルでの一撃必殺、私は死角からの高威力攻撃による一撃必殺と、戦闘時間そのものは短いです。


「この辺はまだ楽勝だね。中層辺りからかなり辛くなるって聞いたけど……」

「んー、私はともかくロザっちは大丈夫じゃない? リジェネ持ってるんだし」

「まあ、うん、そうだけどさ」


 一番の懸念点は深層がどうなっているか分からないことです。奥地と呼ばれる場所がどこに位置しているかによって話は変わりますが、もし深層より更に深い場所だったら、長期間の攻略を覚悟しなければならないでしょう。


 斃した魔物のドロップ品を確認しつつ、私達は歩を進めます。


 現時点で遭遇しているのはレベル50台の魔物ばかりです。猪や鹿などのありふれた魔物から始まり、樹上から奇襲してくる大蛇や、ゴブリン系の上位種、虫系の魔物ともたくさん戦いました。


 虫系は特に数が多いので敬遠されがちですが、素材の価値でいえば結構高いんですよね。

 ポーションの材料だったり、防具だったり、医療用の薬だったりと、その用途は多岐に渡ります。日常的に消費されるので、必然的に一定の価格で買い取って貰えるのです。


「えっと、たしかこの辺が精霊に拉致された場所だっけ?」

「そのはず。……時間も遅いし、今日はログアウトして明日続きをやろう」

「おっけー」


 バフ目的でテントを持ち込む人もいるのでしょうが、結界も何も無い状態で設置すれば破壊されるのは目に見えているので、私もユキも持ってきていません。

 UIからログアウトを選択してまた次の日。


「――植生が変わってる。多分ここからが中層」

「およ? 分かるの?」

「【植物学】あるから。……よく見るとこの辺から違う植物でしょ?」

「言われてみれば確かに……? 言われないと分からないなー」


 私が示した場所を境に生えている植物が違うのですが、これは【植物学】が無いと判別が難しいですね。取ってて良かった植物学。

 はい、と言うわけで難なく中層に辿り着きました。


 遭遇する魔物のレベルは60から70後半、かなり強くなっています。

 ですが、その程度で苦戦するはずもなく、一〇秒もあれば斃すことが出来ちゃいました。


「あ、見てみて、レア泥」

「えっと……今すぐ捨てて」

「はーい」


 それから数日掛けて攻略していたのですが、たまに地雷アイテムがドロップするんですよね。基本的に植物系の魔物からドロップするのですが、時間経過で復活したり侵食したりと、所持するのを躊躇う効果が付いているんですよ。

 そういうのは私が見て、捨てるかどうか判断します。【植物学】様々です。


 どのみちインベントリがどんどん埋まっていくので、取捨選択をしないといけないんですけどね。

 ちなみに今捨てさせたのはアルカッゾの球根です。周囲の植物や生物に根を張って成長、復活するタイプのアイテムです。どう考えても魔物です。


「念のため斬っておくね」


 放り投げた球根を空中で綺麗にバラバラにしたユキは、満足そうに頷きました。


 あ、ハロウィン限定ドロップ品であるカボチャ(なぜか品種改良済み)は確保してあります。料理系の生産をする人達が高額で買い取ってくれるので。それもあと数日でドロップしなくなりますが。


「ん、そろそろ深層に到達してもいい気がするんだけど……」


 マップを開いてみると、外縁部の約五倍の範囲が埋まっていました。

 つまりそれだけ奥へと踏み入っていることなのですが……はい。全然深層に到達しません。大陸中央を中心に天蓋の森があるので、距離的には深層に到達していてもおかしくないんですよね。


 どうなっているのでしょう?


「ユキ、何か変化あった?」

「うんや、なんにも。遭遇する魔物も代わり映えしないし、どうなってるんだろうね?」


 もはや片手間で処理できるようになった魔物が哀れですが、自分から突っ込んできているのですから慈悲はありません。

 翌日、翌々日も代わり映えは無く、まさか必要なフラグが立っていないのではと思い始めた頃……


「んっ!? ……びっくりしたぁ」

「ユキ?」

「あー。とりあえず見て。深層に辿り着けない原因だと思うから」


 一歩進んで戻って、という謎行動をしていたユキに言われたとおり、そこを【鑑定眼】と【看破眼】を併用して見てみました。

 するとどうでしょう。視界には何も映らないのに、旧き血の結界と表示されるではありませんか。


「旧き血の結界だって。どう考えても……」

「ハイエルフだよね……」


 さてどうやって解除しましょうか。

 とは言え、無理やり解除すると宣戦布告と捉えられかねないでしょうし、一番は向こうが気付いてくれることなんですよね。


「私の刀で斬れないかな……?」

「出来るだろうけどやめてね。最終手段ってことで」


 魔法の天敵と言える性能ですからやろうと思えばやれるでしょう。ただその場合、この結界を破壊する確率が高くなるので、十中八九敵認定されるでしょうけど。

 資格が必要な何かに挑戦するために来ているのですから、恐らくそれを守護しているであろうハイエルフと敵対したくはありません。


 しかし解決策が思い浮かばないのも事実で……やむを得ずユキにゴーサインを出しました。


「よーしいくよ! 【銀世界】!」


 鞘から解き放たれた刀が極寒を纏い、旧き血の結界を綺麗に切断していきます。抵抗らしき抵抗もなく、ものの数秒で人が通れる隙間が出来上がりました。

 隙間の先には中層とはまた違った景色が広がっているので、妖精郷のように存在している場所がズレているのでしょう。


 結界内部は木々の間隔が少し広く、視線を上に向ければ空が見えます。その先には天を衝くほどの切り立った山が聳え立っていました。

 山頂は見えないどころか中腹からだんだん透明になっていて、なのに雲がドーナツ状になっているので、山自体は存在していることが分かります。その周囲を旋回する謎の物体を含め、まさにファンタジーな光景です。


 ですが、ぶっちゃけそれらは些事です。

 今この場に於ける一番の問題は――


「何者だ! 我らの結界を破り侵入するなど、何を考えている!?」


 結界を超えて侵入した私達を包囲する、ハイエルフの方々です。

 ……どうやって説得しましょうか。

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