第20話 ルナフィリアの魔法と呪文?
ルナフィリアは、メリッサに頼まれ、俺に魔法のお手本を見せる為、的の正面に立ち、準備運動を終えた。
ルナは、俺に手を振り話した。
「ユーリ! ちゃんと見てなさいよ!」
俺が返事を返すと、ルナは呪文を唱えた。
「炎の精霊よ、悪しき者どもを蹴散らす力を貸しなさい!『ファイアボール』」
ルナの目の前に、炎の渦が塊になり、火炎球がサッカーボール程の大きさで空中に現れた。
俺はイフリータや魔王配下の強力な魔法を見た事はあったから、別に驚きはなかったが。
やはり魔法を使うのに、呪文を詠唱している事に疑問を抱きつつ、礼儀として拍手をしようとすると「な!!!」
ルナは、火炎球を頭、胸、膝、足、まるでボールで遊ぶようにリフティングしていた。
「よ! は! それ! おっとと! それ!」
すげぇ、熱くないのは何かあるんだろうが。
そんな事よりも! 火炎球も跳ねてるが! それ以上に、むね! 胸が上下左右に、暴れ馬みたいに暴走してやがる!
ルナは最後に空高くポン! と蹴り上げ、火炎球の落下に合わせ、回し蹴りをするように、クルッと回転した。
おぉ! 足がムチのようにしなり、火炎球を蹴り出す時の、お尻から爪先までが槍のように、まっすぐで芸術的だ!! うつくしい。
ん? 蹴り出す??!
「ぶっ飛べぇぇぇ!!!」
火炎球は、ルナの足に蹴られると、丸い形から三日月の様に潰され蹴り出された。
ドボォ!
気がついた時には、火炎球は的を壊し、壁に甲高い音を立て、めり込んでいた。
ギュルルルル!!!
しまった。ルナの体に見惚れて見ていなかった。
とりあえず変わった魔法だったし、驚いておくか。
「すげぇな、ルナ! こんな魔法、初めて見たぞ」
ルナは、俺の反応に嬉しいそうに。
「でしょでしょ!!! 私のオリジナルなんだから!」
ぐ、無邪気に喜ばれると罪悪感がハンパねぇぞ!
俺は君の体に夢中だったんだ、すまないルナ。
「オリジナルなんて、できるんだな!」
ルナは人差し指を頬に当て、楽しげに。
「けどねぇ、本当はさぁ、あの壁をぶち破ってやるのが目標なんだけど、硬くってねぇ」
「おぉ!」
ルナの火炎球は、壁の丁度真ん中まで掘り進み消滅していた。
メリッサさんは、慌てた様子で。
「ルナ前から言ってますが、壁を壊さないで下さいよ。壁の向こうは平原ですが、人もいるかもしれないんですから」
「大丈夫よ! 壁壊したら火炎球、消しちゃうから」
「いえ、そう言う問題では。ちょっとルナ」
ルナは、メリッサさんの肩に手を置き、話に割り込んだ。
「まぁまぁ、今はユーリの練習なんでしょ。ユーリ頑張ってね」
「ありがとう。ルナ」
俺は、ルナの無傷の足を見ながら。
(俺も蹴ればいいのか? 足燃えないよな)
メリッサさんが人差し指を立て話した。
「ちなみにぃ、ユーリくんも格闘家ですが、蹴ったらダメですよ」
「へ?」
「あんな変則的な技、最初にやるものではありませんし。ユーリくんは、靴を履いてますから勿体無いですよ」
「靴履いてたらダメなんですか?」
ルナは舌を出し頭に手を当て慌てて話した。
「あぁ! ごめんなさい、私クセで蹴っちゃったわね」
メリッサさんが、せっかくだからと格闘家の基本を説明するよう、ルナに言った。
「私、格闘家なんだけど、格闘家は全身を魔力でオートガードしてるのよ」
「へぇ、凄いな」
「けど欠点があってね。オートガードには、衣類が含まれないのよ」
(見えそう!)
ルナは、ミニスカートを、手で持ち足をクネクネさせながら話した。
「さっきみたいに、魔法を蹴る時に、靴を履いてると、足にはオートガードが発動するんだけど、靴には発動しないから、魔法とか魔物を蹴ると、毎回靴がボロボロになるのよ」
「なるほど、俺が魔法を蹴ると靴は壊れるわけか」
「そう言うことよ。まぁ説明では魔物を蹴るとか言ってるけど、私はまだ魔物を倒した事ないんだけどねぇ」
「そうなのか?」
「倒せるはずなんだけど、お父さんが許してくれないのよ」
「まぁ、心配なんだろ」
「みんな、そう言うのよねぇ」
「はは(魔物と戦いたいなんて娘いたら、そりゃ止めるだろうよ)」
「まぁいいわ。それで、同じ理由で衣類も最低限しか着れないのよねぇ。魔法を殴ったり蹴ったりしてると、衣類なんて簡単にボロボロになっちゃうから。本当は、もっとオシャレしたいんだけどなぁ」
「いや、十分可愛いぞ」
「ほんと。ありがと」
メリッサさんは、ルナにお礼を言うと。
次に魔法を発動するやり方を説明してくれた。
「発動は簡単で。この魔法を、あの的に当てたいと念じながら、呪文を唱えるんです。簡単でしょ」
俺はイフリートを召喚した時の事を思い出していた。
やっぱり、魔法発動には呪文がいるんだな。
じゃあ、イフリートを召喚した時に、カイザー達が驚いていたのは、俺が呪文詠唱なしで魔法を使ったからか。
いわゆる『無詠唱魔法』ってやつだな。
理由は簡単だな、賢者の石が俺の体内にあるからだ、多分だが。
問題は、この世界の人は呪文を皆、知ってるものなんだろうか? 聞いてみるしかないよな。
呪文が当たり前の世界で、呪文を知らない俺は、怪しまれない様に聞いた。
「そういや俺、田舎育ちだから、呪文を知らないんだけど」
「あら、ごめんなさい。滅多に田舎から新人冒険者が来ないから忘れていたわ」
(謝らせてしまったが。冒険者ギルドの酔っ払いの話だと、俺の出身地は、田舎だから嘘はついてないよな)
「けど呪文は、なんでもいいんですよ」
「呪文なのに、なんでもいいんですか?」
「そうですよ。大事なのは、この魔法を、こう使いたいと念じて、言葉にすることだから。回復魔法なら、この人の怪我を治したいと念じて、好きな呪文を言えば発動しますよ」
「なるほど(簡単で助かった。全ての魔法に呪文が決まっていたら、とてもじゃないが、覚えられる自信がなかったからなぁ)」
「ただ自由だからと言って、変な呪文を詠唱していると、噂になりますから、おすすめはしませんよ」
「変な呪文?」
「えぇ、変わった子がいるんですよ。あぁ丁度来ましたね。あの子ですよ」
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