75話 交渉成立 空飛ぶパンツからの解放。
「すげぇ、一撃で奴隷国家の団長、倒しちまったぞ」
「ふん、変態顔で油断してるからですわ。ザマァですわ」
黒く光る長い髪をなびかせ、空を見上げパンツを見つめる女性が、顔をひくつかせ話した。
「アルディス団長が、やられるとは。この……空飛ぶパンツは、どなたの魔法なのですか」
ザッザッ!
む? 騎士団の美少女たちが、俺を囲んだぞ……嫌な予感しかしないんだが。
「はん! 聞いて驚け! つんつんクレイン副団長! それにクズ団の、ババァどもが! この強力な魔法は英雄ユーリ様の力だ! ちょっと思春期中で歯止め効いてねえがな! うわ!」
スパパーン!
「その者が、えいゆう……子供に見えますが」
「子供に見えて当然ですわ。このお方は、数日前に冒険者になられたばかりの、新米冒険者ユーリ・ディザア様ですから」
「新米冒険者が英雄ですか。不意打ち、とは言え、一撃でアルディス団長を倒したこの状況では信じるしかありませんね
。ですが……これが思春期ですか……ただの変態でしょう」
「変態でも今は必要なら仕方ないですわ」
申し訳ない。団員さん達。
「確かに、強さに変態は関係ありませんね。英雄ユーリ・ディザア。その名、覚えておきましょう」
やめてぇ! この国だけでも嫌なのに、よその国ににまで、俺の名前を広めないで!
ん? ライザ団長
「クレイン副団長。団長がやられたこの状況で、国に帰れると思っているのですか」
「どうです、ライザ団長。こちらは人は殺していませんし、お互いパンツに遊ばれたなど、ぶざまな噂になるのは、いやでしょう」
「そんな話に、こちらが応じると思うのか」
「もちろん、ただとは言いませんよ。こちらは、この者を差し出しましょう。我らの依頼人。ローズ公爵を」
お! 屋敷から貴族みたいなオッサンが出てきた。
「またぬか! クレイン殿! 話が違うではないか!」
「状況が変わったのでね。ローズ公爵。おたっしゃで」
「くっ」
「ローズ公爵。貴様!」
「ひぃ!」
ライザ団長、怒ってるな。ローズ公爵はこの国の人みたいだな。つまり国を売った裏切り者だな。
「どうしますライザ団長。ちなみに断るなら、ローズ公爵を殺し、我々はチリジリに逃げますが」
「仕方ありませんね。国の国境まで、送りましょう」
「話が早くて助かります、交渉成立ですね。バカで使えん無能なゴミを核とし我の手足となり働きなさい! クレイゴーレム!」
ズガガガガガ……
「おぉ、アルディス団長が地面に飲み込まれたら、アルディス団長の顔した土の巨人が現れた」
「ふふ、こんな魔法で驚くとは、本当に新人のようですね。ユーリくん」
「はは、驚きすぎでしたか」
「いえ、初々《ういうい》しい姿も悪くありませんよ」
おお、あんな変態アルディス団長の部下にしておくには惜しい、不敵なお姉様の微笑み! クレイン副団長様!
「それで……こちらは準備できましたが。ライザ団長たちは、まいれるのですか? スカートズタズタに切られていますが?」
スパパーン! あ! 忘れてた。
「くっ、少し待たれよ」
ザッザッ
「あ! ライザ団長。ローズ公爵が逃げます! まて! きゃ」スパパーン!
「なにやら知らぬが身動きできないなら、逃げるだけだ! 騎士団の諸君さらばだ!」
「くっ! ユーリ殿! はやくこれを うわ!」スパパーン!
いや、そうしたいんだが。消えろと念じても消えないんだよな。
たぶんだが。俺がスカートの中を、もっと見たいと、心の奥底で願ってるからだな。
うぅむ、この願望ばかりは止められない……まいった。
逃すと俺が悪者になるし、捕まえれるかな。
魔法変化は英雄白銀と思われても困るから今は使えないし。
弱そうだし、地面にある石で倒せるかな? あのヤロウを捕まえないと俺が悪者になるんだ! 追尾していく姿をイメージして、全力でただ投げる!「くらえ!」びゅん!
