第120話 寝てる時は無防備です。
あらすじ119話
フェンリは、自分がフェンリルである事を、女狼族に話してしまったが、特に問題にはならなかった。
ただ問題は、女狼族おさのヴィルディースにはめられ、女狼族国王になる話は、残ったままだ。
逃げるのも考えたが、仲間が里で、くつろいでいたので、俺は里を見て回る事にした。
イフリータ、エクリアは、酒で釣られていた。
そこに無邪気に満喫しているタヌヌが、巨大なシャケを抱きし現れた。
どこで魚を捕まえたのか、タヌヌに話を聞くと、近くに川が流れていたようだ。
森ばかりに目を奪われていたが、巨大魚が泳げる川まであるようだ。
せっかくなので、タヌヌに教えてもらった川に向かった。
里から10分歩いたところで、川の音と、大きな水音がし、音がする方に向かうと。
聖剣のエクスが水浴びをしていた。
つい隠れ、聖剣とは思えない、美しい体をながめていたが、エクスに、すぐにバレてしまった。
エクスに、ハシタナイ物を見せてしまい、逃げるように、エクスから離れた。
慌てていて、適当に移動した場所は、畑だった。
畑では、クイーンが野菜をたんのうしていた。
野菜を作っているのは、農産物の天才。ラヴィット族との事だった。
残るはエルザだ、里は小さいので、エルザの居場所は、女狼族に聞いてすぐにわかった。
エルザは、魔王の娘だけあって、俺の考えはお見通しだった。
みんなの様子を見て、女狼族の国王になる事を決めた。
俺は、女狼族の王になる事を決心し、女狼族の長であるヴィルディースに、その事をつたえに来ていた。
が、俺は衝撃の事実を聞かされていた。
「えっとヴィルディース今なんて言ったんだ」
「ですから、白銀様は、すでに我らの王である契約を交わしていますので、とくに儀式はありませんし、手続きも終わっています」
王のけいやく? 俺が王と呼ばれてから、まだ1日しか経っていないんだが、いつ契約なんてしたんだ? 記憶にないぞ……
「何を言っているんだ、ヴィルディース。私はまだ契約などしていない。なんの話をしているのだ!」
ピラ。
「何と言われましても、王になる証として、こちらにサインと拇印があるではありませんか」
「そんな物書いた覚え……えっと。王になり、女狼族領地を守護する契約書? サインこれか……」
この字はあきらかに、俺の字じゃない! が、今気がついた、紙を持つ俺の親指が赤く染まっている!
「それに、見届け人として、エクリアさんも居ましたから、間違いありませんよ」
エクリアだと! なおのこと覚えてないとおかしいだろ!
完全に記憶にないって事は、これは、おそらく俺が寝ている隙に、押されたものだ! たぶんこんな感じだな。
「なぁヴィルディース、本当にやるのか? 白銀様、寝てるんだぞ」
「仕方がありません。白銀様は、まだ迷われていました。ここは、既成事実を作り、最後の一押しです」
「はぁ、気がすすまねぇが仕方ねぇか。すまねぇな白銀様。ほらよヴィルディース体起こしたから、白銀様の手で書けよ」
「白銀様、失礼いたします」
カキカキ。
「できました。白銀様のサインです!」
「んん、ヴィルディース。本人に書かせる必要があるのはわかるが。字、汚すぎるぞ」
「やはりですか。人の手を動かして字を書くのは難しいですね」
カツカツカツ。
「どうかしたのですか? みんなして?」
「これはエクリアさん。実はですね。白銀様に契約してもらいたかったのですが。寝てしまったみたいで」
「なるほど、約束を忘れて寝るなんて、失礼な人ですね」
「はは、サインは書いてもらったんですが。寝ぼけていて、字が汚いんですよ」
「確かにこれは、一般人にはわからない。芸術家たちが。これは、たいへん価値がある物ですよ! 一般人にはわからんだけです! とか騒ぐレベルでラクガキですね」
「はは、よくわかりませんが。そんな感じです」
「でしたら、こうすれば寝ていても問題ありませんよ」
ピチャ、ガサガサ、ギュギュ!
