第15話 町探索、冒険者ギルドと酒場
町の探索は、すぐに終わった。
エクリアが、お菓子屋さんだと思っていたお店は、雑貨屋だった。
エクリアは雄叫びを挙げて「グガァァァァ!!!」動かなくなってしまった。
俺は「探せばあるかもしれないだろ?」と言って、エクリアを動かした。
そしてイフリータは、召喚獣になってから初めての町だからか、子供がはしゃぐような満面の笑みを浮かべていたが。
自分の性格が邪魔をしたのか、すぐに冷静さを装っていた。
ただ顔は、お上りさんのようにキョロキョロしていた。
町は空から見た通り、やはり小さかった。
エクリアが、うるさいので雑貨屋を最初にしたが。
俺が気になっていた田舎町には、似合わない建物、赤い建物と青い建物は、貴族様の別荘だった。
近くで見ようとしたが、説明もなく騎士に止められた。諦めて他を見て回った。
町を見て気になったのが。
別荘にいた騎士もそうだが、町にいる他の冒険者も防具がかなり軽装で、肌が剥き出しだ。
勇者カイザーが着ていた、全身を隠すような鎧が1人もいない。
近くにいる大剣持ちの女性も、銀の胴体鎧に白いスカート
あれだけ素肌を出していて戦えるのか?
あの職業は、敵を引き付ける役だと思うんだが? この世界では違うんだろうか。
美人だったが、お近づきにはなれないから、遠くから見るだけだがな。
他に気になったのが、異世界名物! 動物耳の種族もいたが! こちらも、お近づきにはなれなかった。
早く獣人とも仲良くなりたいものだ。
それ以外は、宿屋と冒険者ギルド他には特になかった。まぁどう見ても、田舎だし仕方ないだろう。
先ずは、俺の召喚獣達を取り戻すため! 冒険者ギルドだ!!!
俺達は、さっそく町の中央にある冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは酒場と一体となっていて、外見は木造のボロい酒場だな。
木製の看板には。
『冒険者ギルド・メモリーズロード』と書かれている。冒険者ギルド前には、酒場のメニューがある。
先程まで、お菓子屋さんがない事に落ち込み、ぶつぶつと。
「こんな菓子も夢も希望もない世界終わったら、また転生できませんかねぇ」と言っていたエクリアの瞳に輝きが戻った。
「おほぉ! ユーリ! ユーリ! 見てくださいよ!」
「うを! なんだ突然元気になりやがって!」
「ほんとよね。さっきまで、悪魔に魂売ってたのに」
「そんな事よりですねぇ! 見てくださいよ!!! 夜更かしセットがありますよ!」
エクリアは楽しそうに酒場のメニューを指差していた。
「夜更かしセット?」
俺は転生前に神様が見せてくれた。
エクリアに殺された時の映像を思い出した。
「あぁ、俺を殺したコンビニ袋の中身か。何かと思ってたが、ジャンクフード、酒、コーヒーだったのか」
「グフェフェ」
「どうした。きみ悪い笑い方しやがって」
「だってですよぉ! 理不尽な理由で突然! 何もない異世界に飛ばされたと思っていましたが!」
「理不尽って! 俺を殺したのが理由だろうが! って聞いてねぇな」
「地獄に天国とは、正に! このことじゃないですかぁ」
「仏な、地獄に仏。バチが当たるぞ、てか天国には、娯楽も何もねぇぇんだろうが!」
「そうですよぉ、そうですともぉ。もちろん例えですよたとえぇ! ぐふふぅ」
(暗いのもアレだったが、元気だとこれはこれで、ムカつくな)
店の前で長話するのも迷惑になるからと、話を終わらせ、木製の扉を開け冒険者ギルドに入った。
ギィィィィ、カランカラン。
中に入ると、まだ明るいうちから飲んだくれている、おっさんに睨まれた。
「メイド? 貴族様か?」
「けど、あのメイド子供だぞ?」
「子供だからって、メイドも子供にしたんだろ」
メイド連れで、貴族と思われたようだが。問題はなさそうだ。
酒場のちょび髭マスターはチラッと、俺を見たが。
俺達の見た目から客じゃないとわかると、ヒゲを悲しそうに下げ反対を向いた。
町中もそうだったが、酒場や冒険者ギルドも、冒険者は、少なく数えるほどだな。
田舎だし、こんなものなんだろう。
さて冒険者ギルド受付に行くか。
「行くぞエクリア、イフリータ。あれ? 何処行きやがった?」
先程まで俺の背後にいた2人が、姿を消し酒場のカウンターから声がした。
「ヘイ! マスター、ウイスキーロックで、あとですねぇジャンクフードのメニューを!」
「私はレッドテイルのカクテルを貰おうかしら」
(何やってんの! あのお子ちゃま達は!)
