第131話 契約は一方的にするとトラブルになることもあります!
ズシィィィン! ズシィィィン! グルルルルル!!!
「は、は、はぁぁぁぁ!! マジで青いドラゴンじゃねぇか!!」
「ふふん、どう、驚いたでしょ、ご主人様」
「あ、ぁああ。魔法で作り出した竜じゃなく、本物のドラゴンだからな。男なら誰でも興奮するさ」
「なら、そんなに離れてないで、さわってもいいのよ」
「さわる! 大丈夫なのかドラゴンだぞ」
「問題ないわよ。わたしのペットよ。エクリアだってさわってるでしょ、ほらあれ」
さわさわ。
「ほほう。ゴツゴツしていますが。なかなかに、キラキラとしたウロコもありますね。ファンタジーならば、高く売れるのでしょうが。異世界では、どうなんでしょうか?」
「は、はやいな。エクリア」怖いもの知らずにも程があるだろ。だが、触れるなら、さわりたいよな。ゴクリ!
ザッザッ、グルルルルル!
「お! 頭を下げたぞ。なでていいってことか?」
「ふふん、ケモノでも、さすがにドラゴンだけあって、誰が偉いかわかるみたいね」
デカい目で見られてるが、さわっていいんだよな。ゴクリ。
さわさわ。
「おぉ、ワニ皮よりも、ツルツルゴツゴツしてるな。なるほど、この硬い体で、攻撃を防ぐわけだな」
【あなた様に、お願いがあります】
「ん? だれだ? どこからこえが?」
「あ! こら、ペットの分際で、なに勝手にご主人様に話してんのよ!」
「へ? ペットが、はなす?」
【はい、話しているのは、目の前のドラゴン、私になります】
「ドラゴンが人の言葉話すのか!」いや、定番だが。この見た目で話されると、違和感すごいな。
【おどろかせ、申し訳ありません。ですが、あなた様が、この辺りの人間の中で偉いのが、わかりましたので、話す事にしたのです】
なんだ、やたらと、真剣に話してるが、何があるんだ?
「確かに、わたしは、この辺りの国王だが、なんの頼みがあるのだ」
【なるほど、国王でしたか。それならば、悪魔の子が従うのも、うなずけます】
「あくまのこ? なんのはなしだ?」
【この赤毛の少女の事です】
「だれが悪魔の子ですって! でかいトカゲのぶんざいで!」
【あなたですよ。あなた】
「えぇい! うるさいわよ! あんたは私に負けたんだから、わたしのものなのよ。黙ってなさい! 青トカゲ!」
【我は、この辺りをすべる者! 負けたからといって、従い続けるなど、ありえぬ】
「なにがすべるよ、モンスターを野放しにしといて! 私が倒してやってんじゃないの」
【我は、土地を守っているにすぎぬ、モンスターを殺すのは我の使命ではない】
「ふぅ、よくわからないが。なんだか、イフリータが迷惑をかけたようだな」
「なっ!」
【話のわかる、主人で助かります】
「イフリータ、契約を解除して、ブルードラゴンさんを自由にしてあげろ」
「ふん! 契約なんてしてないんだから、どこえでもいけばいいでしょ!」
「ん? ちょっとまて、契約なしで、どうやって言うこと聞かせてるんだ」
【それは、わたしが話しましょう。あれは、わたしがモンスターの異変を調査していた時のことです】
モンスターのいへん? なんの話だ?
ザッザッ。
【おかしい。モンスターが1匹も居ないどころか、気配すら感じられない。これではまるで、勇者が通った後のようだ。だが勇者カイザーは死んだはず。ならばだれが】
「みょうな気配があるから来てみたら、これは中々の大物じゃないの」
【こえ! 人の声がすると思えば、こんな森の奥に子供】
「へぇ、人の言葉が話せるドラゴンなんて、中々にレアじゃないの」
【そういうあなたも、ただの子供ではなさそうですね】
「ふふん、まぁね。まずは、あなたの疑問に答えてあげるわ」
【ぎもん、ですか?】
「この辺りのモンスターは、私が全て殺したのよ」
【な! そんな事が、あの勇者ですら、根絶やしには、できなかったのですよ】
「まぁ、正確には、モンスターが、わき出るたびに、燃やしてるだけだから、根絶やしとは少し違うわね」
【信じ難い話ですが。こんな闇に包まれた、森の奥に、普通の子供が1人で居るはずもありませんね。それで、あなたがモンスターを殺している者だとして、わたしに何か用があるのですか】
「ようってほどじゃないんだけど、あなたには、私のペットにでも、なってもらおうと思ってね」
【ペット? たしか人間が動物を】
「そうよ! 人の言うこと聞かなかったら、ムチで叩いて! 理解するまでなんども、なんども! 叩かれて、人の言う事を聞く存在になる! それがペットよ!」
それはペットじゃないだろ!
【なにやら、わたしの聞いた話と違いますが。私に、そんな事をしている暇はありません】
「あら、ざんねんね。それじゃあ、力ずくで行かせてもらうわね」
【あまり森を壊したくないのですが。仕方ありませんね。濁流に抱かれ永遠の航海に旅立つがいい!『琉水球タイダルスクリュー』】
ザババババ!!!
「へぇ、やるじゃない。水のない場所で、それだけの水を出すなんて、さすがね。それなら私はこれくらいかしら」
ボッ!
【なんのマネです。人差し指に、炎を灯したりして】
「こうするに決まってるじゃない、ふっ!」
ふわふわ。
【そんな、炎を飛ばして何がしたいのです。私の濁流にのまれ、すぐに消えるだけ】
「えぇ、すぐに消えるわよ。あなたの水がね。
【なにを、いって】
ボッ! じゅっ! ぶしゃぁ!! シュ……
【わたしの水が、あんな火に、まけるはず】
「さぁ、お次は、言うこと聞くまで、1枚2枚3枚4枚と、ウロコを焼いてあげましょうか」
【な! やめなさい! やめるのです! それ以上近づくんじゃない!! ギャァァァァ! コホン! とこんな所です】
「イフリータ……やいたのか、ウロコ」
「焼くわけないじゃない、焼く前に気絶しちゃったのよ」
気絶してなかったら焼いてたな。
「うちのメイドが、すまなかったな。ブルードラゴン」
【解放していただけるのであれば、問題はありません】
「そうか。そう言ってもらえると助かるよ。イフリータかまわないな」
「ふん、ご主人様が言うなら仕方ないわね。悪かったわね。弱い者いじめなんてして、あんたは自由よ、好きな所に行きなさい」
「おまえは」
【いえ、負けたのは事実ですからかまいません。それより、私に何かさせたかったのですか?】
「あぁ、あっちで、戦いが始まってるみたいだから、ブルードラゴンに乗せてもらって、連れて行ってもらおうと思っていたんだ」
【そう言うことでしたら、自由にしてもらったお礼に運びましょう】
「いいのか!」
【はい、どうぞ背中に乗ってください】
「じゃあ。お言葉に甘えて、よいしょ」
「でわ。わたしも、ほほう。なかなか高いですね」
「エクリア、お前も来る気か」
「えぇ、人の戦いを見届けるのも、わたしの役目ですから」
そんな役目、初耳なんだが。
【それでは、参ります】
「あぁ、頼む」
バサ! バサ! バサァァァ!
来週、水曜日予定です。
ブクマ、感想、ありがとうございます。
こんなに、更新が遅く長い話を、今年も読んでくれて、ありがとうございました。
よければ、来年もよろしくお願いします。
それでは、良いお年をお迎えください。