第95話 新たなる仲間《どれい》サキュバスクイーン。
赤いツボミから解放されたサキュバスクイーンに、奴隷になる汗を飲まされた時は、どうなるかと思ったが。
願望スキルが魅了の力を跳ね返してくれて助かった。
「はぁ、魅了が失敗して、術者である私に、魔法が跳ね返ったみたいね」
「ふ、むやみやたらと、強力な技を使うからだ」
「ふふ、そうね。これからお願いしますね。旦那様」
「だんなざま!!」
「はい、旦那様」
なんと甘美な響きだ。
なんだろう。勝ったはずなんだが、色仕掛けで負けそうなんだが!
「わたし、普段から空腹でね。魔力あふれる旦那様と一緒なのは、結果的に、良かったんじゃないかしら」
ふむ、モンスターも中々に苦労してるんだな。
この世界の危機は、一先ず消え去ったわけだ。世界を滅ぼす大罪人とか勘弁だからな。
「とりあえずサキュバスだと呼びにくいから、これからはクイーンと呼ぶからな」
「わかりました。旦那様」
たまらんな、この従属感、男の本能に目覚めてしまいそうだ。
俺の求めていた従順メイドは、これなんだよ! 拠点に置いてきた泥酔メイドではないのだよ!!
だが今は感動してる場合じゃない。
問題は、気を失った貴族連中が目覚めた時、さっき迄いなかった、このクイーンの説明をどうするかだな。
ん?「何してるんだクイーン?」
「突然こんなお姉さんがいたら、みんな驚くでしょ」
「まぁな」格好にも驚くだろうがな。
「だから記憶を操作して、私は、洞窟に迷い込んでいた所を、みんなに助けてもらった事にしようと思ってるのよ」
「そんな事ができるのか!」
「ふふ、お姉さんにかかれば、ちょろいもんよ」
このまま目を覚ましても困るし、信用はできないが任せるか。
「じゃあ。まかせるよ。クイーン」
「わかったわ、旦那様。魅惑の香りに導かれ、夢の世界に記憶の道を作りだせ」
これは桜の花びら? まるで巫女の舞を見てるみたいだ。
綺麗だが……クイーンの格好は、夜の店に居そうな巫女服なんだよなぁ……だいなしだ。
お、動きが止まったぞ。
「『魅惑の蜃気楼」
魅惑のしんきろう、メモリーチャームか……大丈夫かな。
「これで、しばらくすれば目を覚ますわよ。旦那様」
「わかったよ。クイーン」
「あら? 誰かくるわね」
「なに!!」
「足音に混じって、かぎ爪みたいな動物の足音も聞こえるわ」
「この洞窟の入り口はリディア隊長たちが守ってるはずだが、かぎ爪の音って……まさかモンスターに殺されたのか」
「くるわよ。旦那様」
「なに! もうか!」
バサササ!!
「グェェェェ、ゲハァグエハァ、グェグェ……」
「なんだ、何かと思ったら、チキンイエローじゃないか。おどかしやがって」
「どうやら、動物のカンで、私が目覚める前に、私の力が届かない場所まで逃げてたみたいね」
「なるほど、さすがに英雄チキンと呼ばれてるだけあるな」
「まさか、お姉さんが、こんな変な鳥にまで、出し抜かれるなんて、歳はとりたくないわねぇ」
「いやいや、十分綺麗だぞクイーン」
「ありがとう。旦那様」
実際モンスターだから歳は関係ないだろうからな。
あとの問題は、チキンイエローが疲れ果てて、人間の足音を連れて帰って来たなら……。
ザッザッザッザッ!!
「チキンイエローそこか!!」
「グゲェ」
「ぜガバァぜガバァ、まって……リディアたいちょぉぉ」
来たか。
ザザザザァァァ!!
「ごぶじですか!! エルザお嬢様!!」
「ゲガハァ、ぁぁ……みなさん……ねてますね。わたしも……げんかい。ガハ」バタン……。
リディア隊長の部下達が死んだな。リディア隊長は汗を光らせてるが、元気そうだ。さすが姫騎士様だ。
「まったく、鍛え方が足らんな。それより、このじょうきょうは……ん、ユーリは無事か。それと見覚えのない女か」
リディア隊長が、こっちに来たか。当たり前だよな。俺とクイーンしか起きてないんだから。
「チキンイエローが慌てているので、急いで来たのだが……どうなっているのだユーリ。みな寝ているようだが」
「それがですね。思った以上にモンスターが大量だったので、みんな戦い疲れてしまって」
「まさか……洞窟の中に、お嬢様が疲れ果てる程のモンスターが居たとは……このリディア、なんとお嬢様にわびれば……」
やべ! なんかすげぇ落ち込んだぞ!
「いやいや、誰も怪我してないんだから、リディアさんが気にする程じゃないですよ!!」
「ふっ、すまんなユーリ。気を遣わせたようだ」
いやぁ、俺の嘘でリディアさんが……。
『このリディア一生の不覚! お嬢様に合わせる顔がありません! この場は死んでお詫びいたします』とか言って腹切りとかされても困るし。
「それにしても、お嬢様すら、疲れ果て倒れてしまう状況で。汗一つかかぬとは、さすがは英雄と呼ばれているだけあるなユーリ」
「はは、お嬢様たちが、はりきっていたので、俺は、後ろから援護してただけでしたから」
「ふっ、お嬢様らしいな」
本当に何もしてないんだが。それどころか、モンスターの封印解除したんですがね。
「グエ! グエゲェ! グガァァァァ!!」ザザザザ!!!
「ん、どうしたのだチキンイエロー?」
「ん?」げ! あのチキンやろう! クイーンを追いかけ回してんじゃねぇか!
まさか動物の本能で敵だとわかってるのか!
「はいはい、お姉さんが遊んであげますからね」
「ふむ、あの者と遊んでいただけか、紛らわしい」
「グエ!」ザザザザァァァ……。
「あら? もうおわりかしら?」
「クエェェ……」
チキンイエローは、リディアに理解してもらえなくて、諦めたみたいだな。
「それで、ユーリ。その……見るからに、目の毒な者は何者だ」
「あ、紹介がまだでしたね。この方は、洞窟に迷い込んでいた方で、クイーンさんです」
「初めまして、クイーンと言います」
「私はリディアだ。エルザお嬢様の警護隊長をしている」
「警護隊長ですか。そういった挨拶をするのですね。でしたら私も、ユーリさんに助けられたので、ユーリさんの奴隷になりました。クイーンと言います」
「どれい……だと」
ちょ! 何言ってんのこの子!
あ、リディアさんの見下すような視線で、体に風穴が空いたみたいだ。
「はは、いや、あの、なんか、なりゆきで……」
「まぁ……本人が納得しているならよいか」
はぁ、奴隷がいる世界だから問題はないのか。助かった。
次は再来週の月曜日予定です。
遅くてすみません。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
更新遅いですが、またお願いします。