ガン!「グガァァァァ!!」ドサ。
よし! ど真ん中、誘導が発動したみたいだな。
「すげぇ、あの距離普通に投げて、後頭部直撃かよ」
「あれが英雄ユーリの力ですか。面白いものが見れました」
「いえいえ、普通に投げただけですよ。クレインさん」
「そうですね。ユーリくん」
クソ、さすがに後頭部ど真ん中はやりすぎたか。
まだ問題の、おパンツカッターがあるんだよなぁ。けど、これ以上魔法使うと、ライザ団長にも怪しまれそうだし。
なにかないかなにか。ん? フェンリが寝てる。
あ! そうだ。フェンリは、魔法じゃないんだから怪しまれないよな。
「フェンリ、飛んでるパンツと遊んで壊してくれるか?」
シュバ! タン!
「遊んでいいんですね! ユーリさん!」ブンブン!
「まずは、これを壊して、これ以上増えないようにしますか。ワンダフルキーク!」
ズバン! ドゴォォン!
「おぉ! びくともしなかった、パンツ製造機のタヌキの置物を蹴りだけで壊したぞ!」
「ついでに屋敷も爆風で粉砕しましたわよ。犬族とはいえ、なんて破壊力なんでしょうか」
手加減を言ってなかったが、大丈夫だよな。
「じゃんじゃんいきますよ! はいやぁ!」ダッ!
高速移動からの連続キックか。
ズバァン! パァン!
おし! パンツが普通に壊れたぞ!
まぁ鼻がいいからか、ウルフの匂いを嫌がってか、鼻を手で押さえて蹴ってるな……器用だな。
しかも、パンツ食べてるんだが何してんだ! フェンリのやつ!
「はむはむ、はむはむ……鳥の味しないじゃないですか! ユーリさん!」
するわけないだろ……
フェンリは、空飛ぶパンツを全て破壊した。
「助かりましたフェンリさん。我々の攻撃が当たらない……パンツに、いとも容易く攻撃し、壊してしまうとは、驚きました」
「あれくらい余裕ですよ。なんならもっと速く動けますよ! ライザさん」
「あれよりもですか! それは興味がありますが、今は時間がありませんので次の機会にでも」
「はい!」
「ユーリ殿も、助かりました」
「いや、俺の魔法が暴走したのが原因ですから、すみませんでした。ライザ団長」
「その……先程は睨みはしましたが、気にしないでください」
「へ?」
「私が頼んだことですから、まだ力が制御できていないと、わかったことで、さらに強くなって下さい。ユーリ殿」
「はい! ライザ団長!」
と言っても、暴走した原因は、俺の願望だからなぁ。コントロールできるかなぁ。
「それに、また手柄をあげたのですから、胸を張っていいのですよ。ユーリ殿」
「はは、そうですね」
そうなんだよ、こっちも問題なんだよ。手柄あげてるから、また知名度が上がってしまった。しかも他国でもアルディス団長を倒したと有名に……はぁ。
「貴族誘拐未遂犯の発見と確保、お手柄ですよ。ユーリ殿」
はぁ、ただの案内役のつもりだったのに……む!
「貴族誘拐未遂犯!!」
「えぇ、まだ調査の必要がありますが。間違いないでしょう」
「そうだったんですね」
思った以上に大事だったようだ。あの町の貴族なら、冒険者ギルドで友達になったルナ達だろうな。ルナ達が無事でよかった。
ん? 気絶したローズ公爵に、団員が何かしてる。
「ローズ公爵は、気絶してるが。念のため、騎士団の魔法で拘束しとくか。聖なる鎖セイクリッドチェーン」
「おぉ、白い鎖でグルグルまきに」
ギチギチ「グガァ! ガハ……」
「あ? しめすぎたか? そのまま死んどけゴミが!」
金髪ヤンキー風の見た目通り、激しい人だな。
ローズ公爵、泡吹いて白目むいてるけど、息はしてるから死んではないだろ。
「移動の前に、みな切れたスカートなどを、予備の装備に着替えてください」
な! 騎士団が着替え出したぞ!
