第106話 失われた召喚獣フェンリル
あらすじ105話
エルザが話してます。
人間のエルザを守る役目を終えた私は。
ユーリ達と女狼族の里に向かう事にした。
馬車の旅の最中、ユーリが穴の空いた、見るからに普通のバケツを取り出し眺めていた。
穴の空いたバケツで、何するのか気になっていると。エクリアがユーリに聞いた。
どうやら、ユーリはバケツで変装するみたいだ。
意味がわからない!バケツで何に変装するんだよユーリ!
エクリアにもバカにされていた。あたりまえだ。
だが、その会話で気になる話があった。
「お前だけには言われたくないぞ。エクリア! このバケツは白銀様として活躍したんだぞ!」
あのバケツで、ユーリが白銀になり活躍?
エクリアの話では、騎士団が、バケツ仮面を英雄と、勘違いするほどの活躍をしたようだ。
確かに白銀の名に聞き覚えがある。古代の英雄白銀。
私の町でも噂になっていたからな。魔王の配下マジェスティを殺した者、それが白銀だ。
驚きはない。白銀の噂があった町から来た英雄だからな。ユーリは。
私が、それ以上に驚いたのは、魔法でバケツの仮面を溶かし、強力な精霊神の仮面を作り出したイフリータだ!
形を変えるだけでなく、能力まで作り出すなど、あり得ない! なんだこのメイドは!
魔族である私の前で、魔王の配下マジェスティを殺した者の正体を明かしてしまった事に、エクスが気づいて、みんなに話すと、みんなが動揺したが。
私は元々、魔族だ人間だの戦いに興味がなかった。
女狼族の里が近づくと、みんな賑やかになった。
タヌヌが無邪気にはしゃぎ、可愛かった。
ただエクリアは、少し変わっている。会話の中で自分の事を「天使」とたまに言っている。
どこか痛い子なのかもしれないから、理由は聞いてはいない。
おもむろに、ユーリが、イフリータに作ってもらった仮面を付けたら、能力が増大していた。
道具を作り替えて、異常な能力追加、やはりありえない。
ただユーリは、喜んでたけど、仮面が外れなくなってしまった。
これは呪いだな。
イフリータは、自分では道具を使わないから、仮面が外れなくなる事を、忘れていたみたいだ。
ユーリは、諦めて仮面を付けたまま過ごす事にした様だ。
イフリータは、現実逃避したいのか、やけ酒を飲み始めてしまった。
里が近づくと、女狼族の長ヴィルディースが里の方角から、知らない人間の匂いがすると話した。
エルザの町から来た人間かと、聞かれたが。
私の町から派遣されていた部隊は、すでに撤収しているから、違うと伝えると。
安全な場所に拠点を作り、里に偵察部隊を向かわせる事にしたみたいだな。
女狼族の里に不審な匂いがあるとヴィルディースが言うので、調査する事にした。
メンバーは、女狼族の長ヴィルディース、同じ犬族のフェンリ。
そして、問題起こされたら困るので、行きたくはなかったが。俺の3人と、数名の女狼族を連れて行くことにした。
森の中を、ヴィルディースの鼻を頼りに、嗅ぎなれない人の匂いに近づいた。
「お、古屋が見えた」
「白銀殿。お静かに」
「あぁ、そうだな」
里と聞いた時にイメージしたまんまの、山里だな。
強いて言えば、巨大ないぬ? の石像があって、装置が繋がれてるな? なんだあれ? ヴィルディースに小声で聞いてみるか。
「ヴィルディース。巨大な物があるが、あれはなんなんだ?」
「あれは、我らの守り神様です」
「守りがみ? 守り神にヒモみたいなのが付いてるが、あれは何かの、おまじないか?」
「いや、我らはあの様な、罰あたりはしない」
「だよな……」なら侵入者の仕業か。
「白銀さん。怪しい匂いが近づいてきましたよ」
「ん? あれは、科学者みたいな連中だな。アイツらが犯人か」
「捕まえますか? 白銀さん」
「いや、フェンリ。しばらく会話を聞いてみよう」
「へい。わかりやした!」
フェンリの奴、誰に教わったのか、たまに変な返事してるな。まぁどうせ、エクリアが教えたんだろうな。
「へっぶじ! ずびび。誰ですか? 美少女天使エクリアちゃんの噂をしているのは! エクスですか?」
「目の前にいるのに、するはずないだろう」
「おかしいですねぇ? ユーリが呼んでるんでしょうか?」
学者みたいな奴らが、装置を触り出したな。
ピッピッピッ。ビビビ!!
「はぁ。何回やっても反応がない」
「何でなのよ! なんでフェンリル神像に魔力がカケラもないのよ!」
フェンリル神像! じゃあ、あの犬の石像が召喚獣フェンリルの神像。召喚獣フェンリルの魂が封印されていた神像って事か。
フェンリルを召喚した時に、聞いてもフェンリの奴、自分の事ろくに覚えてなかったからなぁ。
「で、フェンリは、どんな所に住んでたんだ」
「そうですね……おやぁ? どんな所でしたかねぇ? そんな昔の事は、忘れちゃいましたよ! ダンナ!」
「いや、今召喚したんだから、今さっきだろ。てかダンナはやめろ」
「了解しました!」
召喚した時から、なんか、天然が混じってるんだよな。フェンリの奴。
ピッピッピッ。ビビビ!!
