表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドワールド!  作者: こ~りん
二章:地平線の騎士団
44/115

44.【地平線の騎士団】

本日一話目です。

 □王都・ロザリー


 【シュヴァルツァー】との戦いから一夜明け、私はまだ少し疲れが残る体に鞭を打ってやるべきことをしていました

 事件解決に寄与したことによる報奨金の受け取りや、冒険者組合での昇級などです。


 この二つだけでも面倒極まる手続きがあったというのに、私には更に戦利品であるアイテムボックスの検査が残っているんですよ。

 ピエロから奪った拳銃を含め、危険物が無いかアイテムボックスを提出しました。


「結論から言うと、これに載っているものなら自由に持っていっていい。SGは税金などを抜いた六割が、物品も危険物以外は全部君に所有権がある」


 検査を行った騎士団の詰め所で、騎士さんがアイテムボックスを机の上に置いて中身の目録を私に差し出しました。

 内容は金銭や素材が殆どであり、コンテンダーとその拡張パーツも含まれています。

 しかし、正直言うとこの銃は貰っても嬉しくないんですよね。


 コンテンダーは狩猟用の拳銃です。どの銃弾も使用できるメリットはありますが、射撃も装填も一発ずつしかできないですし、ハルバードで片手が常に埋まる私じゃ一発撃つだけの玩具になるだけです。

 ロマンはありますよ? ただ実用性がゴミなだけで。


 リボルバーかマガジン式の拳銃なら使い道はあるんですが、実用性が高いということはお値段も相応に高いということで……

 しかもこの世界だと、科学技術の産物である銃はリアルよりも高価な物品です。

 

「……いる?」

「いらないかなー」


 ですよね。ユキは刀一本で十分ですか。私もいらないのでこれは売却ですね。

 お金は……全部受け取ると手持ちが二〇〇〇万を超えますか。


 五〇〇万だけ受け取って他は全部手放しましょう。寄付です寄付。

 今回の事件で王都はかなりの被害を受けましたので、私ばかり大金を受け取る必要は無いでしょう。

 報奨金もありますし、これぐらいで十分です。


 時間は……まだお昼ですね。まだ余裕はありますが移動しておきましょう。


「ユキ、行くよ」

「およ?」

「……クラン、私と同じとこに入るんでしょ? 紹介するから」

「分かった!」


 昨日ログアウトしてから色々と考えたのですが、私はディルックさんのクランに加入することに決めました。

 理由は幾つかありますが……PKのような連中も本格的に活動し始める頃合いでしょうし、何かしらの後ろ盾か協力を得られる組織と伝手を持っておくべきかと思いましたので。


 ユキはレベルも装備もほぼ初心者ですが、彼女のPSは私並みなのでレベル以上の強さがあります。ネームド相手に生き残った実績もありますし、ディルックさんなら歓迎してくれるでしょう。

 って、ユキは冒険者組合に登録していましたっけ……?


「チュートリアルクエストってやった?」

「やってないよ? ロザっちに会うために来たんだもん、全部スルーしたよ」

「…………」


 はい、先に冒険者組合ですね。

 この様子だとポータルも解放していないでしょうし、あとで王都と始まりの街のポータルも解放するよう言っておきますか。


 王都の冒険者組合でユキの登録を済ませます。

 クランへの参加申請はランクが低いと書類が必須なのでそれも用意させます。私は今朝の手続きで免除されるランクに上がっているので必要ありませんが、ユキは一番下ですからね。

