第42話 マジシャンマジック
「グガァァァァ! ゲホゲホ! おっと、これは大変失礼いたしました。綺麗なお顔に、血が飛んでしまいましたね」
マジシャンは、腹を大剣で貫かれたまま、平気な顔でハンカチを取り出し。
ライザ団長の顔に飛んだ血を拭き取った。
ライザ団長は、沈黙したまま、マジシャンのハンカチを目で追うことしかできなかった。
「ふぅ、サービスはこんな所でしょうか?」
マジシャンは、口から流れ出る血をハンカチで拭き、ニコと笑った。
窓から身を乗り出しユーリは、驚いた!
げ! 腹から血、滝みたいに流してたのに、ピンピンしてやがる。どうなってんだ!
魔王配下を倒したと思った騎士団も動揺していた。
「うそ! あれで効いてないのか!」
「いや、けどお腹に風穴開いて、ライザ団長のクリスタルブレードで結晶化もしてるし。効いてないはず……」
「どうなってるの……」
クリス副団長は、黙ってライザ団長を見つめていた。
ライザ団長は、両手で持った大剣をプルプルと震わせ。
大剣で貫いたマジシャンの腹を見て話した。
「貴様……なぜ腹を貫かれて、平気なのですか」
「この技は、昔見たことがありましたから、騎士団がいるなら使い手がいるのではと、警戒はしていましたので。念のため、先手を打たせていただきました」
ライザ団長は、歯を食いしばり小さくつぶやいた。
「先手……ですか(やはり実戦の差が出ましたか。我らに先人達の知識は殆ど残っていません。それに比べ魔族は、今までの知識が全てあるのですから……ですが負けるわけには……)」
笑うとマジシャンは、腹の傷口に手をかざし唱えた。
「真実を見せなさい。トリックシート」
「これは!」
腹が剥がれてく!!!
マジシャンが、腹に張られた、トリックシートを剥がすと、腹に付いたクリスタルブレードの結晶はパラパラと落ち。
トリックシートが貼られていた、お腹は無傷で。
ライザ団長の大剣は、腹に設置された黒い箱に突き刺さっていた。
マジシャンは、指を立て魔法の説明をした。
「今剥がしたトリックシートは、簡単に言えば、幻覚を見せる魔法になります」
ライザ団長は、マジシャンを見て手を震わせていた。
(こんな魔法があるのですか……)
トリックシート、薄いタブレットを、お腹に貼り付けて映像をながしたみたいな感じか?
マジシャンは、大剣が貫いた、お腹の箱を触り話した。
「この箱はですね。マジシャンボックスといいまして、中に入った物の形を自在に変化してくれるのです」
マジシャンが腹に設置した箱を開けた。
パカ!
ライザ団長は、箱の中を見て、目を見開き、冷や汗を流していた。
箱の中では、箱の右にマジシャンの腹が紙のように薄くなり張り付き。
左には同じように、ライザ団長の大剣が薄くなり張り付いていた。
(魔族を勇者様達だけに任せていたせいで。騎士団には、いえ世界には、魔族達の魔法は、記録が残されていませんでした。もっと勇者様達と協力していれば、この様な事には……貴族達さえ、反対していなければ……)
ユーリは、窓から乗り出し、マジシャンの箱の中を見ようとしていた。
うーむ? 箱が空いたが、上からだと何も見えないな。
まぁ普通のマジシャンの手品なら。
腹を無理やり曲げて避けてたり、剣が刺さらないタネがあったりするんだろうが。
魔法だし違うよな……気になる。
ライザ団長に、隙ができるとマジシャンが動いた。
「では、次はこちらの番ですか」
「ぐっ、しま!」
「団長!」
団員達が、走り出そうとすると。
クリス副団長が手を広げ止めた。
「クリス副団長!」
「行っても勝てる相手ではありません」
団員達は、その場で立ち止まり、浮かない顔で、ライザ団長を見た。
「あれ? ライザ団長の首が光ってる」
「あれってライザ団長の聖騎士スキルかな?」
「そうだよ! 悪しき者の攻撃を打ち消すスキルが発動したんだ!」
「よかった。とりあえず殺されてない」
「けど、これからどうしたら」
クリス副団長は、団員達が足を止めたのを確認すると。
ライザ団長を見た。
(みなの言う通り。あれはライザ団長のスキルでしょうが。魔王配下がライザ団長の首から手を離していない。これでは、チェンジスキルが使えません。いえ、ライザ団長が生きているなら、チャンスを待つだけです!)
クリス副団長のチェンジスキルは。
触れている者も、一緒に移動してしまうため。
今ライザ団長を移動させると、マジシャンも一緒に移動してしまう。
そのため、ライザ団長を救出できないでいた。
マジシャンは、ライザ団長の首を掴み、絞め殺そうと手を近づけたが。
ライザ団長の首回りが光、首を掴めないでいた。
「おや、これはこれは懐かしいでは、ありませんか。昔使っている人間がいましたね。確かスキルでしたか」
ライザ団長の魔族の攻撃を打ち消す、スキル聖騎士により。
ライザ団長の首の周りには、白く輝く障壁が現れていた。
ライザ団長は、自身のスキルを理解していなかったが。
冷静に、マジシャンから離れようとしていた。
(助かりました。まさか、私のスキルに魔王配下の攻撃をも防ぐ力があるとは……ですが。状況は良くありません)
ライザ団長は、体を動かそうとしていたが。
マジシャンに、スキル聖騎士ごと首を掴まれ、その場から動けないでいた。
(どうにかしなくては、みなが、こちらに来てしまいます。ですが……力比べでは……くっ! 勝負にもなりませんか。1ミリも動く気配がありません。ですが、なぜ、何もしてこないのです。この者は、いったい何を見ているのですか?)
マジシャンは、ライザ団長の首を掴み。
すぐに異変に気がつき動揺していた。
何故です! 他に気配は、なかったはずです!
何故! 白銀のいた建物の上に、突如気配が現れたのですか!
まさか白銀が、騎士の死を防ぐために、何かを召喚したとでも、いうのですか!!
マジシャンの位置からでは、看板が邪魔をして。
宿屋の屋根の上が死角になっていて、屋根の上に何が現れたかわからないでいた。
ユーリは、窓枠に干された布団のように、倒れ込んでいた。
はぁ、一瞬焦ったが、さすが騎士団団長のスキル。
魔王配下にも抵抗できるのか。
さて今のうちに、眠り姫を叩き起こすか。
はぁ、普通の召喚獣なら、こんな必要ないんだろうな。
ん? 何か上から声がする? この声は、リザ達か?
ユーリがいる、宿屋の屋根上には。
避難所に避難していない、ユーリ達を捜索にきた。
騎士団、見学3人娘がいた。
3人娘は、先程まで、イフリータの赤い結界内にいて、気配が消されていたが。
ライザ団長のピンチに、3人娘は、屋根から身を乗り出し。
3人娘が、イフリータの結界外に出た事で、マジシャンは、3人娘の気配に気がつき。
ユーリにも3人娘の声が聞こえるようになった。
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