第136話 賭け事におぼれる者は、すべてを失うかも知れません!
「それでは、まずは自己紹介をいたしましょう。私は、この辺りの領地を、国王シュバルツ様より任されております。ルージュ・エリザベートといいます」
国王シュバルツ、確か俺が転生してすぐ、勇者カイザーが、魔王討伐の知らせをしに向かっていたのが、王都レイトゥリア・シュバルツだったな。
その国の国王様って事だな。
「そして、この子が、私の護衛をしてくれている」
「リンク・ルーセントといいます。先ほどは、取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。白銀様」
「いえ、こちらの、言い方が悪かったのです。気にしないで下さい。リンク殿」
「ありがとうございます。白銀様」
メイドのイフリータ、村の護衛ジェリー、付き人エクリアなどを紹介した。
「そして、私が女狼族の里で、国王になった白銀といいます。隣の領主と国王、これから仲良くしたいものです」
ダン!
「ふざけるな!! 一方的に、我が領地に侵略しておいて!! なにがなかよくだ!!」
まぁ、リンクが怒るのも無理はないが、こちらとしては、戦いたくもないからなぁ、無理矢理にでも、話をまとめるぞ!!
「くっ、なぜ何も言わぬ!」
「リンク、おやめなさい」
「ですが、ルージュ様……いえ、申し訳ありませんでした」
「白銀様、リンクの無礼をお許し下さい」
「いえ、すべてこちらが原因ですから、何の問題もありませんよ」
「ありがとうございます。それで、先ほどのお話ですが。なかよくと、おっしゃられましたが、領地は返していただけるのですか?」
「えぇ、我々は、領地を奪ったつもりはありません、誤解をまねいてしまい、申し訳ありません。ルージュ殿」
「白銀様、頭を上げてください」
ふっ、国王が頭を下げる、これほど効果的なものはないだろう! リンクのあいた口がふさがらないほどだ! かんぺきだな!
「リンク、どうやらあなたの負けみたいよ」
まけ?
「ありえない、あんな盗賊のような、ギルドふぜいに、このわたしが、まけただと……ははははは」
「えぇと、これは、いったいルージュ殿? リンク殿が、魂の抜け殻の様に、真っ白に燃えつきているようですが」
「申し訳ありません白銀様、実は、我々が雇ったギルド、ドラゴンの牙が、そちらのジェリーさん相手に、何もできずに、逃げ帰った時の話なんですが」
「はぁ?」
「いやぁ、すみませんねぇ、領主護衛隊、隊長のリンクさん。私達も努力はしたんですが。なんせ、あいてがあんなバケモノとは聞いてませんでしたので」
「何がすみませんだ! それでも、ドラゴンを倒したギルドか! 第一貴様ら、衣服だけボロボロで無傷ではないか! どうせ自分で衣服を破り、村にも行かず、何もせずに帰ってきたのだろう! そんな奴らに残りの報酬など払えるわけなかろうが!!」
「ひどい! わたしいっぱいケガしたのに!」
「あんなに痛かったのに!」
「ケガは、相手の国王様が治してくれただけなのに」
「は! 言うに事欠いて、侵略者の国王が、ケガを治すだと、ふざけるのも、たいがいにしろ!!」
「だ、だってねぇ」
「ほんとうなのに」
「まだ言うか、もう話す事はない、とっとと帰るんだな」
「そこまで言うなら、私達が言ってる事が本当かどうか、賭けをしないか、領主護衛隊、隊長リンクさん」
「かけだと、くだらん」
「おやぁ、そこまで言っておいて自信がないんですか。護衛隊隊長リンクさま」
「ふっ、戦の前祝いだ、受けてやる。私の全財産をかけてな!」
【おぉぉぉぉぉぉぉ!!】
「そうこなくちゃ!」
「それで、貴様らは何を出すんだ。私の全財産は、名のある武具に土地、全て合わせれば、大聖金貨5枚《5せんまん》にはなるぞ」
「さすが、田舎とはいえ、領主の護衛隊、隊長殿、金持ちだな」
「けど、どうすんのさ。そんなお金、私ないよ」
「ふっ、貴様らに釣り合うものがないなら、賭けなぞできぬぞ」
サッ! キラン!