「これで指紋がついたので、サインの代わりになりますよ!」
「おぉ! これならば本人の物と判断できますね!」
「やったなヴィルディース。これで契約成立だ!」
【ありがとう。エクリアさん!】
「なんのなんの、困っている人を助けるのが、私の仕事ですから」
エクリアのやろう!!
「あ! そうですね。どうせ覚えてないのでしたら、やる気になってるんですし、もう一度書かれますか? 代わりなら何枚でもありますので」
そう言ったヴィルディースは、紙の束を台の上に置いた。ドン!
さすがヴィルディースだな、用意がいいな……てか王の契約書が何枚もあっていいのか!
まぁ俺の名前の下に、ヴィルディース達の名前もあるから、他の奴が盗んで書いても意味はないか。
まぁ手続きが終わってるなら、それでいいか。
「これで王になってるなら、このままでいい」
「わかりました。白銀様。これで白銀様は、正式に女狼族領地の国王様になります」
おうかぁ……ん?
「……それでヴィルディース」
「はい? なんですか」
「やたらと俺を王にしたかったみたいだが。王である俺は、結局、何をすればいいんだ。里を守ればいいのか?」
「そうですね。白銀様を選んだのは国を守る力を嗅いだからなんですが」
かいだか、前にも言ってたな。犬だし賢者の石の魔力に、ひかれたんだろう。
「すでに白銀様のおかげで里は平和ですから。今やるべきは、領地の者達に挨拶回りでしょうか」
「挨拶回り? 王なのに俺が挨拶に行くのか?」
「そうですね。普通ならば、領民が新しい王に、挨拶に来るのでしょうが。領民には戦えない者も居ますので、村の外に出るのは、難しいのです」
「そうか。今はモンスターが襲ってくるからな、むやみやたらとは、村から出られないのか」
「はい、あとは、ついでで申し訳ありませんが。白銀様の挨拶回りに、護衛とは別の部隊を同行させていただきたいのです」
護衛か、まぁ居た方が助かるな。
「それで同行する部隊ってなんなんだ?」
「農村などの警護部隊になります。白銀様に増やしていただいた領地には、まだ警護部隊を配備していませんので、モンスターに農村などが襲われると、農村の者では、対処できませんので、我らが対処しているのです」
「そう言う事なら問題ない。俺のせいで迷惑かけるなヴィルディース」
「迷惑ではありません。領地が増えたのですから」
「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃ村を回る準備をしてくるよ」
「わかりました。白銀様。里の出口でお待ちしております」
ヴィルディースと別れ、とりあえずイフリータを見にきたが……。
「むにゃむにゃヒック! ごしゅじんさまぁ。明かりは消さなくてもいいのよ」
やはり酔って寝てるよな。てか変な夢見てんじゃねぇ! 叩き起こしても怖いし、イフリータは里の護衛に残しとくか。
えぇと、他は誰を探すか、お? フェンリが女狼族に囲まれてる。
「へぇーんしぃん! ぜあ!」
シュパン!
【おぉ! フェンリさんが、フェンリル様の姿に!】
「しかも家と同じくらい、大きいですわ」
「こんなに大きなフェンリル様、初めて見ました」
「ふふん、最近はサイズの調節にもなれましたからね、自由自在ですよ!」
【おぉ!!】パチパチ。
フェンリが居たら、移動が楽そうだし、もしもの時は逃げるのも速いから、フェンリで決まりだ。
ザッザッ。
【白銀様!!】
「あぁ、そのままでいいよ。フェンリに用事だから」
「わたしですか?」
「あぁ、フェンリ、散歩に行くぞ」
「散歩ですか! 白銀様。おともします!」
「じゃあ、行くぞ。フェンリ!」
「はい! 白銀様」
【お気をつけて!! 白銀様、フェンリさん】
来週の土曜日予定です。
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