第108話 女狼族の立国《くにをつくる》? 国王誕生!
あらすじ107話
奴隷解放のお礼に、女狼族の里に来たが。さっそく問題だ。
女狼族の里では、召喚獣失踪事件を調査する部隊が、女狼族の里を占領していた。
調査隊の隊長は、ジャンヌ・ダルクだ。純白の鎧に、金の髪、凛々《りり》しく美しい隊長様だ。
まぁそんな美女からは、痛い奴を見る目で見られてしまったがな。
何故なら!俺は今、外れなくなった呪いの仮面!
もとい古代の英雄白銀の仮面を付けているからだ!
長のヴィルディースが、里に帰ってきた事で、里の女狼族が集まり喜んでいた。
ジャンヌ隊長に喧嘩を売っていたクゥリュアと、長ヴィルディースが、今後の事を話しながら、俺を見ていたが。
俺には、意味がわからなかった。
再会の挨拶が終わると、ヴィルディースから、里から出ていけと、遠回しにジャンヌ隊長は言われて、あやまっていたが。
ヴィルディースは「詫びて許される問題ではない」とジャンヌ隊長を牽制していた。
こんな時は、さっさと帰すべきだと思ったが。召喚獣失踪事件の原因を作った俺には、何も言えなかった。
ヴィルディースの条件は簡単だ。
今後いっさいフェンリル神像の調査をしないと、契約する事だ。
簡単だが。調査を国王から頼まれたジャンヌ隊長は、多勢に無勢の状況でも、戦う事を決断した。
ジャンヌ隊長は、ある方から力を貰ったから、強いと言うだけあって。
生身でモンスターと戦える女狼族のクゥリュアを圧倒していた。
2人の戦いは、早くまったく目で見えなかったが。突然ゆっくりになり、胸の揺れ、蹴り上げられた太もも、汗の結晶が飛び散る瞬間まで見えていた。
ヴィルディースが、ジャンヌをクゥリュアに任せて、ジャンヌ隊長以外を倒す話をしていると。
クゥリュアの腹に、槍がゆっくり近づき、突き刺さったが。
腹から血は出ていなかった。ジャンヌ隊長は、槍を逆手に持ち、刃先のない、槍の持ち手を、クゥリュアの腹に突き立てていた。
1人だけ強くても勝ち目はないのに何故戦うと言われて。
ジャンヌ隊長は「何もせず逃げる事は、神の意志に背く事になります。行動する事で、神様は、我らを導いて下さいます」と話していた。
戦う事が決まり、戦いの邪魔になるからと、気絶したままのクゥリュアを退かす様に、ジャンヌ隊長に言われたヴィルディースは、言われた通りクゥリュアを救護した。
クゥリュアの救護後中、ジャンヌ隊長は、何もしないで見ていた。
ジャンヌと女狼族の戦いか。俺は安全な場所で見学でもするか。岩の影……簡単に壊れそうだな。見晴らしのいい場所の方が、何かあっても避けれるかな。ん? 何だこれ。
戦いに夢中で、気がつかなかったが。右上に文字が浮かんでる?
えーと?『精霊神の仮面オート機能発動』
『神の瞳ディオ・アイン』、ジャンヌとクゥリュアの戦いが、ゆっくりになった理由は、これか? 説明が書いてるな。
『精霊神の仮面』
『神の瞳ディオ・アイン』発動条件、装備者の目で追い切れない異常な動きを感知すると、自動的に発動します! どんな光速の世界も、カメの如く遅い世界に!
そして速度調節は、操作パネルでできちゃう優れもの!
まだまだありますよ! なななんと! 殿方が夢見る停止ボタンも備え付けてございますので、お楽しみのムフフにもお答えしちゃいます!!
すごいんだが……なんだこのふざけた説明は。ん? 下にまだ書いてる。
開発者チェルシーちゃんより購入者の皆様に愛を込めて、毎度ありがとうございます! 次回作もよろしくね!
なんでチェルシーだよ! この仮面作ったのはイフリータだろ! てか俺買ってないし!
あれ? 買わずにイフリータが作ったんだから、もしかしてこれ違法コピーみたいなものかな……読まなかった事にしよう。
けどチェルシーは、頭はおかしそうだが。顔を作り変える、フェイスチェンジポーションに。
ペガサスを呼び出し、移動できるアイテム、ペガサスのみちしるべ。
どれも貴重なアイテムを作ってるんだよなぁチェルシー。毎回説明は、ひどいけど……。
「コホン。本来ならばジャンヌ殿が帰ってから紹介するつもりだったが。他国との戦いは、重要な問題のため、先に紹介する事に決めた!」
ん? なんだ? 長のヴィルディースが里の皆に、真剣に話してるぞ?
