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セカンドワールド!  作者: こ~りん
一章:憎念に抗え
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12.奥地への突入

 脇目を振らずに走り続け、私達はやがて広場のような広い空間に辿り着きました。

 噴水だったもの、木々に呑まれ原型を失った馬車や崩れた瓦礫が散乱する、幻想的でありながらどこか恐ろしい広場です。


「………………撒けたみたい」


 長距離を全力で走り続け全員が疲労困憊の中、シェィ・ランさんが後方を確認してくれました。

 他の人が肩で息をしている中、平然と周囲を警戒できるんですから凄まじい体力ですね。


「――さて、予想外の出来事で奥まで踏み込んだわけだけど、何かいい案はある?」


 暫く警戒を続けて、何故か広場周辺に魔物が見当たらないため建物の中で休憩していた私達は、三〇分ほど思い思いに休んでから作戦会議を始めました。

 散乱している瓦礫のせいで狭い室内ですが、街以外で安全が確保されている場所が貴重なので文句は言いません。


「あの腕を倒すのは論外として、やはり探索をするべきではないか? 兎にも角にも我々は無知だ。メタ視点を抜きにすれば、この世界のことを何も知らないのだからな」

「私も賛成。マップは先に埋めておきたい派だし、無理して経験値を稼ぐ必要も無いでしょ?」


 男爵さんとリンゴさんは探索を優先したいみたいです。


「…………深すぎる。危険だ」


 シェィ・ランさんはポータルへの帰還でしょうか。


「私はどっちでもいいかなー」


 そして、猫さんはどちらでもない、と。


「――そもそもの話なのですが、このイベントはこの島を調査することが目的になっていますよね? 具体的な指標もなく手探りの状態ですが、いっそのこと奥まで進めば何かはあると思うんです」

「ふむ……一理ある」


 私はどちらかと言えば奥に進みたい派です。

 今回のイベントは、有り体に言ってしまえば投げやりすぎるのです。内容を要約すると『よく分からない島があった! 調査しろ!』ですからね。

 だから、調査するべきモノが一切不明なんですよ。植物の分布も魔物の生態も調査できますが、いっそ奥まで進めば何か核心に迫れるモノがあるのでは……と、私は思うのです。


「だが、廃墟の奥はまだ誰も踏み入ったことが無い。掲示板で駄弁っている連中も同様だ」

「分からないからこそ調べに行くのでは無いんですか?」

「それはそうだが……ううむ。どう考えても結論が同じな以上、やはり探索を優先するべきか」


 危険を承知の上でなと付け足し、シェィ・ランさんも自分なりに考えたのか行けるところまで行くと口にしました。

 死なずに帰還しても、リスポーンするハメになっても、もう一度突入するかどうかは話し合って決めるべきでしょう。


「じゃあ、探索をするってことでいいかな?」


 そうと決まればすぐに行動に移す。

 インベントリに仕舞っているアイテム類を確認し、武器を携え、気持ちを切り替え警戒しつつ広場を出ます。

 すると早速エンカウントしました。はい、改造された死体(モッドコープス)です。しかも五体ですよ。めんどくせ。


 男爵さんがヘイトを集め、私、ディルックさん、シェィ・ランさんの三人で素早く片付けます。そして五体目がポリゴンになって息を整えようとすると、また改造された死体が襲い掛かってきました。