周りの客が騒ぎ。
「なんだ? あのガキども酒頼んでるぞ」
「屋敷では、年齢関係ないから飲んでんだろうさ」
「ちげぇねぇ。ここを何処だと思ってんだよ」
俺は、急いで2人に近づき小声で話した。
「何いきなり目立ってんだ! てめぇら! ただでさえメイド連れとか目立つのによぉ」
イフリータは、ニコっと笑い。
「ご主人様の趣味でしょ」
「いやだからそれは」
酒場の客は、子供相手だからか少し声が大きくなり話した。
「メイドが趣味?」
「どういういみだ? ヒック!」
「さぁなぁ、貴族様の考える事はわからねぇよ」
問題なさそうだから、客は無視し話を続けた。
「大体イフリータ、お前、酒なんてわかるのかよ!」
「話したでしょ。美味しい飲み物を飲ませてもらったって」
そういや、召喚された時の楽しい思い出でを聞いたら。
美味しい物、飲んだとか食べたとか言ってたな。
「いやだけどな、お店でお前らの見た目で、酒が飲めるわけないだろ」
2人は声を揃え。
【えぇぇぇぇ】
俺達は、カウンターで話していたため、話が聞こえていたマスターは、ちょび髭を指でピンと引っ張り。
「ノンアルコールもあるよ」
「しかたないですねぇ。ノンアルで我慢しますか」
「ノンアルが何かわからないけど、私もそれで我慢するわ」
トクトクトクッ……コツッコツッ
「ぷはぁぁぁぁ、生き返りましたねぇ! イフリータさん!」
「ほんとうにね エクリア」
「ふふ、ですねぇ」
2人が、静かになるならいいかと思い。
いくらなのかもわからない、金貨1枚をマスターに見せた。
「半分で支払いできますか?」とマスターに聞くと。
マスターの髭が笑う様な仕草をし。
「大丈夫ですよ。そんなに高くありませんから」と言った。
支払いは問題ないようだ。
金貨の金額は謎だが、今は考えても仕方ないだろう。
支払いの心配がなくなった俺は。当初の目的、冒険者ギルド受付に向かう途中、酔っ払いの話が聞こえてきた。
「にしても、貴族様の子供かぁ。どっかのお坊ちゃんみたいだな」
「あぁ、たまにくる、あいつみたいな」
「あれは、ただのお坊ちゃんじゃないだろ。変態のお坊ちゃんだ!」
「ちげぇねぇ」
ゲハハハハ。
酔っ払いが、どこぞのお坊ちゃんを笑い物にしていた。
ダァン!!
なんだ!
音がする方を見ると、ギルドの受け付け嬢が受付台に、片足を乗せていた。
「てめぇら! うちの客になに喧嘩売ってやがんだ! 酒の代わりに、てめぇらの腐った口に、この刀突っ込まれてぇか!」
受付嬢は太ももを、さらけ出し受付台に片足を乗せ、刀を構えていた。
なんて、美しい脚だ! ゴクリ。
黒光するパンスト、受付台に足を乗せる事で、際立つ脚の引き締まり、パンストの上からでもわかる程に鍛えられた筋肉! これはこれで、ありだな!
そして受付台の上に足を置くからか、ちゃんと靴を脱いでいるのが! これまたポイント高いぞ!!
「はは、冗談だよクレアちゃん」
受付嬢は、刀をしまい足を下ろし靴を履いた。
「ふん、わかりゃあいいんだよ」
(ふぅ。太もも堪能は終わりかぁ。さてあの、カッコ美しい、お姉様に話を聞くとするか)
俺は冒険者ギルド受付に向かった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。