第67話 ライザ団長の素顔を知る者
俺が魔法から作り出した、光の化身ライザこと、ランファと話をしていると。
騎士団の人に呼ばれたライザ団長が帰ってきた。
「待たせてしまいましたね。ユーリくん」
「大丈夫ですよ。急いでいたみたいですが、何かあったんですか?」
「それがですね。魔王配下の襲撃の際、酒場で騎士団の団員が眠らされた痕跡があったのです」
「こんせきですか? モンスターの仕業ですか?」
「いえ、まだ調査中ですが。おそらく、人の手によるものでしょう」
「人ですか?」
ライザ団長の顔を見る限り、ろくな手がかりが見つかってないんだろうな。
お! あれは! 探し物の定番! 犬耳の獣人!
「ライザ団長! 犬族の方たちに頼んで、犯人を探してはもらえないんですか?」
む? ライザ団長が険しい顔になった? まずかったか?
「ユーリくんは、田舎からきたんでしたね」
「はい……」
「それでは知らないのも、無理はありません」
「ダメなんですか?」
「昔はそうでもなかったのですが。一部の者達が、獣人を奴隷にしてしまい。一部の地域では、協力をお願いできる状態ではないのですよ」
「そうだったんですね」
「むろん、人間と仲のいい獣人もいます。ちょうどタヌヌとユーリくんのように」
「タヌ! タヌヌは、ご主人様。大好きですよ!」
「おれもだぞ! タヌヌ!」
やはり! 田舎者設定は便利だな! 当たり前のことを知らなくても、田舎者なんで! で全て解決だ!
それにしても、獣人を奴隷かぁ。せっかく獣人がいるが、仲良くはなれそうにないな。
ぎゅ! む?
ライザ団長に! 手首を掴まれた! な! なんだ!
「で、英雄ユーリ殿には、聞かねばならんことがあるのですが!」
なんだ、この目から炎が立ち上りそうな、真剣な顔は!
「えぇと、なんですか? ライザ団長」
「魔王配下マジェスティ襲撃の夜、宿屋のオーナーが。避難所に、客のユーリ達がいないと騒いでいましてね」
「みたいですね。オーナーさんから聞きました」
その話と、この詰め寄られた状態に、何の関係が?
「シルヴィ、ジルが部屋を確認すると、普通にユーリ達は、部屋で寝ていたそうですが。魔王配下、騒動の時も、グッスリ寝ていたのですか?」
げ! 白銀で戦ってたぞ! まさかバレたか。いや、あせるな俺! 冷静になり嘘で切り抜ける!
「はい、初めて魔法を使ったりしたので、疲れ果て、避難の指示も聞こえないほどに、グッスリでした!」
「うそですか……」
「へ! えと」なんでバレた! やばい、どうする!
「では、わたしが……ですね。決め台詞を言って、聖剣エクスカリバーを出したのを聞いたのでしょうか?」
あぁ、あの偽物エクスカリバーか。確か騎士団の宝武クリスタルブレードで、剣舞してたやつだな。
あれは、美しかったなぁ。
けど、あれは……見なかったことにした方がいいよな。普段のライザ団長とは明らかに別人だったし。
「エクスカリバーですか? そんなのまったくしりませんよ! な!」
ダダダダダ! ダン!
ななんだ! ライザ団長に壁ドンされたんだが!
周りの人達は、ライザ団長が、男の子に迫ってるから、きゃあきゃあ騒いでいるが。
まぁ、確かに女性に迫られるのは悪くない。胸の谷間が目の前だし、バラの香水の香りがほのかに、鼻をくすぐり魅了されてしまいそうだが! これはまずい。
「やはり! 見ていたのですね!」
「その……」
なぜバレるんだ! ん? は! ライザ団長が、俺の手首つかんだのは! 脈で嘘を見破るためか!
やばい! 長々とやってると、バケツをかぶってた白銀が、俺だともバレるかもしれない!!
しかたない。ここは、素直に話すか。
「実は、外がうるさかったので、部屋の窓から見てました」
「やはり……そうでしたか。そのですね。私は、聖剣に強い憧れがあるのですが」
「あこがれですか?」
まぁ、勇者カイザーが原因で、白くなった聖剣、ホネカリバーを見て泣いてたしな。
「私は昔、森で迷子になり、ゴブリンたちに囲まれて、動けなくなってしまったことが、あるのです」
「ライザ団長がですか!」
「子供の時の話ですから」
「けど、昔ならモンスターから攻撃はされないんじゃ」
「確かに、勇者様のスキルがありましたから、攻撃はされませんでした。ですが、夜中の真っ暗な森の中、ゴブリンに囲まれれば、大人でも腰が抜けてしまいますよ」
「確かにそうですね」
まぁ、ゴブリンの顔はキモかったし、あれを真っ暗の中見るのは嫌だな。
「そんな時、真っ暗な森を、太陽のように明るく暖かい光が、私を包み込み、ゴブリンを消し去ったのです」
「それが聖剣と勇者カイザーの父ですか」
「えぇ、それから私は、聖剣に憧れました。ですが勇者一族ではない私には、聖剣を持つ権利がなかったのです。騎士団に似た剣があるのを知り、私は団長を目指したのです。あきれる理由でしょう」
「そんなことないですよ。どんな理由であれ、こうして町が平和なのは、ライザ団長が団長になったからですよ」
「そう言ってもらえると、助かります。ユーリくん」
ライザ団長も、普通の女性って感じだな。
「それで、エクスカリバーと言い……ポーズをとっていたことは、団員達には秘密にしてもらえますか」
凛々《りり》しいライザ団長が、口をつぐんで、恥ずかしそうに話している! かわいい。
「はい! 誰にも話しません! だから安心してくださいライザ団長!」
だが! 俺の脳裏には焼き付けておこう! この胸の谷間と! 夜中の剣舞の姿は!
「たすかります。これで酒場で団員を眠らせた者を、探すことに専念できそうです」
「頑張って下さいね。ライザ団長」
「ありがとうユーリ殿。あなたのおかげで、捜索に専念できそうです」
「そこまで言われるほどじゃ。てか、どのって」
「いえ、これ以上、団長の私が。英雄様に、くんと呼ぶのは周りの目がありますし。それに、これでも足りないほどです」
「へ?」
「ユーリ殿が魔力結晶を作っていなければ、我ら騎士団は、今も魔力結晶の代わりに、町の魔動力を作っていたでしょうから。ですから大げさではないのですよ。ユーリ殿」
「そうだったんですね」
俺の英雄としての活躍が勝手に、ふくらんで巨大化してやがる。
助けた覚えがなくても、全て俺の手柄になりそうな勢いだな。
ライザ団長から殿と呼ばれるとは、何もなければいいんだが。
「ではな、ユーリ殿。タヌヌ」
「またですよぉ! マス! ユーリさん。タヌヌ」
呼ぶなよ。マスターと。
「タヌ! またなのです!」
「さようなら。ライザ団長。ランファさん」
さて、これから、どうするかな。
グゥ……「タヌ」
これは……タヌヌのお腹の音か。
「そうだな。昼も近いし、酒場で昼飯にするか」
「タヌ! ご主人様! いきましょう!」
そういえば、ライザ団長の話だと、酒場で団員が眠らされていたらしいが、騎士団が探した後じゃ、手がかりは残ってないよな。
まぁ気がついたら、報告はするか。国民の義務として!
評価、ブックマークありがとうございます。
次は水曜日、夜予定になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




