第21話 変態アニキ、固有スキル
メリッサさんに言われ、入り口の方を見ると、貴族風の少年が歩いていた。
絵に描いた様な、イケメンだな。
貴族風の少年は、こっちに手を振って近づいてきた。
当然だが、俺ではなく相手はルナだ。
ルナを見ると、嫌いな物を無理矢理、食わされた様に、顔が強張っていた。
(ルナが変だ?)
貴族風の少年は、さわやかスマイルで話した。
「マイハニー。新しい彼氏かい」
「私に彼氏なんていないって! 言ってんでしょ!」
「マイハニー!!! は!」
俺は、2人の邪魔をしない様に、見守るつもりだったが。
当然現れたイケメンの発言に動揺してしまい、奇声を上げてしまった。
「は! ち、違うのぉ! この変な奴は、あたしのバカアニキなのよぉ!」
「あぁ、お兄さんでしたか。これは、失礼しました(兄、確かに似てるかな。金髪だし)」
「ほほぉ、ルナが珍しく違う反応をしたね。興味深いじゃないか」
「ぐぅ。ちょっと! あんたどこ行くのよ!」
ルナを押し退け、兄は俺に近づいてきた。
「自己紹介が遅れたね。僕はルナフィリアの兄。ユリウス・クロノシアスよろしくね」
「俺は、ユーリ・ディザアです。よろしくお願いします」
「ふむふむユーリくんか。顔は悪くないけど、身長はこれからかな? けど、体は細いし筋肉は少ないね。それに……」
(なんだ当然真剣な顔になりやがった?)
「全ての闇を喰らい尽くしてくれそうな、漆黒の髪が……こんなにも……」
ユリウスは、徐に、ユーリの髪を触ると、指を髪に絡め撫でる様にした。
(何だよ、悲しい顔でいきなり、俺の髪触り出しやがって。何かあるのか! 俺の髪に! 何か!)
ユリウスは、ニコっと笑い。
「くせっ毛で台無しだから直しておいたよ」
「ありがとうございます(ほっとけ! ペガサスの野郎に、宙吊りにされてたんだから仕方ないだろ! クソ真面目に聞いて損した)」
ルナがユリウスを押し退け捲し立てた。
「もう! あんたは関係ないでしょ! あっちで練習してなさいよ!」
「ふふ、久々に無邪気なマイシスターを見た気がするよ。そうだユーリには、可愛いマイシスターを見せてくれたお礼に、僕の華麗なる魔法を見せてあげよう!」
「あ、ありがとうございます」
「しっし!」
(酔っ払いが言ってた。たまに来る変態お坊ちゃんって。ユリウスだな)
ユリウスが呪文を詠唱した。
「我が愛しきマイシスター、ルナに捧げよう。この燃え上がる熱き魂の化身を!」
「いらないわよ!」
ユリウスは、まるで相手がいるかのように、一人で社交ダンスをしながら呪文を詠唱している。
(マジで変態だな)
ルナは、ため息混じりに話した。
「あれが、天才なのマジムカつくわねぇ」
「天才なのか?(そうは見えんが)」
「呪文は、目標を見て詠唱するのが基本なんだけど。あそこまで複雑な動きをしながら、目標を見ずに魔法を使える人は、騎士でも滅多に、いないんじゃないかしら」
「すごいな(普通の奴だったら友達に欲しかったが。あれは流石に勘弁だな)」
「相変わらず無意味な事やってるわね」
「どういう意味だ?」
「アイツはもう、詠唱が終わってるのよ」
「は?」
ルナがモゴモゴと、言いにくそうにしていると、メリッサさんが代わりに話した。
「ルナに言いたいから長々と言ってるだけなので、魔法の発動には、何の関係もありませんよ。たぶん後5分は、つづきます」
「なが!」
「ほんと勘弁してほしいわ。はは」
(どんまいだ。ルナ)
ルナが手をポンと叩き、元気いっぱいに話した。
「さ! 長いし、あんな奴ほっといて、ユーリも魔法を使って見なさいよ」
「見てなくていいのか? あれ」
俺は、華麗にダンスをするユリウスを見て話していた。
「いいのよ、あれは」
ルナに言われ、魔法を使う為。
ユリウスを尻目に、的の正面に移動し呪文を唱えると、ルナと同じ様に火炎球が空中に現れた。
(おぉ、目の前にあるが熱くはないんだな。えぇと、これで)
メリッサさんに言われた通り、普通に的に当たれと念じると、火炎球は動き出した「おぉ動いた」的に当たると消滅した。
ドン! ボッ!
(あれ? 的壊れてねぇ? それどころか焦げてもないな? 結構速く見えたんだが? 何故だ?)
俺の動揺とは違い、ルナは驚いていた。
「へぇ初めてなのに発動するなんて、凄いじゃない」
どうやら、発動すらしない人や、全く発動できずに、冒険者を諦める物も多いらしい。
俺は無詠唱魔法を使えるのに、的が壊れもしなかった事には、疑問があったが。
魔法が発動したのなら大丈夫なんだろうと安心すると、周りの声が鮮明に聞こえた。
「我が愛しき妹よ! 我が紅蓮のごとく、燃え盛る魂を捧げよう」
(まだ詠唱してたのかあの変態! 今度は、アイススケートみたいに回ってやがる。何がしたいんだ? お! 発動するのか!)
