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セカンドワールド!  作者: こ~りん
一章:憎念に抗え
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14.カースドウェポン

追記:ステータスのスキル欄に【斬撃】と【跳躍】を入れ忘れていたので修正しました。

 階段を降りた先には広い空間と、その中央に佇む一つの台座がありました。

 大理石のようにも見える台座には一振りの武器が突き刺さっています。それは私が得意とするハルバードであり、悍ましく禍々しいオーラを纏っています。


 そのオーラは私の五感に恐怖を訴えかけてきます。

 血で染まったと思われる赤黒いハルバードから侵食するように、その周辺にある全てのものが赤黒いソレに覆われており、触れればどうなるかは一目瞭然です。


 ですが……アレこそが隠し要素なのでしょう。【鑑定】で確認できた情報はカースドウェポン――呪われた武器であることだけ。なぜ呪われているかは、ここまで来た人なら分かるでしょう。

 そして、武器であるのなら入手は可能なんですよ。オブジェクトなら破壊するのも考えましたが、あのハルバードは所有者がいない武器。あの台座に放置されているんです。


 明らかにヤバいと分かっていても取りに行けるのは…………私が異人だからでしょう。命は一回限りのものではなく、死はただの状態に過ぎない。呪われても、死んでも、()()()()……!

 だから私は、ヤバいと訴える感覚を捻じ伏せ、ソレへ近づきます。


「……っ! これ、は……!」


 一歩近づくたびに襲い掛かってくる重圧は、このハルバードに込められた呪いの影響でしょう。呪い……恐らく怨念や憎悪の類いであるその重圧には、近づく者全てを殺そうとする意思を感じます。

 ――状態異常まで付与してきますか。


 死呪――HPがゼロになるまで割合ダメージを与える状態異常ですか。猶予は僅か一分ですが……こんなヤバい代物を入手するための時間が無制限なわけ無いですよね。


「――掴んだぞ……っ!」


 ハルバードの柄を握り、焼けるような痛みに耐えながら思いっきり引っこ抜きます。

 痛覚制限がデフォルトの三〇%から一時的に最大値まで上げられていますねこれ……。ですが、私はあのロスト・ヘブンのランカーです……痛覚制限がイカれてたあのゲームをプレイしていた私が、この程度で逃げようなんて考えるはず無いでしょう!


「っ! 負けるかぁぁぁ!」


 台座から引き抜いてなお暴れ狂う呪詛は、柄を掴む腕へと侵食を開始しました。

 私の腕に赤黒い亀裂が入り始め、それはダメージとしてHPに反映されます。火の中に腕を突っ込んでいるのかと錯覚してしまいそうですが、錯覚はあくまでも錯覚。

 私はただ武器を掴んでいるだけ……この痛みは錯覚です……っ!


「myaaaaa!」


 影から飛び出したベレスが、同化したままの不定形な身体で腕とハルバードに纏わり付きます。呪詛はベレスを侵食しようとそちらにも呪詛を向けましたが、ベレスはなんとそれを取り込み始めました。

 コレを取り込んで平気とは思えませんが、ベレスが私のためにやっているのは明白。

 状態異常も僅かですが軽減されています。


『――ヨコセ! ヨコセ! イノチヲヨコセ!』


 不快で、自分勝手な戯れ言ですね……


「お前を作った奴が狂人なのは分かるけど……だからって私にソレを向けてる時点で、お前に他人を呪う資格は無いっ!」


 カースドウェポンは呪われた武器。なら、それを作った人間は憎悪を向けられるほどのナニカをしたはずです。

 けど、こいつは呪う相手を間違えた。形だけで意味の無い憎悪なら、私が徹底的に捻じ伏せてやる。


「来い……全部踏みにじってやる」

「myaaa!」


 視界の端で警告が表示されるほどの痛みが私の身体を襲います。

 腕はもう殆どが呪詛で染まり、装備していた腕鎧は禍々しいものへと変質しています。亀裂は肩、首を経由して顔にまで侵食し、心臓のある内側にも入り込んでいるようですが……意味の無い憎悪による八つ当たりは私の大嫌いなものです。


 大嫌いなものに負けるのだけは私のプライドが許さない。

 私を侵食しているコレも、武器の中で渦巻いているソレも、全部全部踏みにじって――私の方が上だと思い知れ!


《――意思と絆の力により、武器に宿りし怨念が調伏されました》

《――スキル【呪詛支配】が身に付きます》

《――カースドウェポンを支配下に置きます》


====================

『侵呪のハルバード』

状態:支配、同化ベレス

 生きた人間を素材に鋳造されたカースドウェポン。消えることの無い呪いはあらゆるものを侵食し、その命を貪り食らう。積み重なった怨念は死よりも苛烈に生者を呪う。

※ロザリー以外が装備した場合、状態異常『死呪』が付与される。

※状態異常『死呪』によって死亡した場合、特殊状態異常『アンデッド化』が付与される。

====================


 …………HP、残り二ドットほど。一瞬でも遅ければ死んでいましたね。

 侵呪のハルバードはもう私に逆らう気が無いようで、あれほど存在感を放っていたオーラが消えています。ベレスの同化の対象にもなるようなので、私に逆らおうとしてもベレスが押さえ込むでしょう。

