第17話 職業鑑定スライムフェアリー
受付台の隣には、銀色に輝く等身大フィギュアの様な物があった。
クレアさんの説明によると。
鑑定人形に触れると、武器や服が適性の職業に切り替わるようだ。
俺はこれを待っていたんだ!!! 転生して、いきなり勇者一行殺したり、魔王配下殺したりで! 神を呪いそうだったが。許すぞ神様!!
それにしても、作った人の拘りなのだろうか?
妙に生々しくリアルに作られている。そのため、胸や脚の光沢がエロい!
ふ! 男ならやはり! 胸だろ!! と思ったが。人が見ている前では無理だな。
無難に鑑定人形の肩に手を置いた。
鑑定人形は、猛毒を浴びせられたように!
ドロドロ! ボタボタ! ゴトゴト! と崩れ落ちた。
リアルに作られているため、人が溶け落ちたように見え。
俺は一歩下がり「うをぉ!! なんだこれ!」と叫ぶと。
クレアさんは「クスクス」と笑をこらえていた。
新人の反応を見るのが楽しみなのだろう。
俺が反応する前から、受付台に身を乗り出し、胸の谷間を強調し、口を手で塞いで見ていたから、変だとは思っていた。
いや、胸の谷間は俺が見ただけだな。
クレアさんは「ごめんね」と謝っていた。
「別にいいですよ」と返事をしておいた。
酔っ払いに喝を入れてくれた優しい人だ、このくらい気にしないさ。
それにしても鑑定人形を作った奴は、かなりのゴミ野郎だな。
人が溶けるような演出いらないだろ! などと思いながら結果を待っていた。
鑑定人形に触れてから1分程で。
銀色の液体は、モコモコ、うねうねと。
パンが膨らむように、目線の高さまで大きくなり。杖、ローブ姿に変わり隣には、犬みたいな獣がいた。
クレアさんは、拍手しながら。
「へぇ、召喚魔術師かぁ。魔力が高い証拠ね」
クレアさんの説明によると。
召喚魔術師は、召喚獣を召喚している間は、常に魔力を消費するため、生まれ持った魔力量が必要になる。
魔力量は、親からの遺伝が殆どで、修行をしても微量しか増えない。
そのため王族、騎士、貴族などの子孫は、魔力量が多いらしい。
例外はあるとのこと。
(まぁ、ご先祖様が召喚魔術師だったんだから、同じ体なわけだし、当たり前だよな。それに召喚獣達を自由にする為にも、召喚魔術師じゃないと困る!)
酔っ払いは過去を忘れ。
「召喚魔術師って、珍しいな」
「だなぁ。魔力の多さが将来を決めるからなぁ」
「つっても、俺達と同じ平民じゃなぁ。ボ……ウ……ズゥ!」
クレアさんの鋭い視線が、酔っ払いの心臓を、殺すぞ! と貫いていた。
酔っ払いは、笑ってごまかし「ははは……げ!」何かに驚きテーブルを叩き立ち上がった。
ダァン!
「おい! あれ!」
酔っ払いが指差したのは、崩れ落ちた。
鑑定人形の姿だった。
クレアさんと酔っ払いは騒ぎ。
「サブ職よ! おめでとう」
「こんな田舎じゃ、滅多に見れねぇな」
「やったな。ボウズ! 騎士にもなれるかもしれんぞ!」
酒場のマスターは、ちょび髭をピクピクとさせ、無表情で興奮していた。
ノンアルを飲んでいるイフリータ、エクリアは。
「あっちも楽しそうね」
「ですなぁ」
俺は、騎士になる気はないが。お礼を「ありがとうございます」と言っておいた。
意味不明なスキルはあったが。サブ職というレアな物を手に入れたようだ。
鑑定人形は、バニー姿で木製の看板を持ち看板には『あと全部です』と書かれていた。
「意味がわからないが?」
酔っ払い達は、現実逃避を始めた。
「今日も平和だな」
「俺は、かみさんに休みなら外行けって言われたよ」
「俺もだ俺も」
クレアさんは、動揺しながらも仕事をした。
「えとだな、落ち着いて聞いて欲しいんだが」
「はぁ?」
「これは、残りの職業全部って意味だ」
「全部?」
「そうだぞ! 私が知る限り。こんな事、王族や貴族でも滅多にねぇ! すげぇ事なんだ!」
「そりゃすげぇや!!」
俺は、喜んでいるが。この状況に、心当たりがあった。
最初の職業鑑定で、全部の職業が出なかったのは。召喚魔術師が、ご先祖様の物だからだろう。
そして2回目の職業鑑定は、俺の適正職、俺にそんな才能があるとは思えないから。
俺の体、つまりホムンクルスの素材に使われた。賢者の石が原因なんだろう、理由まではわからないがな。
次にクレアさんは、職業説明をしてくれたが、近接戦闘の説明で気になることを言っていた。
「短い武器で戦う職は、最初は逃げ回る敵に、どうやって攻撃を当てるか悩む事になるんだが、こればっかりは経験を積むしかない」
(敵が逃げ回る? 反撃を回避するとかじゃないのか?)
職業説明が終わり。
「はい、冒険者登録完了しました。ユーリくんは新人だから、どんなに職業が多くても、Fランクからスタートになります」
「Fランク?」
「ランクは冒険者のランクで、最初はFランクなの。掲示板のクエストを一定数クリアしたら、ランクアップの試練に挑戦できます。試練をクリアできたら、上のランクに上がれます。簡単でしょ」
「はい(ゲームでよくあるやつだな)」
「それでは、装備を渡しますね」
クレアさんは、物置から刀と杖を取り出し受付台の上に置いた。
明らかに、安物だが仕方ないな貰えるだけマシだ。
刀を持つと説明が表示された。
(説明も酷えな)
たぶん、切れる刀。
刀を収納し杖を持った。
魔法の威力が上がるかもしれない、木の棒
(そこら辺に、落ちてる木の棒と違いがあるんだろうか?)
クレアさんの説明では、杖は魔力が低い人が使う補助的な要素が強いから、魔力が高い人は、杖より他の武器を持つそうだ。
賢者の石で魔力無限の俺には、杖は本当に木の棒になりそうだな。
他の武器も貰ったが、似た様な説明だった。
俺は、武器以外に「防具などは貰えないんですか?」と聞くと。
「魔物の攻撃なんて、滅多に当たらないから、大丈夫よ」と笑いながら話していた。
この世界の常識らしく、知らないと怪しまれそうなので、深く聞くのは辞めておいた。
俺が練習できる場所を聞こうとすると、聞き覚えのある声が割り込んできた。
「邪魔よ! ご主人様! 終わったのなら、のいたのいた! 次は私達の番なんだから」
「そうですよぉ」
おバカ2人が、冒険者ギルド受付前に立っていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。