ユリウスは動きを止め、胸に手を当て魔法を発動した。
「フレイムハート」
「おぉ! 炎のハートだ、すげぇ」
俺の歓喜を打ち消す様に、ルナが膨れっ面で話した。
「あんなの凄くないわよ。だってあれは、アイツの固有スキルなんだから」
「あれが? スキル?」
「アイツの固有スキルは『形状変化』魔法の形を変えられるのよ」
「おぉ、そんなスキルもあるんだな」
ユリウスは、手で前髪をかきあげ。
「見てくれたかいルナ! 僕達、兄妹の絆を!」
フレイムハートは、的に当たり砕け散った。
パァァァァン
「えぇしっかりと見たわ、砕け散ったハートをね」
「ふっ。僕達の愛に、耐えられなかったようだね」
「あんたの考えてる事が、さっぱりわからないわ」
「僕は、君の考えてる事、全てお見通しさマイシスター」
「へぇ、なら! 当ててみなさいよ!!!」
ルナは、ユリウスの頭に上段蹴りを繰り出した!
目に見えぬ速さで繰り出された蹴りは、ユリウスの頭に当たる直前。
ユリウスが発動した魔法『水玉障壁』に、ルナの足が飲み込まれ、蹴りは止まった。
「なに! 詠唱なし!」
俺が驚きく横で、冷静にメリッサさんが解説した。
「いえ、詠唱がなかったのはですね。ユリウスくんが手に持っています。
『マジックカプセル』という、魔法を記憶できる、高価なアイテムを使ったからなんですよ」
(アイテムに魔法を前もって入れてたって事か。バカでヘンタイだが、こうなるって予想を? いや、お約束なのかもしれないな。メリッサさんが、またですかぁ? みたいな顔してるし。
それにしても、ルナには悪いが。ナイスなアングルで止めたなぁ。まるでY字バランスだ!!!)
「く、この! これなら!」
「おぉ! ルナが飛んだ!」
ルナは、右足を空中で水玉障壁に拘束されながらも、左足で地面を蹴りジャンプし。
水玉障壁に、拘束された右足を踏ん張り、空中から左足で蹴りを繰り出すが、空中では体制が悪く。
ユリウスには、軽々と避けられた。
ジャンプ蹴りを諦め、片足立ちに戻ったルナは、拘束された右足を震わせ、呪文を唱えた。
「私の足が血に飢えている! 奴の顔に真っ赤な花を咲かせと! 磨き上げし足に紅蓮の力を与えたまえ!!!!
『ジェットフレイムandダブル!!!』」
「分身した!!!」
ユリウスの背後に、本体と同じ体勢、片足立ちのルナが現れた。
水玉障壁に飲み込まれ、空中で止められていた。
ルナの足の裏から炎が噴火し、拘束していた水を蒸発させ、爆音と共にユリウスに襲いかかった!
ジュ! ゴゴゴ! ブォン!
「ちょ!!! ぎゃぶぅ!」
ヘッドスライディングの様に避けユリウスは、地面に鼻をぶつけた。
正面と背後から、ユリウスの顔めがけ繰り出された蹴りは、ユリウスが回避した結果。
ルナの本体と分身の足が激しくぶつかり合い。
衝撃波が離れていた俺の所まで届き、ユリウスに直された髪がなびいていた。
「ちっ! あんた何避けてんのよ!」
「いやいや避けないと死んじゃうよ。それよりマイシスター、人に魔法を使ったらダメじゃないか」
「あんたも! 使ったでしょうが!」
「何を言っているんだいマイシスター。僕のは、アイテムだよ」
「言い訳してんじゃないわよ! 同じでしょうが!」
「ノンノン、アイテムと魔法は違う物だよ。マイシスター」
「このぉ」
俺は、ルナが使った分身についてメリッサさんに聞いていた。
あれは、ルナの固有スキル『増殖』
今の様に自分を何人とかに増やせる様だ。
彼氏なら妄想が膨らむ案件だな、うらやましい限りだ。
おっと、さすがにこの妄想は失礼だな。コホン!
まぁ普通は、発動した魔法を増やす事が、基本的な使い方だとか。
格闘家のルナは、分身にも使ってるみたいだ。
メリッサさんのスキル説明が終わると、扉が開き、青髪のメイドが現れた。
(おぉ、本物のメイド様だ!)
「あ忘れてたわ」
「あぁ忘れていた」
(2人が焦ってるな)
「ルナ様、ユリウス様、お昼になったら帰って来てくださいと、あれ程申し上げましたのに、殺されたいんですか? 刺しますよ!」
シャキン!!!
(何このメイド! 見た目に反して、メイドらしくねぇ。何刃物出してんだよ!)
ルナが、刃物をチラつかせるメイドに話した。
「まぁまぁ、落ち着いてラウラ。帰ろうと思ったんだけど急用ができちゃってね」
「急用ですか?」
必死に言い訳をするルナで、遊ぶ様にユリウスは話した。
「いやぁ、盛り上がっていたら、すっかり忘れていたよ」
メイドの顔はゆがみ。
「はぁぁぁ?」
「あんたは黙ってて!!! 違うのよ、あいつはバカだから忘れてるだけよ」
「そうですね」
仲間外れにされたユリウスは、俺に話しかけてきた。
「騒がせて悪かったね」
ルナは、メイドに話しながらツッコミを入れた。
「誰のせいよ!」
「これは、お詫びにあげるよ。ユーリ」
「いいのか? 高価なんだろこれ」
「ここの別荘に、まだ千個あるから、気にしないでくれ」
「ありがとうございます!(ユリウス様! 変態とか思って申し訳ありませんでした!!!)」
人は金目の物を貰うと態度が豹変する生き物なのだ!
俺はマジックカプセルを手に入れた!
2人は、別れを言い、お昼を食べに別荘に帰った。
俺も昼を食べに、裏庭から冒険者ギルドの酒場に戻った。
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