 侵食されていた部位も元通りになっています。腕鎧は侵食されたままですが……なんかかっこよくなってるので良しとしましょう。


 それにしても、人間を素材にした武器ですか……。鋳造と言うことは、生きたまま溶かされたのでしょう。血も、肉も、骨の一欠片に至る全てを利用されたのでしょうね。

 ですが、憐れみなんて覚えませんよ。身勝手に他人を呪うぐらいなら、いっそ潔く消えてしまえばいいんです。それをしなかったコレに同情の余地はありません。


 それと、何やらスキルが手に入っているようですが……あまり使わないでしょうね。

 【呪詛支配】は呪われた武器などの怨念を押さえ込むためのスキルです。呪われた武器の蒐集家なら喉から手が出るほど欲しいのでしょうが、私はこれ一つで満足ですね。

 とりあえず地上に戻りましょう。台座が地上への転移装置みたいなので、それを使って帰還します。




 地上に戻った私は、まず始まりの街へ移動しました。侵呪のハルバードは念のためインベントリに仕舞っています。

 目的地はガンツさんの鍛冶屋です。


「こんにちは。ガンツさんはいますか?」

「おう! ちょっと待て!」


 声を掛けると店の奥からガンツさんの声が轟きました。作業をしていたようで、汗を拭きながら出てきました。


「メンテナンスか? それとも何か買うのか?」

「実は、見て欲しい武器がありまして……」


 そう言って、私は侵呪のハルバードをインベントリから取り出し、間違っても呪いを振りまかないように【呪詛支配】で念入りに抑えつけます。

 それを見たガンツさんは顔を顰め、渋い声で「どこで拾ってきた」と聞いて来ます。


「先日発見された島の廃墟……ですね。地形などを把握するために奥に入り込んだのですが、色々あって地下に落ちたあと見つけました」

「……そうか。異人どもが何やら港に集まってるってのは聞いてたが、あっちに未発見の島があったとはな」

「どちらかというと新たに出現した、らしいですよ。私達はその調査で上陸しています」

「なるほど。――で、何が聞きたい?」


 どっかと椅子に座り、ガンツさんは私を見据えてそう言います。


「呪いの武器の所持に関して問題があるのかどうか、ですね」

「……まあ、結論から言えば、所持するだけなら問題は無い。とうぜん、怨念を抑え込めるなら、だがな。作った場合は即死刑、関わった奴も重罰が与えられる」

「まあ、こんなものを作った人が無罪なわけないですよね」

「そうだ。分かってるとは思うが、呪いなんて言葉以上に重たいからな。武器として使う場合は、まあ人によるとしか言えないな。英雄の中には呪いの武器でネームドを討伐したやつもいるから、装備しているからって捕まることはまず無い」

「要は、怨念をどうにかする力があるなら咎められないってことですか」

「普通はどうにか出来ないから、王都にある呪物庫に納めるんだがな」


 呪物庫は呪いの武器を保管するための倉庫らしいです。なぜ廃棄せずに保管するのかというと、高位の聖職者の中には呪いを浄化する術を持つ人がいるようで、そういった人に頼んで浄化した武器を下賜したり売却するのだそう。

 浄化されたアダマンタイト製のロングソードが騎士団の団長に下賜された、なんて有名な話もあるそうです


「――だが、そうだな。武器としてコイツは未熟に過ぎる。完成されていない」

「……? どういうことですか?」

「強化が必要ってこった。だが、一度武器としての形が出来ちまった以上、鍛冶師の俺じゃ無理だ。合成師のシルビアなら、素材を溶かし込んで一段階強くしてくれるだろうな」

「そうですか……では、私は早速シルビアさんの店に行ってみます」

「おう――って、強化するんならその前に鉱石買っていけ」


 所持金の半分ほどを支払い、ガンツさんから強化素材としてインゴットを幾つか購入しました。

 素材が無ければ合成できませんよね……早とちりして失敗するところでした。


 シルビアさんは脱兎フードを沢山作っている防具屋さんの店主さんです。前に脱兎フードを【合成】系スキルで強化して貰いましたので、彼女が合成師で間違いないでしょう。

 防具専門店の扉を潜り、奥のカウンターへ向かいます。


「いらっしゃい……」

「武器の強化をお願いしたいんですけど」

「いいよ……どれを強化して欲しいの……?」


 侵呪のハルバードを取り出し、ガンツさんにしたように説明し、武器として使うために強化して欲しい旨を伝えます。

 シルビアさんはふむふむと頷いて、カウンターの下から煌びやかな布を取り出しました。


「武器の強化は一回に付き2,000SG……。これの場合は銅と鉄と鋼のインゴットを一つずつだよ」


 ギリギリ足りますね……インゴットを三つシルビアさんに渡し、6,000SG支払って合成して貰います。

 合成は前と同じく、素材であるインゴットが淡い光となって侵呪のハルバードへと吸収されていきました。

 少し重量が増したような気はしますが、それよりも、武器としての存在感が強まったような感覚があります。


====================

『ロザリー』レベル24


右手:侵呪のハルバード+3

左手:――


防具:脱兎フード+1

  ├紳士な衣服(上)─インパクトボアの胸当て

  ├紳士な衣服(下)

  ├ハイドスネークのベルト─頑丈なベルトポーチ

  ├侵食された軽鋼の腕鎧

  └頑丈なゴシックブーツ


装身具:妖精の悪戯羽

   └ベレスの絆


スキル:【戦士LV7】【ハルバードLV6】【鑑定眼LV3】【看破LV9】【悪路LV5】【襲撃LV6】【斬撃LV1】【跳躍LV1】【呪詛支配LV5】【状態異常耐性:麻痺LV2】【状態異常耐性:毒LV2】【状態異常耐性:出血LV2】【採取LV11】


所持金:103SG

====================


 ついでに脱兎フードの強化もしたかったのですが、所持金が足りないので断念しました。

 島に戻る前に、冒険者組合で改造された死体(モッドコープス)のドロップ品や採取物を売却しておきますか。

 インベントリが圧迫され掛けているのでお金に換えておきましょう。

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