29.装備新調と大量の暗殺桃
今話からステータス欄のSGを削除します。作中で扱う額が少しずつ増えてきたのもあって計算がめんど――ちょっと大変なので。これからは約○○SGや大体このくらい、みたいな感じで地の分に表記していきます。
加えて、ステータスに新しくアーツ欄を追加しました。
翌日、夕方。
昨日の採掘で入手した鉱石を持って始まりの街に移動し、ガンツさんの店に向かいます。
ディルックさんからの勧誘ですが、今は参加するかどうか分からない旨を含めて返信しておきました。そして、いつか参加したいと思ったときは受け入れて欲しいとも。
「防具を作ってください」
「おう店に入って一番がそれか。まあ間違ってないわな」
カウンターで座っていたガンツさんが立ち上がり、採寸のためのメジャーを取り出しました。
「素材の売却込みもお願いします。昨日ミストレイルの鉱山で採掘してきました」
「ほお、中々の量を持ってきたな。防具の部位と使う素材に指定はあるか?」
「腕鎧ですね。私が前に装備していた軽鋼の腕鎧と同じような感じで、素材は軽鋼かもう一つ上のランクの素材でお願いします」
「軽鋼の上か……少し重くなるが、重鋼ってのがある。鋼鉄をスキルで圧縮加工したインゴットだ」
ガンツさんは棚から一つのインゴットを取り出して私に見せてくれました。
それは僅かに青みがかった鋼鉄です。そして、見た目以上の重量を感じます。
「あるいは、外側に重鋼を使ってそれ以外は軽鋼を使うって手もある。耐久値は少し落ちるが、防御力と軽さを兼ね備えられるぞ」
「なるほど。ではそれでお願いします」
「おう。この鉱石は全部買い取りでいいんだな?」
「はい」
生産系のスキルは持っていないので素材は基本的に売却一択です。例外はネームド素材ですが、あれは使い道がいまいち分からないので倉庫に預けてあります。
大量の鉱石が七万SGに化けました。量が多いのと高品質なものも混ざっていたからこの値段だそうです。
これで私の所持金は一〇万を超えたわけですが、この内の五万SGを使って腕鎧の製作をガンツさんに依頼しました。
そして、侵呪のハルバードの強化用のインゴットを二つ購入し、残りは四万ほど。
翌日の昼には完成させると言われたので、私はガンツさんの店を後にして次はシルビアさんの店に向かいます。
「いらっしゃい……。脱兎フードの新作あるよ……」
「こんにちわ。衣服の購入と装備の強化をお願いします」
紳士な衣服の耐久値がかなりギリギリなんですよね。店内に並んでいる在庫から同じ名称の衣服を持ってカウンターに置きます。
「どれを強化するの……?」
「ハルバードと脱兎フードを。ハルバードの方はこれを素材にしてください」
「はいはい……。脱兎フードの強化素材はどうする……? 追加料金だけど私の方で用意できるよ……?」
「それでお願いします」
料金は、紳士な衣服が上下合わせて7,000SG、ハルバードと脱兎フードの強化が合計三万SGでした。
はい、すっからかんです。また稼がねば……
「毎度あり……。また来てね……」
さて、無事な部位と腕以外の装備は新調出来たのでステータスを確認しますか。
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『ロザリー』レベル37
右手:侵呪のハルバード+5
左手:――
防具:脱兎フード+4
├紳士な衣服(上)─インパクトボアの胸当て
├紳士な衣服(下)
├ハイドスネークのベルト─頑丈なベルトポーチ
├――
└【呪骸纏帯 ヴルヘイム】
装身具:妖精の悪戯羽
└ベレスの絆
スキル:【軽戦士LV5】【ハルバードⅡLV5】【鑑定眼LV4】【看破LV12】【悪路LV9】【襲撃LV11】【斬撃LV7】【跳躍LV2】【呪詛支配LV14】【状態異常耐性:麻痺LV2】【状態異常耐性:毒LV12】【状態異常耐性:出血LV2】【採取LV13】【採掘LV7】
アーツ:《スラッシュ》
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ふむふむ、レベルがもうすぐ40になりそうですね。
スキルも充実してきましたし、新規スキルの所得や進化もしたいですね。【軽戦士】と【ハルバードⅡ】と【襲撃】の三つは主戦力なので優先するとして、次点で【看破】を進化させたいですね。
【鑑定眼】と併せて使うことが多い【看破】は、戦闘では必須級の補助スキルですから。
それと、この【状態異常耐性】をどうにか纏めたいところですね。微妙に長いせいで見にくいんですよ。二文字か三文字ぐらいになってくれれば見やすいのですが。
まあ追々考えるとしましょう。
【呪詛支配】は意識して上げる必要が無いので一旦スルー。【悪路】もそろそろ進化させたいですね。
スタミナ消費を抑える系のスキルって地味に役立つんですよね。継戦能力は延ばせるなら延ばした方がいいですから。
「たしか、ミストレイルから王都に行くには東門から道なりに進み、分かれ道を北東に進んだ場所にある宿場町を経由するのが一番近い……っと」
掲示板の攻略スレには、王都までの道のりが丁寧に書かれていました。
出現する魔物のレベル帯は20~28、宿場町を越えると30~35らしいです。
狩りをしながら進めば、王都に着く頃には40になっているでしょうか……?
ですが、その前にクエストですね。さすがに所持金四桁は拙いです。
昨日と同じく始まりの街の冒険者組合で依頼板を眺めます。今日は手軽で数を熟せるクエストにしましょうか。
クエストを受けた私は東の森にいます。
受けたクエストは以前にも受注したことのある暗殺桃の採取です。耐性系のスキルのレベル上げに使えるので採れるうちに取ってしまおうかと思った次第です。
当時よりレベルもスキルも格段に上がった今の私にとって、東の森は自宅とまでは言いませんが知人の庭同然です。
【呪骸纏帯】の一部を腕に巻き付け、片腕の分を伸ばして木の枝を掴み、縮ませて移動と同時にもう片方の腕を伸ばして……と繰り返すことで高速移動します。気分はまるでター○ン。
地面ではなく木の枝を伝っての移動なので、魔物とは遭遇せず暗殺桃がなる場所まで到達しました。
片っ端からインベントリに突っ込みましょう。手が届かない場所でも【呪骸纏帯】を使えば簡単に採れます。
……これ本当に便利ですね。使ってる私でも引くぐらい便利です。
まあ便利なのはいいことです。今日はこのままレベル上げとか考えずに暗殺桃の採取だけに集中しましょう。
そして気が付けばまた夜ですよ。熱中しすぎました。
ター○ンが楽しかったのがいけない。
採取できた暗殺桃は……
「すぅぅぅぅぅ………………」
一〇スタック? 一スタックでもなく一〇〇個でもなく、一〇スタック?
インベントリの枠一つに付き重複可能なアイテムが九九個まで、そして九九個を一スタックとセカンドワールドは認識します。
それが一〇? つまり約一〇〇〇個の暗殺桃が私にインベントリに入っているわけですよ。
どう考えても採りすぎですね。やり過ぎました。
このまま半分を売却するとしても、値崩れしそうですね……
耐性系のスキルのレベル上げに使うとしても五〇〇は入りませんし、どうしましょう。
「――クエストだしいっか」
クエストの内容に個数制限ありませんでしたし、一スタックだけ残して全部冒険者組合に提出しましょう。
きっと暗殺桃が少し値崩れしますが、誤差ですよ誤差。
きっと……ええ、きっと大丈夫、メイビー。




