第60話 拾い物には、ご注意を。
スロットボックスの中を見たタヌヌの表情は固まり、困惑していた。
「タヌ? これは食べ物でしょうか? ご主人様」
全員で、スロットボックスの中を覗き込んだ。
「むぅ。箱一杯にウネウネ動く物体ですかぁ? お宝には見えませんねぇ。イフリータさん」
「そうねエクリア。食べ物にも見えないし、何かの素材かしら?」
「タヌ? 素材ですか? ご主人様の役に立つ素材だといいですね!」
「そうだな。タヌヌ。素材なら、さわったら説明が出るかもしれないな」
俺は説明を見るため、赤い物体にふれた。
手でふれた物体は、人肌のように妙に生温かく、ヌメヌメとしたさわり心地が気持ち悪く、手を押し返すように弾力があり動いていた。
きもちわりぃ……
アイテムの説明が表示された。
「む? ガルティーゾのしんぞう……」
さわっているものが、心臓とわかるとドクンドクンと心臓の鼓動が聞こえはじめた。
俺は、苦笑いしながらみんなを見た。
「はは! おぃ! みんな! なに離れてるんだよ!」
「いえ、私達女の子ですから、グロいのはちょっと遠慮したいですね。イフリータさん」
「そうねエクリア。あんなでかい心臓なんて、見てるだけで気持ちが悪くなるもの」
「ご主人様!」
「はいはい。タヌヌちゃんも、近づいたら目の毒ですからね」
タヌヌは、エクリア、イフリータに連れられて、部屋のすみに避難していた。
「タヌ! ですが。エクリアさん。ご主人様が」
「大丈夫ですよ、タヌヌちゃん。ユーリは男の子ですからねぇ」
「タヌ! そうなんですね! さすがです! ご主人様!」
男の子とか関係ねぇだろ! クソ! タヌヌの尊敬するキラキラ視線で、逃げづらい。
エクリアの奴まさか、俺が逃げづらいように狙って、タヌヌを利用したんじゃないだろうな……くっどうすれば。
タヌヌから心臓に視線を移すと、エクスが説明を読んでいた。
「なにしてるんだエクス?」
「いやなに、マスターの読み上げた名前に、聞き覚えがあったから説明を読んでいたんだ」
「何かわかったのか?」
「あぁ、これは、魔王配下ガルティーゾ・レゾナスの心臓みたいだな」
【魔王配下!】
全員がどよめくと、心臓は怒ったフグのように、ぶくぶくとふくれあがった。
「新しいマスターは凄いじゃないか。魔王配下をまたしても、倒してしまったんだから」
「いや! 嬉しいが! そんな場合じゃないぞ! エクス!」
「ふっ、けんそんする必要はないじゃないかマスター。君は一夜にして3人の魔王配下を倒したんだからね!」
なに! キメ顔で目光らせてんだエクス! 少し抜けてるどころじゃないだろ!
てめぇの後ろで今にも、心臓は破裂寸前なんだよ!
なんだこのクソてんかいは! 金貨入れる時の神頼みが悪かったのか! いや、あの神が人間界のことに手を出すとは思えんな。
なら願望スキルか……確かに魔王配下の心臓とかレアだもんな……こんなレアアイテムいらんわ!
「ちょ! ユーリ! ユーリが出したんだから、なんとかしてくださいよ!」
「そうよご主人様! マジックバッグにしまいなさいよ! そしたら部屋は汚れないわ!」
壁際でエクリア、イフリータ、タヌヌは、抱き合い部屋の中央の巨大な心臓を見ていた。
「いや、そんなこと言われてもな……マジックバッグの中が汚れそうだしな」
ボンッ! ビチャ! ビチャチャチャチャ……
【うぎゃなぁぁぁぁぁ!!!】
「くちゃいタヌ……」
俺は、なにもできぬまま、心臓は大爆破をおこし、部屋中に悪臭、肉片、血を撒き散らし。部屋と体を真っ赤に染めた。
「はぎゃぁぁぁ! 生温かいシルガァァァ! めにめに、はいりましたよぉ~!」
ゴロゴロ! エクリアが地面に転げてるな。
イフリータは、タヌヌを赤い炎の障壁出して、守ったのか、さすがだイフリータ!
「タヌ! イフリータさん。ありがとうございます」
「別にいいわよ。近かったから、ついでに防いだだけよ」
「では! なぜ! 近かった私も助けないのですか! イフリータさん!」
お、エクリアが復活した。
「ん? なんとなくかしら?」
「なんですか! それは!」
「まぁまぁ、いいじゃない。エクリア。それよりも少しは汚れたし、お風呂にしましょうよ」
「わたしは『すこし』ではありませんが。お風呂には賛成です」
「じゃあ決まりね。じゃあご主人様。掃除頼んだわよ。いくわよエクス」
「む? ぼくもか? だがマスターが」
エクスは、心臓大爆発から体を大の字に広げ、俺をかばい、立っていた。
「気にするなエクス。俺をかばって、お前が1番汚れてるんだから、行ってこい」
「マスターの命令では仕方ないな。いくとしよう」
ガチャ、ギィィ、バタン。
「はぁ」
魔王配下を倒したのはいいが、目の前で倒したわけじゃないからか、アイテムが見当たらない……
仕方ないよな。心臓が勝手に来て勝手に爆発しただけだからな。
「まぁスキルポイントは貰えたみたいだから、よしとするか。さてと片付けをするか」




