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セカンドワールド!  作者: こ~りん
六章:機械と共に生きる国
105/115

105.神と竜

 □ハイエルフの里・ロザリー゠ルナハート


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 どうやらベッドの上に寝させられていたようで、着の身着のままではなく防具類を外されていました。ベッド脇の机の上に整備された状態で置いてあったので、状態を確認して装備します。


「……mya? mya!」

「おはよう、ベレス」


 床で丸まっていたベレスが飛び起き、嬉しそうにビュンビュン走り始めました。

 屈んで腕を差し出すと大喜びで飛びついてきたので、そのまま抱きかかえます。こういった行為は初めてですね。


「――ロザっち~~~っ!」

「おはよう、ユキ」

「愛咲さんから無事だって連絡は来てたけどさあ! せめて電話ぐらいしてよ!」

「……ごめん、ちょっと忙しくて」


 異能の訓練をしたり、志遠さんに言われたことを咀嚼したりで、ユキのことが頭から抜けていました。


「おお友よ! 無事目覚めたようで何よりだ!」

「……これくらいで死ぬような人じゃないって言ったでしょ。ボクのお気に入りなんだからさ」


 続いて来たフェイルさんも大袈裟に喜びました。

 ですが……その後ろで暢気に欠伸をしている幼女は……誰ですか?


 背の丈は私の腰までしかなく、どれだけ背伸びしても鳩尾辺りが限界でしょう。髪色はありふれた茶褐色ですが、黄金の瞳は縦に裂けた瞳孔が特徴的です。

 ですが、それは彼女の特徴の極一部でしかありません。

 側頭部から突き出た宝石の原石みたいな角。腰から伸びる長くて太い岩石の尾。爬虫類を彷彿とさせる両腕。下半身は上半身と比べると屈強で鱗に覆われており、一般的に逆関節と言われる構造をしています。


「まあ、起きたのなら話は早いかな。ボクもずっと寝ていられるほど暇じゃないし……暇かな? どっちだろ。……まあいいや。こっち来なよ」


 のしのしと外に向かう彼女の後に付いていきます。

 初対面ですが、どこかで出会ったような既視感があるんですよね……。逆らいたくないと目で訴えてくるベレスの雰囲気からも、以前遭遇した真なる竜を思い出させます。


「フェイルさん、彼女は……?」

「おや? リリー様は既に知り合っていると言っていたけど、違うのかい?」

「いえ、会ったような気はしますけど……」


 多分、劇的な出会いをして、そのまま分かれた程度の関係な気がします。ですが、そんな出会いをした相手を忘れるとは思えませんし……それに、リリーという名前はどこかで……


「ユキ、彼女、は……どうしたの?」

「いや、その、別に?」


 そわそわとしている様子のユキに訊ねてみると、【看破眼】が全然通らない上に勝てる未来が見えないから、私が起きてくるまで居心地が悪かったみたいです。

 頑張って話そうにも、彼女は独特のペースを保ち続けているから打ち解けにくいようですし。


 気になったので私も【看破眼】を使ってみましたが、確かに通りません。ですが、両腕に装備している【彷徨の竜鱗腕鎧】が仄かに熱を持ったような感覚を覚えると、一瞬だけですが名前が見えました。


 その名は――【彷徨竜 ワンダー・リリー】。


「……あれ? 前にあったよね? 気付いてなかったの?」

「見上げるような巨体と今の姿を紐付けられるほど、私は貴女について詳しくないので……。名前も見えませんし」


 どうやら【看破眼】を使ったことがバレたらしく、顔だけ振り返った彼女は不思議そうにそう言いました。


「アレはボクの鎧だからね。本体の方が強いのは当たり前でしょ?」


 そして【彷徨竜】……リリーさんは我が物顔で安寧の間に通じる階段を登り始めました。

 一瞬大丈夫なのかと不安になりましたが、階段前に常駐している人が当たり前のように脇に逸れたので、私達の彼女の後に続きます。


 安寧の間では、【安寧神】でありハイエルフ達の長老でもあるアウラ゠リオさんがベッドに腰掛けていました。

 彼女はその瞳を開き、眩しそうに細めると、側に来るよう言いました。


「無事、試練は達成されたようだ……。同胞の中から【魔王】を継ぐ者が現れたことを、誇りに思う」


 アウラ゠リオさんは淡々と語りますが、朗らかな表情から歓迎していることが分かります。

 【魔王】は罪源を背負う者……救世主の役割を担っていることは、断片的に覚えている情報から推測できるので、彼女がそれを誇りに思うのは当然のことでしょう。


 そして私はあの座で出会った彼女のことについて、問い質します。この人はきっと、知っていたと思いますから。


「長老、訊きたいことがあります」

「述べよ。同胞の疑問ならば喜んで答えよう」

「ルクスリアについて……あの座に囚われていた人物について教えていただきたいのです」

「構わない。汝にはそれを知る義務がある」


 義務……?


「あれ、長くなる感じ? じゃあちょっとベッド借りるね、アウラ」

「…………ええ」


 了承する前にベッドによじ登ったリリーさんは、我が物顔でシーツを剥ぎ取り寝転がりました。


「……いいのですか?」

「真なる竜は神すらも凌駕しうる存在、自然の象徴。【彷徨竜】はその中でも遍く大地を掌握する者」

「ボクはまだまだだよ。隣の大陸までは手が届かないからね」

「……戯れ言を。大地の上に在る限り、その全ては【彷徨竜】の支配下。この里も例外ではない」


 つまり、この大陸は彼女のモノということでしょうか……スケールが違いすぎますね。

 他人のベッドでぐうたらしてる様子からは考えられませんが、ハイエルフの種族神であるアウラ゠リオさんが逆らわない現状を見るに、リリーさんの方が立場が上なのでしょう。


 なんというか、苦労させられそうな上位者ですね……

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