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セカンドワールド!  作者: こ~りん
六章:機械と共に生きる国
108/115

108.呪物庫 その二

 さて、受け取った装身具をインベントリに仕舞った私は、まず武器の解呪に取りかかりました。

 様々なカテゴリーがある武器ですが、大勢の人に使われるのはオーソドックスなものばかり。なので、必然的にカースドウェポンもオーソドックスなものが多くなります。


 カースドウェポンは人為的に作成することが禁忌とされていますが、呪物庫に納められているものの大半は自然発生したもの……呪いを浴びて変質してしまったものです。

 アンデッドを多数斬り伏せた、人をたくさん殺した、返り血を大量に浴びた、そういった状況が積み重なることでカースドウェポンに変質します。


 とはいえ、それらは呪いの中でも軽度な方です。変質した時点で手放すので、比較的呪いが薄い状態で落ち着いているからです。

 厄介なのは、持ち主がアンデッド等の、呪いを発する存在だった場合。


「ロザリー殿、さすがにソレの解呪は無茶なのでは……?」


 カースドウェポンが並べられている棚の中で特に異質だったソレは、【呪怨支配】の対象に選択できるのに呪いを感じませんでした。

 理由は単純で、ソレには呪い封じの札がこれでもかと貼られているのです。


「それは【鑑定眼】持ちでも一切情報を得られない装備です! あまりにも危険すぎて封を外すことが出来ない呪物なのですよ!?」


 手に持っただけで分かる、呪いの濃さ。『呪装:骸の祈り』に匹敵する――いえ、【呪骸纏帯】と合わせてもなおこちらの方が濃いでしょう。

 【鑑定眼】と【看破眼】を同時使用しても、弾かれる感覚ばかりでなんの情報も得られませんでした。


 ……魔王としての権能を重ね掛けすれば、もしかしたら通るかもしれません。

 ですが、それでも躊躇するほどに、この封がされている武器からは、危険な雰囲気が漂っているのです。


「担当官さん、これを譲って貰うことは可能ですか?」

「可能か不可能かで言えば可能ですが……まず御しきれることを証明して貰えないと、許可は出せません」

「ですよね……ふぅ」


 ハルバードの強化素材として優秀に思えたので、出来れば欲しかったのですが……制御できなければ持ち出せないのは当然ですね。

 こちらで使うのは取得した時以来ですが……大丈夫、使い方は覚えています。


「――《私に従え(ルクスリア:コード)》」


 瞬間、ぞわりと不快感が頬を撫でました。封をされていてなお、この武器は私に抵抗しようとしたのです。

 それを上から抑えつけるように、絡め取るように、私の支配下であるという事実を押し付けます。


 【呪怨支配】と併用することで端から支配下に置き、余計な真似が出来ないよう徹底的に叩き込みます。

 呪いは暴れ、私を害そうと内側から封を破り始めました。元から限界だったのでしょう。

 抑えようにも私一人では……少し手が足りませんね。


(……頼めますか?)

『構わないわ』


 ふっ……と負担が半分ほどになります。呪いの制御をルクスリアに頼んだからです。

 彼女はまだ私の内から出ることは出来ませんが、私の内側で、私の代わりに呪いを制御することが可能になっていました。


 システム的には私の一部と判断されているのが少し気に入らないですが、彼女が意思を保ったまま存在出来ているだけ御の字です。


 封が破れ、その呪われた刀身が顕わになります。悍ましい呪いを内包した、深淵のような色合いの刃です。

 私はそこから発せられる呪い……死者の残留思念と呼ぶべきソレを押さえ込み、勝手な真似が出来ないよう私という存在で覆います。


『凄まじい呪いね。魔王の武器の一部じゃないかしら、これ』

(そんなものがあるんですか?)

『災厄となった男が所持していた武器よ。完璧な形で現存しているとは思えないから、欠片を再加工したものだと思うわ』


 ルクスリアはこれを魔王の武器と形容しましたが、当時の姿のままでは無いようですね。

 大まかな形状は三〇センチにも満たないダガーですが、刀身と握りで品質が明らかに違います。急拵えの握りを付けて、ダガーとして扱えるようにしたように思えます。


 これが私の支配下に降ったことを確認し、手に取ってみると、その歪さはすぐに分かりました。

 刃毀れした様子が無い刀身に比べて、握り部分は力を込めすぎると壊れそうなほどボロボロなのです。


「……ま、まさか、解呪に成功するとは……思いませんでした」

「私の装備よりもかなり強力な呪いでしたから、少し手間取りました。それでも制御には成功しました。持ち出しても構いませんね?」

「ええ……そちらも報酬として記録しておきます」


 支配下に置いたことで判明したダガーの銘は、『破滅の刃片』でした。やはりこれは欠片にすぎないのでしょう。

 破滅属性という初めて見る効果が付いており、これによって負った傷は通常の方法では治癒できないと記載されていました。


 同時にヘルプが更新されたのでそちらを確認してみると、破滅属性によって生じた傷は回帰属性を持つ道具や魔法でしか治せないそうです。

 知らない単語を調べたら知らない単語で説明された気分ですが、現状これをどうにか出来る異人はいないと考えていいでしょう。


 ですが、強力な武器には相応の欠点が付きものです。『破滅の刃片』を振るう人も破滅属性の影響を受けるようです。

 この破滅属性は呪いの影響で生まれた効果らしく、きちんと制御出来なければ、振るう度に持ち主も傷つける諸刃の剣だったのです。


 まあ私は制御出来るんですけどね。デメリット無視です。

 シルビアさんの頼んで『呪装:骸の祈り』の強化素材にしてもらいましょう。可能ならこれの性質をハルバードに引き継がせてみたいですね。

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