「何寝ぼけてんだてめぇら。私達には、国王白銀様にいただいた、これがあるだろうが! ブルードラゴンのウロコ、しかも無傷の上等品だ!」
「なんだと! ドラゴンのウロコだと!!」
【確かに、ドラゴンのウロコなら問題ありませんね!】
「同じ価値かはわからねぇが、前に見たドラゴンのウロコは、小くても大聖金貨1枚の、ね、がついていたからな。このウロコは、それよりも10倍はでけぇ、しかも無傷で、青くかがやいている! 価値は未知数だ!!!」
「な、何を寝言を言っているのだ、そんな物が本物なわけが、あるはずなかろう」
「間違いなく本物だ。これから行く、侵略国家国王、白銀様に確認してみてくれよ。あの方ならば、証明して下さりますよ」
「ふっ、ありえんな。まぁいい、きさまの嘘などすぐに、あばいてくれる」
「楽しみにしてますよ。ルージュ領主、護衛隊隊長リンク様」
あの、ギルド、依頼の失敗で、どんな罰をうけたかと思ってたが、さすがにドラゴンを倒したと言って、仕事をしていただけあって、しぶといな。
てか、誰が侵略国家国王だよ!! 人聞きの悪い!
「それで、白銀様、あのウロコは」
「あぁ、間違いなく、そこのブルードラゴンのウロコだ」
「なんならいるかい、お嬢さん。白銀様には、貸があるからね。1枚も2枚も変わらないし、あげるよ」
【ほんとうにドラゴンがはなした!】
「おどろきましたね。まさかドラゴンが話すお話も本当だったとは、これでは賭けは完敗ですね。ここは、お言葉に甘えて一枚もらいましょうか。よかったわね、リンク。これで、あなたの全財産を渡さなくてもすむわよ」
「何を言っているのですかルージュ様!!! たとえ全財産を失おうと、侵略者のなさけなど!」
「あなたのコレクション、今では手に入らない物もあるから、もうお金では手に入らないかもね。たしか、お気に入りで、一緒に寝てる子達は、ねこ丸に、氷輪月花だったかしら?」
「ねこまる!! ひょうか!」
ねこまる? 氷輪月花? どんな物か、普通に気になるな。
まぁ、とりあえずブルードラゴンのウロコで、和解できそうだし、無理にでも受け取らせるか。
「今度からは、相手の挑発に気をつけるといい」
「ぐっ! いや、やはり、受け取るわけには……」
んん、あと、ひと押し足りないか。ん? エクリア?
「おや、リンクさんは、ねこ丸を見捨てるのですか。一緒に寝るほど可愛がっていたのに。そんなに、自分のプライドの方が大事なのですか! 薄情な方ですね!! けっ!」
「なんだと!」
「まぁ、あなたのような冷徹な方に飼われるより、もっとふさわしい方が、ねこ丸を大事にしてくれますよ。これからは、安心して自分のプライドと寝る事ですね」
「うっ」
エクリアの奴、いい事いってるが、完全に勘違いしてるな。ねこ丸は、猫じゃない、武具だ。
てか、氷輪月花も、話題にしてやれ。
「うっうっうっ、わたしだって、わたしだって、ねこ丸と、わかれたくなんてないよぉぉぉ!!」
なかせた……いや、ひょうかも、思い出してあげて。
「でしたら、素直になり、あの仮面男の手から、ブルードラゴンのウロコを受け取るのです!! そしてねこ丸を! 守るのです!」
「ひゃあい、今からでもいただけますか。白銀様」
「あぁ、問題ない。受け取るがよい」
「ありがとうございます。白銀様」
「よかったわね。リンク」
「はい、ルージュ様」
はぁ、お堅そうなリンクには貸しを作れたし、これで、和解に近づけたかな?
来週の水曜日予定です。
更新遅いのに、読んでくれてありがとうございます。