つらら
つらら
安岡 憙弘
野原は新しい雪でいっぱいです。
男の子が雪を丸めて遠くへ投げて遊んでいました。キラキラと太陽の光が雪に当たって反射していました。男の子は雪にパタンと倒れて大之字をつくり、またパタンと倒れては大之字ををつくっていました、そんなことをしているものですから。だんだん寒くなってきました。すると遠くの方に2つの赤いひかりが見えました。男の子は少し火にあたらせてもらおうとそのお家の方へ駆けていきました。
小屋には1人のおじいさんがいました。
おじいさんは「いやいや寒かったろう、さあ中にお入り」と家の中へ入れてくれました。
おじいさんは1人でお酒を呑んでいますがよっぱらってはいませんでした。その時扉が突然ひらき、冷たい風がビューッと入ってきました。扉の外には氷のつららが何本も屋根からしたたっていました。
子供はうれしそうにかけていって氷をパキンパキンと折っていましたが1、2本中へもって入ってきてペロペロと新鮮な氷の味を味わいました。
やがてつららは暖炉の火にあたってゆげをたてながらなくなってしまいました。
それから子供はおじいさんに丁寧にお礼を言ってなだらかに起伏した斜面をまっすぐに家の方へと帰っていきました。
実は小屋の戸が突然開いたのは風の又三郎のいたづらでした。又三郎は寒い日にはいつも黄色にマントをはおって風の向くまま自由にとんではときどきこんないたずらをするのでした。