 経験値は美味しいんですが、ドロップ品がゴミばかりなうえ数も多いのでもうお腹いっぱいです。それでも襲ってくるんですけど。


 なんですか。生きてる人間ぶっ殺してやるって情熱でも胸に秘めてるんですかこいつらは。


「…………片付ける」


 それから、近接戦闘が可能な人でローテーションしながら敵を倒し、廃墟の中を止まらずに駆け抜けました。


「左右から二、三!」


 やはり物音に反応しているのか、改造された死体は絶え間なく襲い掛かってきます。


「燃えよ!」

「回復させるよ!」


 数が多いときはリンゴさんの魔法で数を減らし、猫さんが疲労を回復する魔法を掛けてくれます。

 物量というのは本当に厄介で、純粋に手数が足りなくなってくるんです。あの腕がいなかったとして長時間戦闘していればやがて倒れてしまう。

 ここはレベル以上に慣れが必要となるフィールドですね。


「どれだけ進んだ!?」

「三〇〇メートルだ! 奥地と呼ぶにはまだ浅い!」

「くそっ――邪魔なやつ以外は無視だ! 足はこっちの方が速い!」


 わらわらと湧いてくる敵を一々相手にしていたらキリがありません。倒して進むのではなく無視して進む方針に切り替えたようですね。

 では、片足ぐらいは斬っておきますか。焼け石に水でしょうが、多少は意味があるはずです。


 魔物とはいえ外見は人間とほぼ同じ。足首の裏側を斬っておけば立つことすらままならないでしょう。

 生きているのなら血管が通っている辺りを斬って失血死を狙えるのですが、アンデッドはすでに死んでいる魔物。移動がおぼつかなくなる程度しか効果はありません。


 進行方向から襲ってくる数体のみを相手取り、MPやアイテムは惜しまずに使って奥へと駆けていきます。

 倒した直後の僅かな時間でポーションを消費し、足を止めること無く万全の状態を保ちます。

 疲労回復ポーションを幾つか買っておいて正解でしたね。長距離を移動する際にこれほど便利とは思いませんでした。

 レベルアップの通知も、ドロップアイテムの確認もできませんが、今はとにかく距離を稼ぐのが目標です。


「――また来たぞ!」


 背後からあの腕が出現したらしい轟音が響きました。

 ちらりと確認すると、建物や改造された死体を薙ぎ払いながらこちらへ近づいているのが分かりました。


「二体目だと!?」


 そして、進行方向にも同じ腕が出現しました。

 これ以上先に進ませたくないのか、道を塞ぐように建物を破壊しての出現です。周囲は改造された死体が塞いでいますので、完全に包囲されてしまいましたね。


「っ、足下に気を付け――」


 地面が揺れて大きな亀裂が発生しました。

 男爵さんとシェィ・ランさんが巻き込まれて落ちてしまいましたが……HPゲージが残っているので生きてはいるのでしょう。


「どうします?」

「撤退しようにも逃げ道が無いからね……先に進みたかったらトリガー踏めってことかな」


 死なずに帰ることは不可能なのですが、どうせリスポーンするのなら少しでも情報を集めるつもりのようですね。

 あ、先に落ちた二人のHPが尽きたようです。何かに攻撃されたような減り方だったので、あの腕のような魔物が地下にもいるんでしょうか。


「私は足場を使って奥に行きます。先に進ませたくないのなら、私にヘイトが来るはずです」

「……分かった。こっちも何とかダメージを与えられないか試してみるよ」


 周囲には瓦礫と崩れた建物がありますので、上手くいけば改造された死体の包囲を抜けられるかもしれません。

 まずは近くの建物の屋根に登りましょう。

 瓦礫を足場にし、ハルバードを地面に刺して高さを稼ぎます。そのまま次の瓦礫へと飛び移り、同じようにまた高さを稼ぐと、何とか屋根に登ることが出来ました。


 ……よし、後は勢いがあれば大丈夫そうですね。邪魔さえ入らなければ、ですが。


「やっぱりこっちに来ますか」


 ディルックさんの言葉通り、先に進みたければどこかでトリガーを踏む必要があるのでしょう。ですが、仮想空間であるこの世界のフィールドに物理的な壁は存在しません。死なないで進めば先に行けるのがVRMMORPGのいいところなのですから、トリガーを踏んでいないとしても進むこと自体は可能なはずです。


 しかし、あれをどうにか出来るなんてうぬぼれはしていません。

 レアエネミーとディルックさんは言っていましたが、ボスエネミー、もしくはレイドボスの可能性だってあるはずです。イベントが進めば判明するのでしょうか?

 それに、よく見ればあの腕は地下から生えているようです。地下に空間がある場所でしか現れない可能性もありますね。


 …………ディルックさん達は被弾してはいますが、改造された死体を次々に撃破しています。あの腕のヘイトが私に向かっているのもあるのでしょう。

 もうすぐで腕の間合いに入ります。防ぐのは無理でしょうから、何とかして回避を――っ!?


「細い……けど三体目がいるなんて……!」


 ちょうど人間と同じサイズの三本目の腕が、瓦礫の隙間から飛びだして私の足を掴んでいます。振り払おうにも私は跳び上がった直後で、姿勢も中途半端なのでハルバードも上手く威力を出せません。


 次の瞬間、細い腕はしなるように振りかぶり、私を地面に叩きつけました。巨大な腕の根元、地面に空いた穴の付近まで転がった私は、残り僅かなHPを視界の端で確認しつつ、ハルバードを支えにして立ち上がります。


「さすがに……無理かな」


 しかし、真上からは巨大な腕が勢いよく迫ってきており、周囲は相変わらず包囲されているので逃げ道もありません。

 強いて言うなら穴がありますが……ほぼ博打ですね。


「…………」


 悩んだ私は、ハルバードをインベントリに仕舞って穴の中へ飛び込みました。

 圧殺されるよりはマシです。VRだとしても自分が押しつぶされる感覚は体験したくありませんし、だったら真っ暗な穴の中の様子でも確認した方が有意義ですから。


 重力に任せて落下し、背中に強い衝撃を感じた次の瞬間、私の視界は真っ黒に染まりました。

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