 ちなみにですが、ユキは勉強は出来る方です。面倒くさいからと怠けるだけで。


「お、終わった……」

「じゃあ行くよ」

「少しぐらいねぎらってよぉ!」

「はいはい偉い偉い」

「やった! 二倍褒められた!」


 あと、私が絡むと少し馬鹿になります。


 ♢


 フレンドメールで伝えられた集合場所に向かうと、そこにはすでにかなりの人数が集まっていました。

 パーティーや知り合いで固まっているようで、統制されている様子はありません。

 まあ一応ゲームですし、リアルのように徹底した統制は必要ありませんか。そういうのは騎士団がやることです。


「――つい先日、我々は理不尽と相対した。悪意によってもたらされる災厄だ」


 壇上に上がり口を開いたディルックさんの表情は、覚悟を決めた人間のそれにとてもよく似ていました。


「ここに集まってくれた君達は実感しただろう。容易く破壊される日常を、容赦なく踏み潰されていく尊厳を……。たとえゲームであろうと、俺はこの理不尽を知って黙っていられるような人間ではない」


 語られるのは彼の心情でしょうか……

 大剣を突き立て、ディルックさんはよく通る声で演説を続けます。


「――俺は、世界派だ。この世界に住む人々のために戦い、未知を開拓し、理不尽に抗うと決めた。クランの活動方針はこの考えと大きく変わらない。馬鹿馬鹿しいと、賛同できないという者は……すまないが去ってくれ」


 頭を動かすと、ちらほらと離れていく人達がいました。

 ここに集まった人の約三割……でしょうか。残っている人はディルックさん同様、真面目な顔でその場に留まっています。

 見知った顔も幾つかありますね。


「…………昨日、俺は夢を見た。すんでの所で助けられず、目の前で人が無残に殺された光景だった。そしてそれは、この世界で実際に起きた出来事だ。俺は、今よりもっと強くなる。誰よりも強く、あのアリアと肩を並べられる領域に至るまで自己を研鑽し、俺の手の届く人々を救いたいと思う。そのためには、俺だけではなく君達の力が必要だ」


 大剣を掲げて、ディルックさんが声を張り上げます。


「――俺はここに、クラン【地平線の騎士団】の結成を宣言するッ! 理不尽に抗う者よ! 誰かのためにと思う者よ! いつの日か……なんて甘いことは言わない! 我々が! 人々を守る剣となるのだ!」

『おおおおおっ!』


 拙く、夢見がちな演説でしたが……私もハルバードを掲げて声を上げました。

 彼ほどではありませんが、私もこの世界の人々と言葉を交わし、彼らの生活を見聞きしてきましたから。

 人々を守る剣……いいと思いますよ。


「いいね――いいね! ロザっち、私も同じ考えだよ!」


 ユキもまた刀を掲げ、嬉しそうに声を張り上げています。

 この場に集った八〇〇人……初期メンバーとしては多い方でしょう。

 【地平線の騎士団】に出した加入申請はすぐに受諾され、私のステータス欄にクラン名が追記されました。


 これまでの(ロザリー)とは違う、仲間と共にある(ロザリー)。自分のためだけではなく、誰かのためにも戦える(ロザリー)

 ロスト・ヘブンの頃とはかなり違いますが……この変化を私は心地よく感じます。

 あの頃と違って、純粋に楽しめているからでしょう。


 ……ユキもいますしね。


====================

【地平線の騎士団】

『ロザリー』レベル51


右手:侵呪のハルバード+5

左手:――


防具:脱兎フード+4

  ├紳士な衣服(上)─インパクトボアの胸当て

  ├紳士な衣服(下)

  ├ハイドスネークのベルト─頑丈なベルトポーチ

  ├金属製の腕鎧

  └【呪骸纏帯 ヴルヘイム】


装身具:妖精の悪戯羽

   └ベレスの絆


スキル:【軽戦士LV21】【ハルバードⅡLV15】【鑑定眼LV8】【看破LV18】【悪路LV11】【襲撃LV13】【斬撃LV14】【跳躍LV9】【呪詛支配LV17】【状態異常耐性:麻痺LV2】【状態異常耐性:毒LV12】【状態異常耐性:出血LV2】【採取術LV2】【採掘LV7】


アーツ:《スラッシュ》《旋風斬》《カウンター》《カースドスラッシュ》

====================

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