第104話 魔王の娘エルザの半身。新たなる旅立ち。女狼族の里へ
領主の娘エルザを同行させるため、次の目的地の住民である、女狼族を呼び事情を説明した。
「この、エルザ様が、魔族で、人ではないと……」
「信じられませんね。我らの鼻でも、人の匂いしか感じ取れません」
「そうだよな!!!」
「どうしたんだエルザ? 大声出して?」
「いや、ユーリ。私の変装は完璧だったはずなのに……これだけの者に見破られていたのが。ショックなんだ……」
「たしかに、鼻のよい我ら女狼族ですら、誰も気がついていなかったのに、驚きましたよ。ユーリ殿」
「はは、偶然だよ」
まぁ俺は夢で、魔王の娘って、知ってたから、気づいたわけじゃないがな。
「はぁ、しかも子供のタヌヌにまで……」
「タヌヌ! タヌヌは、ご主人様から力を貰いましたから、普通の子供とは違うので安心してください! エルザさん!」
「そうだったのか。通りで強いわけだな。タヌヌ」
「タヌゥゥ」
「それで、ヴィルディース。この魔族のエルザが里に入るのは、問題ないかな?」
「エルザ様は、フレディー様を呼んで下さった命の恩人ですし。ここまで人間に変装できているならば、誰も気がつかないでしょうから、問題ありません」
「そうか。よかった」
「それに、ユーリ殿が認めた方ならば、問題ありません」
俺が認めなら問題ない?「よくわからないけど、助かるよ」
「ありがとう。ヴィルディース。これからよろしくね」
「はい、エルザ」
さてと、あとは、エルザにも、話を聞いとくか。
「問題が無くなったとこで、聞きたいんだがエルザ」
「なんだユーリ?」
「なんで人の姿で、人間のエルザになってたんだ?」
「そうだなぁ。簡単に話すなら、わたしは人間と魔族の子供なんだ」
「なに!」じゃあ、魔王と人間の子供になるのか。
「なるほど、だから我ら女狼族の鼻でも、わからぬほど、人間に化けれたわけか」
「そう言う事」
「で、それと人間に、化けなきゃなんない、理由って何よ?」
「それは簡単だよ。イフリータ。私は双子だったんだよ」
【ふたご!】
「じゃあ、もう1人のエルザも、半分魔族?」
「いや、あの子は、人間の遺伝が強いから、自分に魔族の血が流れている事も、私の事も知らないよ」
それは、寂しいだろうと思ったが、俺は言うのをやめておいた。
「それじゃあ、人間のエルザになったのは」
「もちろん! 勇者の死を知り、人間のエルザが危ないと思って、守るためだよ!」
「家族おもいな、魔族ですねぇ。イフリータさん」
「そうね。エクリア。半分人間なだけあるわ」
まぁ、エルザの親父は魔王だから、原因は魔王になるんだがな。
ただ、魔王は、人間との和解を望んでいたから、人間とは戦いたくないんだろうな。
「タヌゥゥゥゥ。ふわぁぁぁ」
「おや、タヌヌは、おねむみたいだな」
「タヌヌ……」
「私の話は、終わったし、寝るとするか。みんな」
全員が部屋を出ようとすると、エルザは、俺のベッドに横になっていた。
「さぁ、ユーリ寝るぞ!」
「何してんのよエルザ!!」
「仕方ないじゃないか。イフリータ。私は部屋がないんだから」
「だからって! ん? なにエクリアまでベッドに入ってんのよ!」
「いえ、ねむくて。部屋に帰るのが面倒なので、この部屋で寝ようかと」
「は! それもそうね。じゃあ私も」
バサ! イフリータが布団をめくった。
「な!」
「なんだい、マスター、まぶしいじゃないか。もう朝なのか……イフリータか。なにかよう?」
「エクスまで、なんで!」
「変な事をいうなイフリータは」
「ん?」
「僕は聖剣エクスカリバー。剣と使い手は、一心同体、一緒に寝るのは当然であろう」
「あんたは今、人でしょうが!」
「ふっ、そんな事は、ささいなことさ」
パンパン!
「まぁまぁ、ケンカはやめて、みんなで仲良く寝ましょ」
「ふん、クイーンの言う通りね。眠いし寝るとしましょ」
やっと寝れるのか……魔力結晶のお礼でベッドは無駄にデカいが。
全員で寝たら狭いだろ! はぁ、眠いし諦めるか。
「グゥゥ…………」
眠り、体の異変から目を覚ますと、俺だけが、ベッドから蹴り出されていた。
「はぁ、おやくそくか」
「起きたかユーリ。おはよう」
「おはよう。エルザ。早いな」
「私は、先に行くからな、早くに準備をしただけだ」
「そうだったな」
エルザは、人間のエルザとは、会わないために先に町を出発して、あとで俺達と合流する事にした。
エルザが出発してから、全員が起き、出発の準備をすませると、町の出口に向かった。
町の出口では、貴族のゼクス、依頼人代理のホークアイ、お嬢様の警護部隊、そして人間のエルザが、見送りに来てくれた。
「ユーリ、最初は悪かったな。平民だからと見下してしまった」
「気にするなゼクス。育ちが違えば、分かり合えるまでに、時間がかかるさ」
「ありがとうユーリ」
まぁ貴族連中は、モンスターにおびえて、泣きわめいてたし、スッキリしたからな。
「それにしても、英雄と呼ばれていただけあって、大活躍でしたね。英雄ユーリ」
「ホークアイさん。からかってますか?」
「そんな事ありません。ユーリさんが活躍してくれたので、私は無事任務完了できたのです。ありがとうございました」
「いえ、偶然ですよ」
「ふっ、ぐうぜんで英雄には、なれんだろう。ユーリ」
「リディアさん」
「そうだよね。決闘では、リディアを裸にしちゃうしさ」
「エルザお嬢様!」
「はは、短い間だったけど、楽しかったよ。ユーリ。みんな」
「俺は、生きた心地がしなかったがな。エルザ」
「そりゃそうだよね! あと少しで死刑だもんね」
「はは、わらえねぇ」
人間のエルザは、何事もなく、普通に会話してる。
魔王の娘エルザが、自分の記憶を人間のエルザに渡したから、なんだろうな。
「そういえば、エルザ。お兄さんのフレディーさんは、居ないのか? 見当たらないんだが」
「あぁ、お兄様なら急ぎの用事があるからって、朝早くに出発したみたいなんだ」
「そうか」
あのヒゲやろう。俺からの追求を嫌って、逃げたか。
「ユーリ殿、そろそろ」
「わかったよ。ヴィルディース」
エルザ達に別れを告げ、町を出発した。
しばらくすると、魔王の娘エルザとの合流場所にたどり着いた。
「遅いぞ! 待ちくたびれたじゃないか!!」
「悪いなエルザ。みんなと話しててな」
「ふん、まぁいい。行くぞ! 皆のもの! いざ! 女狼族の里へ!!」
『おぉぉぉ!!』「タヌヌ!!」
いや、エルザ。お前が、しきるなよ……まぁいいか。
行き先は女狼族の里。奴隷解放のお礼をしたいと言われ、女狼族の領地まで行く事になった。
5章は来週、月曜からになります。
4章完結しました。
更新遅い作品を4章まで読んでくれて、ありがとうございます。
次も書きますので、また読みに来てください。
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