第147話 ネル団長の願い。
「クライヴ団長。いくら予定時刻を決めてないとはいえ、遅すぎるのではないかの。ネル団長は何をしておるのか」
「ライナー殿の心配は当然でしょうが。我々は待つしかないのですよ」
「そうですな……」
「クライヴ団長! 敵陣を!! 敵陣を見て下さい!!」
「ふっ、ようやくですか、ネル団長も、じらしてくれますね。ぜんぐん!!」
「ち! ちがいます! クライヴ団長! 森は燃えていません!」
「なんだと! ではなんだ……なんですか、あれは。ネル団長の部隊が……はくぎんに、ひざまずいているだと……どうなっているのだ……」
えぇと、なにこれ? 背後の森から敵が現れたと思ったら、みんな、ひざまずいてる?
それに何だか、みんな、衣服がみだれてるし、顔が赤いし? 息づかいもなんだか、いろっぽい気がするな?
【んはぁ、んはぁ、んんんん、かぁはぁぁ。クッ……】
ザッザッザッザッ。
「旦那様。ご覧のように、敵はすべて、手なづけておきましたわ」
「クイーンだったか。では、この者達が、森に火を放つ部隊だったか。よくやったぞクイーン……」ん? あれは!!
「クイーンおねぇさま……なんなんだ、あの変な仮面の奴は、あんなのほっといてさ、ベッドで続きをやろうじゃないか」
「ふふ、ネル。口には気をつけなさい。あのお方が、我々のダンナさま、なのですから」
「へ……あのへんな……おかたが、ダンナさま……ですか」
おもいっきり変と言ってるが……いやそれよりも、あのクイーンにじゃれついているのは……
夢で見た、クールクノイチ、ネル団長! 衣服が破れてるし、網タイツもやぶれ、生足が!! いったい森の中で何やってたんだ!
それより続きはベッドってなに!!
ダダダダダ!! ザザザ……
「ダンナ様! 大変申し訳ございません。クイーンおねぇ様の妹にさせてもらいました。ネルと申します。これからよろしくお願いします」
「いもうと……あのクイーンさん。これは……」
「ふふ、私に、さからえないように、魅了しただけなんですが。なんだか私との相性が良すぎたいみたいで、奴隷みたいになってしまいましたの。私とダンナ様のものにすることに、決めましたので、私ともども、お願いいたしますね。ダンナ様」
「へ、あ、あぁ。わかった」あまりにも、他の奴らと違って、クイーンは、従順すぎて逆に調子がくずれるな。
「それとですね。旦那様」
「ん? なんだクイーン」
「ネルの部下は、一時的に魅了してるだけですから、ネルの頼みとして、国に帰して欲しいらしいのだけど、どういたしますか旦那様」
「ダンナ様。どうかお願いします。私の部下達は、帰してやってくれませんか」
「ふむ、そうだな」
団長のネルを失っただけで、あちらの連中は、こっちを恐れてくれるだろうし、こんなに多くの捕虜は必要ないか。それに捕虜が多すぎても大変だしな。
「そうだな。戦いが終わったら、ネルの部下達は、国に帰すとしよう。それに戦いが終わってからならば、ネルも国に帰ってかまわないぞ」
「いえ、大変ありがたいお話ですが。私は大事な作戦に失敗し、捕虜になった身。そして、本来ならば捕虜になるはずの部下達を自由にしてもらうのです! 団長の私まで、帰るわけには行きません」
「自ら捕虜のままでいたいと」
「はい、ダンナ様に、この身すべてを、ささげると誓いましょう」
「そうか、ならば、もうなにも言うまい。好きにするがよい」
「ありがとうございます。ダンナ様」
あのツンツン、クールクノイチが、ここまで、従順……ありだな!!
「旦那様、それで、次はどうなさるおつもりなのですか?」
「向こうの出方しだいで、やり方を決めるつもりだ」
「ふふ、この状況だけでも、かなりあせってるでしょうね」
「あぁ、向こうの作戦は失敗したのだからな。次は何をしてくるかだ。捕虜の者達は、安全な場所に避難させよ!」
【わかりました! みなさん、こちらですよ】ザッザッザッザッ。
来週、水曜日予定です。
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