表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドワールド!  作者: こ~りん
五章:旧き血を受け継ぐ者よ
88/115

88.幽闇の濡れ羽

「――おー、これこれ! 脇差し!」

「カアア……ワレハ帰ルゾ……」


 ユキに脇差しを渡して、どこか疲れたような様子の烏は羽ばたいて去って行きました。

 それと手紙代わりにした【リクエストボックス】の要望欄ですが、きちんと伝わっていたようでこちらもお返事が来ました。

 装備の性能を確認した後で冥府の城に伺いましょう。


====================

『幽闇の濡れ羽』

 冥府の職人が手掛けた最高品質の礼服。戦闘を主目的とした者のために作られており、その品質の高さから冥府城の宝物殿に奉納されたオリジナルである。

 冥府神がお気に入りの来訪者に送った品のため、強奪した場合は神罰が下るだろう。

【身体強化】【抗魔】【自動修繕】

====================


 これは男性物らしいですが、デザイン的に男装する女性用なのでは? くびれとか意識してありますし……

 大まかな形は燕尾服に酷似していますね。雨に濡れた烏のような光沢があり、腰から裾に掛けて羽根が刺繍されています。


 装備すると……おお、一気に体が軽くなりました。【身体強化】の効果でしょうね。

 【抗魔】は魔法攻撃への耐性が上がり、【自動修繕】はその名の通り耐久値を回復する効果があるようです。


「どう?」

「似合ってるよ! カッコイイ! 可愛い!」


 何を着てもユキは褒めてくれるので参考になりにくいのですが、やはり褒められるのは嬉しいものですね。

 着心地もいいですし、とても良い装備を貰いました。

 早速狩りに出て性能を試してみましょう。




 転移で移動した先は城塞都市リベリスです。

 この街は魔境と呼ばれる土地が近いため、王都以上に堅牢な壁を築き、腕利きの冒険者や傭兵が一攫千金を夢見て訪れます。

 魔境に生息している魔物は高レベルで、過去には100レベル以上のネームドまで出現した事例があるそうです。


「ついでだしクエスト受けようか」


 冒険者組合はこの街にもあります。そこで討伐クエストを受注し、私達は魔境へ足を踏み入れました。


 リベリスに隣接する魔境は複雑に隆起した平原と森の融合地帯です。ダンジョンと呼ぶのが適切なこのフィールドは、どうやっても消し去ることが出来ないため、定期的に生息している魔物を討伐することで危険を抑制しているそうです。


 今回受注したクエストの内容は、バーストホーンラビット、ナイトビートル、プラントシードの討伐です。


 バーストホーンラビットは凄まじい速度で突進してくる兎で、頭部にドリル状の角が生えているのが特徴です。鋼すら貫通する威力があるので、注意して躱さなければなりません。

 ナイトビートルは騎士のような重厚な鎧を身に纏うカブトムシです。斬撃や刺突が効きにくいので、上手く関節を狙わないと長期戦になるでしょう。

 プラントシードは寄生植物であり、蔓のような植物が体から生えていれば最優先で討伐するように言われました。


 これ以外にも様々は魔物が生息していて、奥へ踏み入るほど強力な魔物が生息していることが分かっています。

 あまりにも危険なため、万が一に備えて王国十二勇士の一人が滞在しているそうですよ。


「王国十二勇士……? 誰……?」


 ユキのように――と言うか異人の殆どは聞き馴染みありませんが、王国十二勇士はこの国で最も強い一二人の騎士に与えられる称号です。

 そのうちの一人は“授格騎士”と呼ばれるアリアさんであり、彼女と同等の戦力が滞在せざるを得ない脅威が魔境にあると言うことです。


「ほら、アリアさんとか、会ったことあるでしょ?」

「あの人か! ――え、あの人が? あと一一人もいるの?」


 アリアさんの無双っぷりは【シュヴァルツァー】との戦いで発揮されてましたが、その実力は異人が何人いようと鎧袖一触に出来るでしょう。

 そんなレベルの騎士があと一一人もいるとユキは驚いていますが、こんな魔境を国内に抱えているのですから、戦力的には十分ありえます。


「さすがにあそこまで滅茶苦茶じゃないと思うけどね……。でも私達じゃまだ適わないと思うよ」

「まだかー。まあラストアーツも修得してないしね。――あ、あれバーストホーンラビットじゃない?」

「myamyamya」


 ユキが指差した先には炎のような体色のホーンラビットが佇んでいました。ベレスもアレが討伐対象だと言っていますね。

 ホーンラビットは始まりの街周辺に生息している、いわゆる雑魚と呼ばれる類の魔物なのですが、バーストと付いているこのホーンラビットのレベルは58、どう考えても雑魚ではありません。


「よし、早速斃してぇぇええ!?」


 木々や隆起した大地によって入り組んだ地形なので脇差しを抜いたユキですが、その四足から激しい炎を噴出して突っ込んできたバーストホーンラビットに驚きました。

 けれど、その勢いを利用して一撃で首を斬り落とした彼女の動きは綺麗なものです。


「バーストってそういう!? びっくりしたぁ……」

「かなり速かったから、不意打ちされると厄介だね。炎の音が煩いから気付くと思うけど」

「そうだねー。あ、あっちにもいる」

「次は私がやるからね」


 今日はこの『幽闇の濡れ羽』の性能を確かめるために来ているのですから、二体目のバーストホーンラビットは私が斃します。

 突っ込んできたところを躱して後ろ足を掴み、短く持ったハルバードで突き殺しました。


 ……体の動きが以前よりスムーズですね。より軽快に動けました。

 思い切ってジャンプしてみると近くの枝に乗れましたので、この装備に付いている【身体強化】はかなり補正が高いようです。


 それから色々な魔物と戦いながら性能を試しました。【リクエストボックス】で入手した装備は途轍もない性能であることを確認したので、あとはレベリングを兼ねた金策です。


 魔物から入手した素材を全て冒険者組合で売却し、インベントリに五万だけ残して残りは預けておきましょう。


「――じゃあ、あとは城に行くだけだね」

「うん。お茶会に招待されたわけだしね。お礼も言わないと」


 【冥府からの招待状】はユキも持っています。これで転移できる先はイベントの最後に訪れたあの城のはずです。

 ポータルに触れ、転移先に冥府の城があることを確認し、私とユキはその城へ転移しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