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セカンドワールド!  作者: こ~りん
六章:機械と共に生きる国
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109.細々と絶えず、命の鳴 その一

「――無理ね……。強化には使えないわ……」


 『破滅の刃片』から目を離して、シルビアさんはそう言いました。


「これは格が高すぎる……。昇華のための触媒としては最上級だけど……、強化のための素材としては強すぎて素体が耐えられないわ……」

「そうですか」


 『呪装:骸の祈り』は現時点でも十分強い部類の武器なのですが、それでも『破滅の刃片』を強化素材とするには不足なようです。

 本格的に強化素材を集める必要がありますね……


「それはそれとして強化をお願いします」

「任せなさい……」


 『破滅の刃片』ついでに、天蓋の森で得た一部の毛皮系素材を使って『業物:脱兎フード』を強化してもらいました。




「さて……何をしようかな……」


 冥府神が示した、私が強くなるための課題は終えましたが、そのあと何をするか決めてなかったんですよね。

 レベリング……は、私自身が一〇〇の大台に乗っているので焦ってやる必要はありませんし、装備の強化は今しがたしたばかりです。


 ハルバードの素材を集めようにも、近郊で入手できるアイテムだともう限界なんですよね……レア度的に。

 レア度が高い鉱石はドロップ率が低いですし、ミスリル以上の鉱石なんて小さな欠片でも莫大な値が付けられるんですよ? なおさら入手が難しいんですよね。


 ……ふもっふさん曰く、装備の品質は一定値まではすんなりと成功させられるけど、それ以上を目指すと途端に難易度が爆上がりするそうです。

 装備に付くステータス補正や、装備自体が持つ攻撃力や防御力は、レア度に比例して最大値が決まっていることも検証で明らかになっているそうですから、生産を生業とする人達は自然と苦行を強いられるらしいです。


 そんなレア度の壁を越えた先に待っているのは、特典装備という絶望。どれだけスキルを鍛えても、どんな技術を身に付けても、特典装備を超えることは不可能と言われています。

 それは異人でも住人でも――神ですらも。


 私が身に付けている【呪骸纏帯】にもあるように、特典装備は不壊という特性が備わっています。

 これはシステムが付与した特性であり、これを人の手で付与出来た例というのは一つもありません。


 生産を諦めて討伐で手に入れようにも、狙った効果の特典装備を入手するためには、それらしい能力を持っているネームドを探さなければなりません。


 つまり、実力がある程度の水準を超えると、装備の強化や更新は難しくなるのです。


「ロザリーさんがこっちにいるの、珍しいですね。いつ戻ってきたんです?」

「今日ですよ。先程までは呪物庫にいました」

「あー……オーナーとロザリーさんぐらいしか出来ないですもんね、アレ」


 ログインしてきたハイトリカブトさんは依頼を吟味しています。

 彼は配信者なのですが、どうやらテンションファイターらしく、その時のテンションによって実力が変わると言われています。

 そして、テンションが最も高くなるのは強敵との戦闘時とも。


「ロザリーさん暇っすか?」

「まあやることが見つからないのは確かですね」

「これ、一緒にどうすか? 少人数推奨の討伐クエストで、推奨レベルは80っす」


 彼は書類の山の下から依頼書を引っ張り出すと、私に協力要請を出してきました。協力要請はクエストの受注者がメンバーを集める時に使う機能です。

 出された側もクエスト内容を確認出来るので一応目は通しますが……推奨レベル以上の危険がありそうなクエストですね。


 注意書きに『近辺にてネームドの目撃情報あり』とある時点で、普通なら受けるのを躊躇いますよ。

 中には私や彼のような強敵と戦いたい人もいるので、一概には言えませんが。


「注意書きのネームドが目当てなのでしょう? 見当はついているんですか?」

「当然っす。名称は【縷縷命鳴 ラ・ターリアザ】、植物型のネームドっす。賞金も懸けられてる大物っすよ」

「……危険度が高いのに、討伐が先送りにされているネームドですか」


 これまで何度も挑んだ冒険者が返り討ちにされ、通行量がほぼ無いとはいえ、街道の一部を塞き止めています。

 騎士団が討伐に出るのでは――と思いましたが、能動的に活動するタイプでは無いため、後回しにされているらしいですね。


 自発的に動き回るネームドの方が厄介なのは確かなので、そちらに戦力を割くのは当然なのですが……


「特徴とか判明して無いんですか?」

「かなり面倒なのが。……あらゆるエネルギーの吸収と放出、それと広範囲の地面に根を張ってるっす。しかも核を潰さないと倒せない系の魔物らしいっす」

「挑戦した人いないんですか?」

「いて、惨敗したから情報があるんすよ。十二勇士の人達なら倒せるかもしれないっすけど、彼らは任務優先っすからねぇ」


 ハイトリカブトさんの言う通り、十二勇士の方々は実力が高すぎるが故に、正式な任務か緊急時でもないと動けないらしいんですよ。

 東の帝国が友好国とはいえ、無闇矢鱈に動かせる戦力ではありません。示威行為とみなされる可能性だってあるんですから。


 だからこそ、賞金を懸けることで積極的に冒険者に倒させようとしているのですが。


「……これ、ユキを呼んでも構いませんか?」

「全然オッケーっす。フルパならちょっと遠慮したいっすけど、三人ぐらいまでは許容範囲内なんで。配信的にも。――あ、ロザリーさんって配信映っても大丈夫な感じっすか? 駄目ならフィルター掛けるっすけど」

「大丈夫ですよ。慣れてますし」


 モデルの撮影とか、色々やった事ありますから。


「そっすか。んじゃロザリーさんと……ユキさんに申請送っといたっす」


 届いた申請を承諾して、彼をリーダーとした三人パーティーが結成されました。

 私がメンバーになっていることに気づいたユキも速攻で承諾してますね。


「――私が来た!」

「んじゃ行くっすよ」


 ボケかどうか微妙なラインの台詞をスルーして、ハイトリカブトさんは出発しました。

 転移ポータルで東門近くに飛んでから、街道沿いに北東に進み、三叉路を二回左に進んでしばらく歩いて見える三叉路を今度は右に進み、その先にある森を右に見ながら街道を少し逸れて移動すれば、討伐対象が出没している地域に到着します。


 まあこのクエストは前座です前座。

 目的はネームドの討伐なんですから、推奨レベル80程度の魔物なんてさっさと蹴散らしましょう。

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