「クソ! 早くしないと、女狼族の長達が帰ってくるぞ」
「わかってるよ。リーベルト領主の部隊が、女狼族の里を制圧していたから、フェンリル神像の調査する許可をもらえたんだから」
「里で、奴隷から解放された女狼族は『我らは長に従う』と言ってたからね」
「まぁ、噂では、女狼族は戦いを好まないらしいけど。他族の者を、里に近づけないのでも、有名だったからなぁ」
「そうなんだよねぇ。長の留守に、火事場泥棒みたいな調べ方してるから、さすがに何をされるか、わからないよ」
「そうだな。女狼族が奴隷になる前も、フェンリル神像の調査を依頼していたが、断られていたからなぁ。こんなやり方で、調査してるのを長が知ったら……ゴクリ」
「あぁ、だから! ヴィルディースが帰ってこなくてもぉ! 答えは出ているんだ! 人間風情が、いつまで我らの里に居るつもりだ!!」
「またクゥリュアさんですか。我々は、正式に許可をもらっているのですよ」
「それは、我らが奴隷になっている時に、無理やり書かせた物だろうが! そんな物は無効だ!」
「それは、わかってますが。こちらとしても、このチャンスを逃すわけには、行かないんですよ!」
「なにが、チャンスだ! 我らの里の神に、妙な物を取り付けてるだけだろうが!」
「ですから、それは。なんども説明したように、召喚獣フェンリルが原因不明で、召喚できなくなったので、我々は調査してるのです」
フェンリル神像の周りに無数の魔法陣みたいのが出てるな。
あれで解決するのか? フェンリルの本体は、俺の横で、うなずいてるんだが。
「なるほどなるほど、どうやらあの、巨大なお犬様を生き返らせたい様ですね。白銀さん!」
「うん。間違ってないけど、あれの中身お前だからなフェンリ」
「あはは、よく分かりましたねユーリさん! 何を隠そう私がフェンリルです!」
「うん。しってる。他に俺が召喚する前の事、思い出したか?」
「はい、里のみんなが遊ぶ姿を、と言っても、私は普段あの岩の中から、みんなの暮らしを見るだけでしたから、思い出したのは、みんなとの思い出くらいですかね」
「そうか。それでも、思い出せたなら、よかったな」
「はい!」
ヴィルディースには、フェンリルの正体は、今は話さない方がいいよな。見るのに集中してるし。
ズダァン! うを地面が揺れた! なんだ? フェンリル神像のほう!
クゥリュアの足元の地面に足跡が……今の地震、地面を踏みつけておきたのか、なんて脚力だ。
「フェンリル神像の調査なら、我々は何度も断っている!」
「ですから! これは、国王の命令なのです!」
「貴様らの国王なぞ! しるか!」
「くっ……」
「我らの里は、どの国にも属していないのだからな」
「で、ですが。あなた達だって、フェンリル神像が力を失って、困っているのでしょう」
「ふん、困っているとして、貴様らに解決できるようには、見えないがな」
「それは……」
お! あれは! 純白の鎧姿の金髪美女!
「私の部下をイジメるのは、そのくらいで、やめてもらえますかな。クゥリュア殿」
「はっ! いじめられてんのは、どっちだよ。ジャンヌ・ダルク隊長さん」
「……」
ジャンヌ・ダルク! 本人て事はないだろうから。同名か? 架空のジャンヌ・ダルクしか知らないが、こちらのジャンヌ・ダルクさんも中々の美人ですな。
困った表情がまた、たまりませんなぁ! あれ? ジャンヌさんこっち見てる?
「クゥリュア殿も人が悪いですね。時間切れだとわかっているのでしょう」
「はっ! さすが隊長様だ。私達と違って鼻も良くないのに、よく気がついたな」
「あの、ジャンヌ隊長。じかんぎれとは?」
「はぁ。あなた達は、何をしているのですか」
「すみません。ジャンヌ隊長。まだフェンリルの原因はわかっておりません!」
「そうではない。王都の調査隊が、どれだけ間抜けなんですか!」
「そう言われましても、原因がわからなくて」
「そうではありません。我らは囲まれているのですよ」
【え!】
げバレた「ヴィルディースどうする!」
「敵には気づかれていますし、白銀殿。他の部隊は残し、我らだけ行くとしましょう」
「わかった。行くぞ。フェンリ」
「了解です! 白銀さん」
来週、火曜予定です。
ジャンヌ・ダルクを出すかは悩んでましたが、設定を考えていたので、出す事にしました。
農家の娘から隊長になったばかりのジャンヌ・ダルクになります。なので、まだ英雄にはなってない状態です。
更新遅いのに、読んでくれてありがとう。