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息ぬき手ぬき、まぬけな日記  作者: ポン柑ぴ壱
2章 私事
9/17

家庭教師に向いてない人

長い(2500字)ですねえ。でもこういうの短編で出すのしんどいです。


 勉強に関する話をしてみようと思います。

 勉強や学校、教育といったテーマはエッセイで時折みかけますし、注目を集める場合もありますよね。私もそのような作品を読んで学生時代を思い出しながら思いを巡らすことがあります。


 私はまあまあ、平均よりは学校の勉強はできた方でして、大学も出ています。

 大学時代には家庭教師のアルバイトを一時期していたことがあります。その時期が一番勉強について考えた時期だと思います。半年間、とちょっとかな、そのくらいの短い期間で辞めちゃいましたけどね。家庭教師って、体力的に楽だし、自分の裁量でできて楽しいんです。

 でも、根本的な所で、私は向いてない人でした。


 生徒さんに対して「勉強しなさい」って言えないんです。

 若い子に勉強を強制的にやらせる事が苦しいと感じます、罪悪感におそわれます。

 もっと言えば、「勉強しなさい」って言うのが怖いです。


 だってさ。勉強ってさ。


 辛いやん。


 勉強って辛いし、苦しいから。楽しくなんかねえから。


 でね。私は生徒さんに「別に勉強しなくていい」と言ってました。宿題も形だけ出して、別にやらなくていいと言っていました。形だけでも宿題出しとかないと、親に何かつっこまれた時に怠慢だと言われるから。で、出来るんならやって、別にいいけどね、みたいに言ってました。


 大抵の家庭教師を受けるような生徒は、勉強の量が少ない事が点数の低い理由です。余談ですけど、教え方が上手い下手なんか大した問題じゃないです。点数高い人が点数低い人を見た時に、勉強の量が全然少ないとしか言いようがないくらい、勉強の量の差が大きく見えます。

 家庭教師の仕事というのは結局は勉強する時間を増やさせることに尽きます。ですので「勉強しろ。勉強しろ」と言うことが仕事です。

 でも勉強って辛くて苦しいでしょ。

 出来ないなら出来なくていいよって思っちゃう。


 ただ、「テストは本気出せ」とは言ってました。「点を取れ、点を取れ」とは何度も言いました。その後こうつけ加えます、「だって点が下がったら私がクビになるんだ」と。



 私は小、中、高と公立の学校を出ました。親からこういう学校に行きなさいとかは言われなかったです。そして、勉強をしなさいと強く言われることもなかったです。

 中学の時は家の近くの小さな塾に通ってましたが、高校では塾・予備校には行きませんでした。勉強はそれなりしましたよ。しましたけど、他人にプレッシャーをかけられる事がほぼ無かったんです。それと塾の恩恵も全然感じてなかったんです。塾に行かずに受験勉強をしていました。

 勉強のやり方を他人にとやかく言われるたり、集団とペースを合わせたりというのが逆に嫌な方だったんでしょうね。

 塾も家庭教師もいらないと思ってた奴なんです。自分自身に鞭打つことはありますが、基本的にマイペース野郎ですね。



 家庭教師のバイトの話に戻しますね。

 ある時、生徒さんから「勉強なんか意味あんのか」と聞かれました。軽い冗談のように言われはしましたが、私は自分なりにちゃんと答えようとしました。


「日本の失業率が5%くらいだから、クラスに2人くらいは職につけない。勉強しないとそうなる、そうなると生きるのに苦労するよ」


 と、こういう話をしました。ツッコミ所はいろいろあるでしょうが、その正誤は置いておいて。そのように言った私の、根っこにある考えはこうです。


 生きてりゃいいんじゃないのって。


 家庭教師が人生観を教えるべきじゃないと思ってるんですよ。あなたはどのように生きるべきか、何に価値があるのか、それは親が教えることでしょって。

 とは言ってもさすがに生きてた方が良いとは思うんです。本当は勉強しなくても生きれると思うけどね。勉強した方が生きやすいだろうという趣旨です。


 雇い主の親が聞いたら怒るかもしれないですよね。もっと目標を高く持ってほしいでしょう、人並みか、平均より上とか。それに、もっと勉強自体の魅力を説いてほしいと思うでしょうね。勉強はあなたの人生を豊かにするよ、とか言ってほしいでしょうね。

 でも私にそれは出来なかった。

 だって、勉強が彼にとってどんな価値があるか分かんないから。当時は学生だってのもあるし、人生なんか語れるわけないじゃないですか。自分自身にとって勉強がどんな価値があるかも疑念だらけでした。

 あとさ。

 勉強って辛いから。


 勉強は素晴らしい、勉強は沢山した方が良い、とは言えなかったです。


 なので、その時はっきりと理解しました。自分がそういう考えの持ち主なんだって。勉強すべきだよと言えない人だったんです。

 教師の考え方じゃないですよね。向いてるわけないんです。


 その少し後、点数が伸びないので、クビになりました。しかたないことです。だいたい人に教わった経験が少なかったしね。向いてない人でした。

 2件受け持ってて、ちょうど近い時期に終了したので、そこで家庭教師は辞めました。

 一応言っておきますけど、生徒とも親とも関係は良好でした。1年後に親から電話かかってきてまた家庭教師やってくれないかって言われたくらいです。断りましたけどね。



 ところで。じゃあ、お前はなんでそれまで勉強してきたんだって話になります。


 うん、そう。なんとなく、やるべきものだって信じていたんだと思います。「くだらねえ、つまんねえ」と声に出してワメきながら勉強してましたね(笑)。

 でもたぶん、きっと勉強は好きなんです。なんだかんだね。何かに快感を見い出していたんでしょう。そんな二重の感情を抱えていたので、次のような考えを持つようになりました。


 私は『テスト勉強』と『勉強』は別にして考えています。

 中学・高校での学習は全て『テスト勉強』です。テストで点を取るための学習です。点を取ったら、点を取ったねと誉められる、そのための学習です。

『テスト勉強』は辛いです。努力です。忍耐です。


 ひるがえって、

『勉強』は楽しいです。何が楽しいかは人それぞれだから『勉強』の意味はあいまいです。その人にとって自然と欲するような知識や理解が『勉強』なのだと思います。


 私にとって『テスト勉強』は『勉強』するための手段として確実に役に立ちました。結果的にですがそう言えます。

 だから、『テスト勉強』には価値があります。


 ただ、

 何が人生を豊かにするかは、私にはまだ何も言えません。今だに何も。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 懐かしい気持ちになりました。勉強はおろか、宿題すらほとんど出したことがなかった人間なのですが大卒を名乗ることを許されております(;´・ω・)なんとダメな人間か⋯⋯ 私が今まで会ってきた人…
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