スルスル……「ゴクリ」
草原の岩に片足を乗せ、太陽の光に黒光する、ビリビリに破れた黒のパンストを、ビリビリに破りながら豪快に脱いでいく姿は、先程のヤンキー風の団員さん。
まぁ、あれだけ破れてたら脱ぐより早いか。
「よいしょ。はぁ」
岩に腰掛け、予備のパンストに爪先を丁寧に入れていく、白い爪先が徐々に黒く染まり、すらりと伸びた脚全体を包み込んだ。
緑輝く草原に、なんと神々《こうごう》しい姿なんだ!
特に注意もなく、騎士団の着替えを見終わった。
「待たせましたね。クレイン副団長」
「いえ、面白いものが見れましたから、退屈はしませんでしたよ。ライザ団長」
緊張の中、移動を開始したが。何もないまま、夜中には青い障壁がある建物に到着した。
ローズ公爵は、国境の兵士達に引き渡され、奴隷国家ゾルディックの騎士団と別れの話をしていた。
「ふっ、少年よ。中々面白い才能を持っていたな。なんなら、うちに来るか」
「は?」【ふざけんな変態ジジイ!】
ライザ騎士団からアルディス団長に怒号が飛び散らされていた。
「なに夜中まで、伸びてた人が偉そうに、よその国の英雄引き抜きしてるんですか」
「それはそれだ、クレイン副団長」
「はぁ、せっかくの交渉を無駄にしないでくれます。団長!」
「む、仕方ないな。だがユーリ少年。気が向いたら我が国ゾルディックに来るがいい」
「えと、まぁそのうち」いや、奴隷国家とか怖くて行きたくないんだが。
「奴隷の1人や2人、お得にしてやるぞ」
「はい! アルディス団長。いつの日か必ず!」
「良い返事だ! ではな! ユーリ少年! ライザ騎士団!」
「寝てた人がまとめないでくれますか。アルディス団長。さようならユーリくん。騎士団のみなさん」
ザッザッ。ヒュン!
おぉ、クレイン副団長とアルディス騎士団が光の中に消えた。
それにしても、奴隷の割引か、いくらになるんだろうか。
むふ、は! なんだこの胴体が引き裂かれる背後からの視線は!
【ユーリさま!】
「はい? あ」
「何がいつの日か必ずだ! 奴隷国家の奴らの言うこと信じたら、売り飛ばされるだけだぞ!」
「そうですよ! 危ない事はやめた方がいいですよ!」
「はは、やだな、話を合わせただけですよ。みなさん」
「それなら、いいんだが」
「心配しましたよ」
はぁ、あのアルディスのオッサン、俺に似てたな、気がついたら話に乗せられてた。
「それにしても、ライザ団長。奴隷国家の騎士団なのに、大人しく帰りましたね」
「居場所がバレては、意味がないと思ったのでしょう」
「けど、普通に帰しましたが。また来るんじゃないですか?」
「その心配はいりません。本来国の境には、許可のない者が入れぬように、魔法障壁が展開されているのです」
イフリータが使ってる、人避けみたいのかな?
「国全体に障壁があるんですか?」
「いえ、ありません。ですから魔法障壁がない場所からの侵入場所には、罠が無数に仕掛けられています」
「なるほど」
「国の者でも、障壁を通らずには、国の外に出るのも入るのも不可能です。今回は、ローズ公爵が招き入れたので、我が国に侵入できたのです」
「そうだったんですね。それで、これから帰るんですか? 外は暗いですが?」
「いえ、夜中はモンスターが活発ですから、この国境砦で泊まり、朝になったら町に帰ります」
「わかりました」
国境の砦だから、中には大したものはなく。
食事をしベッドに入り、町に残した奴らが問題を起こしてないか、心配しながら眠りについた。
次は土曜日予定です。
3章メインは、これで終わります。
次、町に残した天使エクリア達の話で3章を終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
4章も書きますので、よかったらまた読みにきてください。