「我らは、自分達の領地を守るため、国を作る事を決め、主人に相応しい、お方を探していた!」
【やっぱり! あのお方ですか!】
「あぁ、我らの王は! この方だ!」
おう? 長以外にも、偉い人がいたのか。どのひと……なんで俺を見るんだ……。
「あの、ヴィルディースさん。これは何の冗談だ?」
「冗談ではない。我らは本気なのだ。古代の英雄白銀様」
【素晴らしい名です! 国王白銀様!】
この状況で! その名をフルネームで呼ぶんじゃねぇ! 調査隊が騒いでるだろうが!
「おい聞いたか! 国に属さない女狼族が国を作るって」
「うん。それに、あの変態仮面が、噂の英雄白銀様だって、本当にいたんだ」
「言われてみれば、確かに異様な雰囲気があるような……へんたいのような?」
ジャンヌ様も怖い瞳で睨んでる!
「古代の英雄白銀様ですか。噂は聞いていましたが……」
なんだ? ジャンヌ隊長が疑いの目で見てる。
「うわさでは、重厚あふれる仮面を被る。大男と聞いていたが。あなたの、細身に、きらびやかな仮面は、うわさとは似ても似つかないのだが……」
どんな噂、流してんだライザ団長の部隊は! 重厚ってなんだよ! バケツ仮面だろうが!
「仮面は、わたしにとって服のような物だ。違う物を付けていただけで意味はないのですよ。大男と言うのは、心当たりがないが。私が魔王の部下を倒した事で、噂が一人歩きしたのでしょう」
「そうでしたか。女狼族の鼻をごまかせるとも思えませんし。今はうたがっても仕方ありませんね」
「そうしてもらえると、助かります」
「それでは、本題に戻りますが。白銀殿が女狼族の国王になり、新たに国を作ると、おっしゃりましたね」
いや、俺は、そんな話聞いてないんだが。けど……この雰囲気は、何を言っても信じてもらえないよな。
はぁ、白銀様の変装が使えなくなるし、ここは白銀様として振る舞うか。
「先ずは、女狼族の立国。そして新たなる王の誕生を祝わせて頂きます。国王白銀様」
「ありがとう。ジャンヌ・ダルク隊長」目が怒ってるんですが!
「突然の事で、何も手見上げもなく、申し訳ありません」
「かまいませんよ。仕方のない事ですからね」
「ありがとうございます白銀様。それで、本題ですが。国王様の誕生と言う事で、改めてフェンリル神像の調査依頼をしたいのです」
「とりあえず話を聞こう」
「我らは正式な手続きで、フェンリル神像の調査を依頼していたのです。そして、これは女狼族が依頼を受け入れた、書類になります」
「我らが奴隷になった時、無理やり書かせた物だろうが! 白銀様! 騙されないで!」
「なんとでも、おっしゃってください。我らは国王の名で来ているのです。それに私は、女狼族国王である白銀様と話しているのです」
【白銀様!】
ふぅむ。戦いたくはないから、調査させてやりたいが……。
フェンリル本体は、フェンリル神像の外で動き回ってるフェンリだから、調査しても無駄だしなぁ。内容だけでも確認するか。
「つまり、フェンリル神像が修復できれば、大人しく帰るのか」
「えぇ、その時は大人しく帰りましょう」
「それで、フェンリル神像を修復するのに、何時間かかるのだ?」
「そうですね。調査員の話では、5年はかかるかと」
【ふざけるな! 5年も居座るなら! 事実上の侵略だろうが!!】
ふぅむ。これは、修復できる見込みがないから、ジャンヌ隊長は、適当な年数言ってるんだろうな。本当に侵略と変わらないな。
「はぁ、悪いですがジャンヌ殿。そんな適当な話では、調査の許可を出せと言うのは、無理に決まっている」
「やはりわかりますか。でわ。交渉決裂と言う事で『神の使命を拒む者には罰を与えねばなりません。女狼族国王、白銀を捕縛せよ!『裁きの牢獄ジャッジメント・プリズン』」
ズガガガガガ!!
「な! これは!」地面から天に登る光の柱!!
「卑怯ですわ! 奴隷の時と同じで、まただましうちですの! 交渉とか言っておきながら、魔法を唱えてましたのね!」
「こんな手に、何度も引っかかる。あなた達が悪いのです」
似たやり方で、女狼族は、奴隷にされたのか。
【今助けます! 白銀様!】
「光に触ると黒焦げになりますよ」
「人間の言う事なんて聞きませんわ!!」
「まて! みんな! その光に触れてはいけない!」
「なんでですの! ヴィルディース!」
「先程のクゥリュアを救護する時に、ジャンヌ殿は、手を出してこなかった」
「それがなんですの?」
「ジャンヌ殿は、我々を殺したいとまでは思っていないのだ。誰かを殺すと、互いに死者が増え、小さな争いが、次第に巨大な争いになってしまうのだから」
「だからって、これでわ。また奴隷になってしまいますわよ! ヴィルディース!」
「今は、国王様を信じるのです」
【白銀様!】
信じると言われてもなぁ。俺の周り、光の柱だらけで、抜け道ないんだが。どうしろと。
次は来週木曜になります。
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