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セカンドワールド!  作者: こ~りん
四章:変幻自在のベトゥリューガー
85/115

85.管理者の一幕 その四

 □???


《――仮想運営プログラムζ(ゼータ)より管理者へ警告》

《――並行仮想世界に接近するコア反応を観測》

《――周波数から特性を分析》

《――未確認のコア反応であることを確認》

《――世界の脅威として認定》


「……概念防御を展開しろ。まだ邪神に補足されるわけにはいかない」


《――了》

《――実存主義イグジステンシャリズム虚無主義(ニヒリズム)神秘主義(ミスティシズム)理性主義(ラショナリズム)による四重防壁を起動》

《――並行仮想世界の不在証明を開始》

《――アンカーポイント:アースとの接続良好》

《――不在証明に成功》


 □地球・セカンドワールド運営会社


「――はあ、ぶっつけ本番だが成功したか……」


 背もたれに体重を預け、安堂は額の汗を拭った。


「(異能を発現したプレイヤーが誰一人居ないというのに……想定より早すぎる。オンリーワンスキルの取得を早めるか……?)――いや、それはテコ入れしなくても取得しそうだな。あと一ヶ月もあればレベル100に到達する者も現れるだろう」


 今回のイベントでレベル80に到達したプレイヤーが複数名いるため、一ヶ月もあれば誰かがラストアーツを解放するだろう。

 問題は、この状況で邪神の尖兵の反応を観測してしまったこと。

 観測できたと言うことは、それが可能な距離まで接近しているということなのだから。


「その様子だと成功したみたいだな」

「ああ。幸いなことに、不在証明さえ維持すれば奴らはこちらを補足できない」

「そうか。維持できるのはどの程度だ?」


 休憩のためこちらに戻ってきていた志遠は、手元の携帯端末で部下にメールを出しつつ、安堂に質問を投げかけた。


「もって五年。それ以上は資源が足りない。それに、建設したアンカーポイントの数もギリギリだ」

「……投資しようか?」

「有り難い申し出だが、切羽詰まっているわけじゃない。お断りさせていただくよ」


 そこにエレベーターで降りてきた新堂が現れる。


「……χか」

臥龍岡志遠(ながおかしおん)だ」

「安堂、今回のイベントは第一回より好評に終わったぞ。巡回中のGMからも同じように報告を受けた」

「それはよかった。私からも一つ報告だが、つい先程ζがコア反応を観測した。不在証明に成功したため今回は逃れたが、少し計画を早めることも考慮するべきだと思うよ」


 それを聞いた新堂は、思わず顎を擦った。まだ人間としての感性が残っていた頃からの癖だ。

 記憶と異能を継承した志遠、そもそもが人間ではないが故に人間性を保ち続けている安堂とは違い、歴とした人類出身である新堂はとうに人間性を失っている。


 今の彼は冷徹に思考し行動するだけの哲学的ゾンビであり、その一挙手一投足は元の新堂を模倣しただけのものだ。


「ところで、ハロウィンはどうするつもりだ? 立て続けにイベントを起こすのは推奨しないぞ」

「それは問題無い。……安堂」

「ああ、データの作成は終わっているよ。いつも通り、別部署からという(てい)で表に回してくれ」


 データを入れたUSBメモリが渡される。

 第二回イベントが終わったばかりというのもあり、ハロウィンイベントは小規模なものとなっている。


「――なるほど。あとで運営部門とGM達にも説明しておく」

「頼むよ。私はこちらの仕事で忙しいからね」

「……俺も仕事に戻る。まだ話が出来ていない相手が残っている」


 志遠は再び装置を被り、内部世界にダイブしていった。


「そういえば、観測したコアは遭遇済みの尖兵のものか?」

「いいや、未確認のものだ。【調律者】と【煽動者】ではない」

「特に厄介なその二体ではないのなら、一先ずは安心か……」


 【調律者】は元管理者の尖兵であり、【煽動者】は生まれながらの尖兵だ。

 どちらも厄介な個体なので撃退に成功したものの、斃しきることが出来ずに逃げられている。


「(それ以上に厄介な個体かもしれないが……憶測に仮定を重ねても無意味か)」

「では俺は戻る。今のうちから第三陣の受け入れ準備も進めておいてくれ」

「任せたまえよ」


 USBメモリを携えて新堂も仕事に戻っていった。


 それを見送った安堂はモニターに一人のプレイヤーのデータを表示させた。

 彼女の名はロザリー。第二回イベントのランキングで一位になったハーフエルフであり、現状オンリーワンスキルに辿り着く可能性が最も高いプレイヤー。

 複雑な条件の殆どを既に達成しているため、あとはクエストの発生地点に訪れるだけで空席が一つ埋まるだろう。


「……魔王の座か。我ながら皮肉な席を用意したものだね」


 一般的には悪として使用される魔王という名称を、世界を救う者達のための席として用意したのは彼女だ。

 その名称も含め、皮肉に塗れているスキルと言える。


 安堂は小さく笑みを浮かべ、自分の仕事へと戻った。

 トッププレイヤー達がどんな異能を身に付けるのか楽しみで仕方ない。そんな想いを胸に秘め、彼女は内部世界の監視を続けるのであった。

これにて第四章終了です。

ラビリンスってイベント名に書いてるのに迷宮要素ほとんどありませんでしたし、後半はかくれんぼでもなんでもないバトロワになりましたね。おかしいな……???


この作品を面白いと感じた方はぜひ、評価やブクマ等をしてくださると助かります。下の方に項目があるはずなのでそちらをぽちーっと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王=悪なイメージしかないけど要は魔物、魔族を統べる「王様」だからねぇ... 王様の役割は侵攻じゃなくて統治、上手くやってる魔王は襲ってくる人間となんて関わりたくないから人の世に出てこないし…
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