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はじまり

放課後、4人はいつものように教室にいた。

過去の事も、最近の出来事も、散々しゃべってきた4人には、もう話す話題がなく、さきほどから無言の時間をすごしていた。

窓の外からは、部活動に汗を流す人々の声が絶え間なく聞こえてくる。


あまりにも暇だったせいだろう。

ショウタが突拍子もない提案をした。


「しりとりでもするか」


カキーンと、野球部が金属バットでボールを打った音が、教室の中に響き渡った。

四拍ほど置き、トモキが「えー?」と、あからさまな拒絶反応を見せた。

一方、リュウセイはというと、まるでなにも聞かなかったかのように見当違いの方向を眺め続け、何の反応も示そうとしない。

ショウタも別に本当にしりとりがしたかったわけではなく、この無言空間を打破するために発言しただけなので、拒否されようが無視されようが気にしていなかった。

その証拠に、ショウタはすでにどうやってしりとりに賛同してもらおうかとは考えておらず、次になんの話をしようかと頭をめぐらされていた。


その時だった。

今まで黙っていたリクがおもむろに口を開いた。


「じゃ、しりとりの"り"からね。りんご」


トモキは驚いている。

リュウセイは静かに目線だけをリクの方へと向けた。

提案者のショウタでさえ、あまりに予想外の出来事が起きたせいで、言葉を失っていた。


カキーン


その音を聞いたショウタは、ハッと意識を回復させ、すぐさまトモキに向かい「ほら"ご"だよ"ご"」と、催促した。


「え?やるの?」と、戸惑いを見せながら、トモキはチラッと同意を求められるかもしれないと思い、リュウセイのほうを見た。

しかし、リュウセイはいつものようにどこかそっぽを向いて黙っていたので、トモキはあきらめ、「ご?ん〜。じゃあ、ゴリ」


「ラッコ」


「早っ。まだオレ言い終わってないんですけど。すげえやる気満々じゃねえか」


リュウセイはトモキのゴを聞いた時点で、ゴリラと言うことがわかり、すぐさまラッコと発言したのだった。


続いてショウタの番。


「じゃあ俺か。ええとね。こ、こ、こ、コマ」


それを聞いたリクは、「マ・・・・・・」と、つぶやいたかと思うと、微動だにしなくなってしまった。

トモキが心配になってリクの背中に目を向けた。

ゼンマイでもあるんじゃないかと思ったからだ。

そんな心配をよそに、リクは何事もなかったかのように言った。


「摩擦係数測定器」


「そんなんあんのかよ」と、すぐさまトモキが反応する。

リクは「さあ?」と首を傾ける。

「知らねえのに言っちゃた?完全に思いつきじゃねえか」

いつものようにつっかかるトモキに対し、ショウタが「まあ、別になくてもいいでしょ。なんかあるっぽい感じなら」と、いつものようにさとした。


「あるよ」


いきなりリュウセイが、つぶやくように意見を述べた。

「え?ホントにあんの?まさか〜?」と、トモキが疑いのまなざしを向ける。

するとリュウセイは先ほどと同じ口調で「180万」と、商品の値段を告げた。

「高っ!?自動車並みじゃねえか」と、トモキは驚き、続けて「ってか、ホントか?何で知ってんだよ」と、リュウセイに対して再び疑いのまなざしを向ける。

「調べりゃわかる」と、リュウセイはまったく相手にしていないご様子だ。


「ほら、"き"だよ"き"」


ショウタがトモキに向かってしりとりを続けるように促した。

トモキは「わーったよ」という雰囲気をかもし出しながら「"き"ねえ」と考え始めた。


「じゃあねえ、救急自転車」


「自転車かよ」と、ショウタがすぐに食いついた。

続いてリクが「急いでるなら自動車を使わなきゃ」と、注意する。

「患者はどうすんだ?」と、リュウセイが質問すると、トモキは「え?そりゃ後ろの、子供を乗せるところに」

「ただのママチャリじゃん」と、リュウセイが的確なツッコミを入れる。

それを聞いてショウタが「たしかに」と、同意した。

「じゃあ次ね。あ、"しゃ"と"や"、どっちにしようか」と、ショウタが尋ねた。

すると「どっちでもよくね?」と、トモキがてきとうに答えた。

その答えを聞いてショウタは「じゃあどっちでも言いや、好きなほう選んで」と、リュウセイに任せた。

リュウセイはまったく考えることなく、すぐさま答えた。


「車間距離不保持違反取締装置」


「やたら長えっ!!」

トモキが驚く。

「いったい何のことなのかわからない」

ショウタが困惑する。

「噛まないで言えたことがすごい」

リクが感心した。


「通称ホークアイ」


「やっぱり実在すんの?いったい何なんだよソレ」

「調べりゃわかる」

リュウセイのいつもの返しが出たところで、ショウタは「"ち"ね。ち、ち、ち」と、ショックを受けているトモキをほっといてしりとりを再開させた。


「ち、ち、ええ、超能力開発用右脳活性化カセットテープ」


まずはトモキから。

「パチくせえ。ってか完全にパチだ」

続いてリク。

「せめてCDに焼きなおして欲しいね」

そして、リュウセイが「いくら?」と質問した。


「今ならなんと、この左脳活性化カセットテープをセットで購入すると、もれなく全員に、脳全体活性化DVDをプレゼント!!」


「最後のがあれば、ほかの必要ねえだろ」と、リュウセイ。


「コレだけ揃ってイチキューパーの1万908円。1万908円でのご提供です」


「完全にボッタクリじゃねえか!!高いにもほどがあるぞ」

「8円くらいどうにかできなかったの?2円足して910円にしてくれたほうがまだマシだよ」

やはり最後はリュウセイが的確なコメントで閉めるのだった。

「まずはお前らが活性化しろよ」







今回のしりとり。

しりとり→リンゴ→ゴリラ→ラッコ→コマ→摩擦係数測定器→救急自転車→車間距離不保持違反取締装置→超能力開発用右脳活性化カセットテープ

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