第101話 領主の息子フレディーノア、ヒゲとの会談。本当の奴隷解放
裁判が終わると、領主の息子、本名フレディーノア、酒場のマスター、ヒゲに呼ばれ部屋に来ていた。
「ユーリ殿、中々の口上でしたな。まさか領地を奪われてしまうとは」
「いや、あんたには敵わないよ。酒場のマスター。俺の出す条件を先読みしてたんだろ」
「そうですな。旅をし各地で、数多くの交渉をしましたからな。相手の出す条件は、想像はつきますからな」
「やっぱりな」はぁ、マジで、こんなマスターが仲間に欲しいもんだ。
「ですが。父の暴走は、想像できませんでした」
ヒゲ……。
「モンスターから領民を守るためとはいえ、武人と呼ばれ、生身でモンスターを倒せる女狼族を奴隷にしてしまったのですから」
モンスターを生身で倒せる武人か、確かにみんな、美しい筋肉だったな。
「けど、そんな強い女郎族を、よく奴隷にできたな。人間より強いんだよな」
「どうやら、我らと友好的だった事を利用し、実験に協力して欲しいと騙して、奴隷の魔術を使った様なのです」
「なるほど、それじゃ。抵抗もできないな」
「はい。女狼族の方たちには、お詫びしても、許されるものではないでしょう」
ふぅむ。女狼族は、パーティーで楽しそうにしてたが。どうなるのかなぁ。
「ですが。父は、領主として、誘拐されたにもかかわらず、罪人を無条件で、無罪にするわけにも、いかなかったのです」
「それで、裁判に領主様が居なかったのか」
「はい。ですから私に速馬ならぬ、速ハムース族を走らせ、教えてくれたのです」
速ハムース……。ハムスターのロッティさん。パーティーに居ないと思ったら、ヒゲを呼びに行ってたのか。
「領主様も、難しい立場だな。まぁ俺は、無事だしよかった」
「えぇ、本当にご無事で何よりです」
「けど、ヒゲのマスターが、領主の息子だったとはな。あの無口キャラとは、完全に別人だな」
「コホン! 秘密ですので、この事は、どうか内密に」
「わかってるよ。命の恩人だからな」
「ふふ、ご謙遜ですな。私がこなくとも、あなたなら、解決できたでしょうに」
「え?」
「いえ、やめておきましょう。私のただの第六感ですから」
この、ヒゲまじ、何者なんだ。
「それより、皆様がお待ちですよ。ユーリ殿」
「ん? みなさま?」
ヒゲが立ち上がって、ドアに手をかけた? まさか。
ギィィ!
【ふぎゃぁぁぁ】ズダァァン!
ワンパターンな奴らだな。
げ、女狼族のリーダー、ヴィルディースも居るぞ。大丈夫か?
「これは、ヴィルディース殿。領主代理として、これまでの無礼お詫びいたします」
「我らは、誰もケガはない。だから解放してくれるのであれば、今まで通りの付き合いで、かまわない」
「それは、有り難きお言葉。領主に代わり、感謝いたします」
あれ、問題なさそうだな。
「ふ、我らは少しの自由を失っただけだ。他には、何も失っていない。それに」
「それに?」
「囚われた事で、新たなる出会いが出来たのだ」
「それは、なによりですな」
ん、俺を見て、シッポふってる? なんだ?
「おや? ユーリがコソコソしているので、新しい女を作り、隠れて、ごちそうでも食べてるのかと思いましたが。ふむ、女も、ごちそうもありませんね」
「人聞きの悪い言い方をするな。エクリア」
「いえ、思った事を言ってしまう性格なので。ついですよ」
「たく。で、イフリータは何してるんだ」
「いえね。どこかに、女が隠れてるんじゃないかと思ってね」
「いねぇよ」てか、お前の感知から逃げられる女とか居たら、バケモンだろ。
「兄上、話は無事解決したのですか?」
お、エルザお嬢様。
「えぇ、問題は全て解決しましたよ。エルザ」
「さすが兄上ですね。私は何もできませんでした」
「そんな事はありません。エルザは、リディアに頼み、私の事を他の町から呼んだのですから。的確な判断ですよエルザ」
「はい。兄様」
なんと、ヒゲを他の町から呼んでくれたのは、エルザお嬢様だったのか。
本当に、魔王の娘とは思えんな。てかヒゲは気づいてないよな?
教えても、無意味だし、今はエルザお嬢様にお礼を言っておくか。
「エルザお嬢様。お兄さんのヒ」
「ヒ?」
「コホン! フレディー様を呼んでくださり。本当にありがとうございます。おかげで無罪になる事が出来ました」
「いやぁ、ユーリが助かって本当によかったよ。私が任務を依頼したせいで、死なれたら一生夢に出てきそうだからね」
「はは、ほんと無事でよかったです」マジこの子は魔王の娘なんだろうか?
「ハムッフゥ! 本当に無事でよかったね。ユーリ!」
「お、ハムース便のロッティにも。フレディーさんを連れて来てくれた、お礼をしないとな」
「ふふ、気にする事じゃないんじゃないかな。私とユーリの仲じゃないか」
ん? なんだ、金のもうじゃだったロッティが遠慮してるぞ? 変なもんでも食べたか?
「いや、遠慮しなくても」
「こちらに居たか、ロッティさん。報酬は、これで良いだろうか」
リディア隊長は、金貨100枚をロッティに渡した。
「ハムッフゥ! エルザお嬢様! また何かお急ぎの際は、このハムース便に任せちゃってよ!」
「頼むわね。ロッティ」
「ハムッフゥ!」なるほど、だから俺からのお礼を遠慮してたのか。
「話も終わった事だし、奴隷解放、任務達成パーティーの続きに行くぞ! やろうども!」
【はーい!】
エルザの掛け声に、みんなで返事をし、本当の奴隷解放パーティーに向かった。
次は、来週水曜予定です。
ペース遅い作品を読んでくれて、ありがとうございます。