第150話 不死なるフェニックス 人の力……
技の名前はどうあれ、地面を巨大な津波のようにする、フェンリのチャーシューメェン【シッポビンタ】で消し飛んだはずの、フェニックスが再生されていっている……まさか本当に不死なのか……
ガラガラガラガラ、ズドン!
「マスター、どうやら敵の部隊も無事な者がいるようです」
「そうみたいだな。フェニックスを消し去った事で、チャーシューメェンの威力が弱まったのだろう。敵部隊は、ほとんどぶじのようだな」
「そんな! 私のチャーシューメェンが! 白銀さんが威力は落とせと言ったりするからですよ!」
「それは仕方ないだろ。フェンリの全力なんかで攻撃したら、この辺りいったいが消し飛んでもおかしくない」
「うぅ、せっかくエクリアから聞いた必殺技だったんですよ! こんなざんねんな結果! なんて報告したらいいんですかぁぁぁ!!」
やはり、あの変な名前は、エクリアだったか。けど技の名前は別として、問題はフェンリの技を見てまだ、こちらに来るかだな。
「ぐっ、みなぶじか!」
「クライヴ団長、死んでいる者はいませんが。動けない者が多数出ております!」
「あんなふざけた破壊力では仕方ありませんか。ですが、我らのフェニックスは消えてはいない! 動ける者だけで突撃を再開します! みな立ちなさい!」
「ぇ、たつ! とつげきさいかい! けど、あんなバケモノどうやって倒せば……」
「おい見ろ!、巨大なフェンリルが、お尻をこっちに向けて、からだをふるわせて、おびえているぞ!!!」
「ほんとうだ! だが何があったんだ?」
「決まっているだろう! 我らの不死身のフェニックス様を見て、おじけずいたにちがいない!!」
【うをおぉぉぉぉ!! 我らのフェニックス様が! 敵の巨大フェンリルの心を粉砕してくださったぞ!!!】
「敵の攻撃には驚きましたが。フェンリルのおかげで、みなの士気が回復したようですね」
「は? フェンリルがおびえてる? 何の話だ? フェンリなら俺の横に……ん? いない? どこにいった?」
「マスター、フェンリならば、あそこでふるふると落ち込んでいますよ」
「なに!!?」
ぶるぶるぶるぶる……
「うぅぅ、わたしのわたしの自慢のシッポ! チャーシューメェンだったんですよ! どうなってるんですか、あのフェニックスさんは、あんなの反則じゃないですか!」
フェンリがデカイずうたいをまるめて、落ち込んでやがる。
「おい! フェンリ! 次はうまくいくって、もう一度やってみてくれないかチャーシューメェンを!」
「ふっふっふっ、白銀さん、必殺技はですね。一度使ったら終わりなんですよ!」
だれが決めたそんなルール!!
「マスター、敵が部隊を集めていますが、どうなさるのですか?」
どうなさるって、聖剣のエクスは邪悪な存在じゃないと切れないし……どう考えてもフェニックスは邪悪な存在じゃないよな……頼りのフェンリはチワワみたいに丸くなって落ち込んでるからなぁ。もう戦えないよな。
不死のフェニックスがいなければ、数が多いだけの人だけなんだが、ん? 騎士団の数が……思ったより減ってるな、それに、フェニックスもひとまわり小さくなってる気がする?!!
「くっ、足に力が、これからだってのに」
「がはぁがはぁ、白銀を、たおせ……」
「おい! 寝るな!! クソ」
「クライヴ団長、集結したあとも、倒れる者が」
「わかっています。ですが、すでに戦いは始まっているのです。残った部隊だけでも、人数は圧倒しているのだ! このまま突撃を開始する!!」
「はっ! 了解しました!」
「マスター、来ます」
「あぁ、わかっている。試したい事がある」
フェンリは落ち込んだままだし、聖剣のエクスもダメ。なら、自分でやるしかない!!
できるできるはずだ!! 俺の中には賢者の石があるんだから!!
ウォーターボールをヘビのように引き伸ばし! 水流渦巻く竜をイメージ! 願望スキル発動!!
「濁流となり、フェニックスに永遠のほうようを! ウォータードラゴン!!」
ザザザザザ!!! グギャァァァァァ!!
「なんだ! ウォーターボールに見えた魔法が! ドラゴンになっただと!!」
「クライヴ団長! どうされますか」
「全部隊を今から止めるのは不可能! このまま突撃を!」
ギィィィィィ! ガァァァァァァァ!!
「ウォータードラゴンが、フェニックスに、からみついた!」
「なんのまねだ白銀……フェニックスは不死だぞ。そんな攻撃など」
「で、ダンナ様。これからどうするんだい。ウォーターボールがドラゴンになったのには、私も正直驚いたけどさ。不死身のフェニックス相手に攻撃して意味があるのかい?」
「それをこれから試すのだよ。ネル」
「ん? よくわかんないね。どうなるってんだい?」
「こうするだけだ。すり潰せ! ウォータードラゴン!」
ギギギギ!【グガガガガガガガ……】
「フェニックスが! 押しつぶされた!」
「問題ない! フェニックスは、不死何度でもよみがえる!!」
パァァァ!!
「フェニックスの復活だ!!」
「あ! まずい! フェニックスが復活するのを狙って、ウォータードラゴンが!」
「クソ、これでは、フェニックスが身動きとれないぞ!」
「クライヴ団長! どうされますか! 先ずはあの、ウォータードラゴンを魔法で攻撃しますか?」
「いや、確かにこれではフェニックスは、動けないが。ウォータードラゴンを出し続けている、この状況ならば、白銀は自由に戦えない! 作戦は変わるが! 狙いは白銀のくびだ! 突撃!」
「ふぅん、つまりはウォータードラゴンで、フェニックスを足止めしたって事かい? 確かにこれなら白兵戦だけになるね」
「いえ、ネルそれは違いますよ。マスターの狙いはあれです」
「あれ? エクスの指差してるのは、後方部隊の連中かい?!! あれは部隊後方が勝手に倒れていってるじゃないかい! どうなってんだい!」
「魔力の流れからして、フェニックスが消滅した時は、全部隊の魔力を使い再召喚しているのでしょう」
「じゃあ、なにかい。フェニックスを召喚した事で、自分達の首をしめたってことかい」
「どの道結果は同じだと思いますが。そう言うことです。フェニックス再召喚で、魔力の限界になった者が、突撃部隊についていけず、後方で倒れ、突撃部隊はマスターを見てますから足の止まった者に気がついていないのでしょう」
「なんて事だい。フェニックスにそんな弱点があるなんてね」
「確かにフェニックスは、不死かもしれないが所詮は人が呼び寄せた存在ということだな」
次は、来週金曜日 予定です
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