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龍の居る世界     作者: 子萩丸
28/59

砂漠の城


 ルフトに案内された宿は 周りに宿屋が全く無い。

 広めの敷地には植物も多く植えられ、中心に建つ城はセトラナダの貴族が住む建物を模したと自慢気に話す。


「この設計図はシュラにも渡しただろう。神々が泊まるなら、ちょうど良い施設だと思わないか」


 城を取り囲むように整えられた庭園も上品な作りで 噴水の周りには生垣が花を着けている。

 この広い敷地はルフトが経営している宿屋だと言うから、皆が絶句する。個人でこれだけの運営は簡単に行かないだろう。


「以前から構想はあったんだ。資金に余裕が出来た時に建造した。今は使用人が使っている建物が……あれだ。元々はあっちを宿屋にしていた」

 

 使用人の建物とルフトが指した先には、一般的な宿屋に似た建物が2件ある。汲上ポンプの井戸が建物の間に設置されている以外は、普通の建物に見える。水が貴重だからこそ、井戸が近いだけで繁盛したそうだ。なら今は城や庭園をどのように維持しているのか。


「ここを利用する客層が違うんだ。宿泊は1人 金貨5枚からだからな。客は豪商や自称貴族がほとんどだ。仕事が欲しい奴なんて、少し探せばゴロゴロしてる。城の1階と地下にも使用人が住める場所は あるぞ」


 ルフトが説明しながら城の広い階段を上がると玄関ホールに着いた。


「アヤメには懐かしい景色だろう」

「アタシさ、こんな場所 知らないんだよね」

何故なぜじゃ?アヤメの家と同じじゃろ?」

「ほとんど部屋から出た覚えが ないんだ。特別な時に正装して部屋から出たけど、大勢に囲まれてたし、キョロキョロすると怒られたからさ」


 そんなアヤメは思い切りキョロキョロしてホールを見回し、少し顔色の悪いシュラに気付いた。


「シュラは調子が悪そうだけど、どうしたの」

「値段が尋常ではない。セトラナダに着いてからの資金に困り果てている所だ」

はぁ、とため息をつくと ルフトが大笑いする。

「宿泊費は取らねぇよ。シュラがいなければ建てられなかったんだぜ」

「ほう?あの貴族に売った時の資金か」

「シュラは神々に話したのか?」

「いや、ラージャが記憶を見せてくれたのじゃよ、シュラの記憶をな」

「……勝手に見られた」

「どのようにアヤメと関わっているのか、わたしも知る必要があったのでな」


 話している間にホールを過ぎ、広間に着く。

「あ、ここは謁見の間なんじゃない?あの窓の外に広いバルコニーがあって、紋様の描かれた陣があるんだよ」

「ああ、この建物には広いバルコニーは無いんだ。貴族の城を模しているからな、客間のように使われている広間になる」

「残念じゃのう、大きさが合うか試せると思うたのじゃが」

それよりも、この城に入った時からただならぬ気配が漂っているのだが、ルフトは思い当たるのだろう?」

「龍神様のおっしゃる通りでして、この先にある広間を好んで出てこないお客様が居るんですよ。いや、会いに行くなら全く拒む様子も無いのですがね」

「会いに行っても良いのだな」


 ラージャが目を細めて「先の広間」を見る。その表情からは、何を考えているのか予測できない。スッと歩いて先にある広間に向かった。皆もついて進むが アヤメは小走りだ。

 扉の前に皆が揃うと、城で働く使用人が丁寧な動作で扉を開く。


「久しいなクウ」

 ラージャが広間の扉の先へ進むと同時に口を開くと、黒いドレスに黒髪の女性が踊るように微笑んだ。


「お知り合いで?」

「ああルフト、わたくしの古い友柱ゆうじんなんだよ。大きくなったねえ」


 クウと呼ばれた女性はラージャに絡み付くように包容し、ヒムロを撫でる。シュラに向かって少し微笑んでアヤメの頬を両手で支えるように正面で座り


「セトラナダの子だね。龍の血を濃く受け継いで、多くの経験を積んでいるのだね。いずわたくしがセトラナダに戻る時には、仲良くしたいよ」


 アヤメの頬は うっすら赤くなる。


「綺麗……クウ様は夜空みたいに綺麗。ラージャ様がセトラナダと契約する前に、ずっと守護して下さった龍神様だよね。うわ、感激で涙 出そう」

「可愛い事を言うね。ヌッタの子も、この子を助けてくれたのだね、嬉しいよ」


 クウの態度に状況が呑み込めないのはシュラとルフトだ。


「ルフト、龍神が居るとは聞いてない」

「俺もずっと精霊のたぐいだと思い込んでいたんだ」

「そうそう、ルフトにわたくしの事は 詳しく伝えていなかったよね。セトラナダの陣に変化があって帰れなくなったものだから、良くない形で巻き込んではいけないと思って、伝えずに いたのだよ」

「陣に変化……いつの事だか覚えているか?」


 ラージャの表情はあまり変わらない。


何時いつだったろう、酒が飲みたくなったんだよね。ところがセトラナダに近付くとわたくしの力が吸いだされるように奪われて行ったんだよ」

「何?」

「あのままセトラナダに入ったら、わたくしはラージャに吸収され 消えてしまう。もうラージャに会えない寂しさと酒が飲めない苦しみが同時だったんだよ。わかるかい?」

わたしがクウの力を奪う?」

「そうなんだよ。何度か試したのだけどね、わたくしが消えてしまう前にめたんだよ」


 何かしら思う事があったようで、ラージャが

わたしはクウに見捨てられたと思っていた」

大きくため息をついて、その場にしゃがみこんだ。


「バルコニーの陣に、人が手を加えたのだね。ラージャ以外の龍が近付けば、セトラナダの大地に消えるように書き込まれている」

「へえ、なんか色々と書き加えられていると思ったけど、そんな事も出来ちゃうんだね。でもさ、そもそも龍神様と人が対等な契約がオカシイんだよ」

「セトラナダの子は、あの陣が変だと思うのかな?わたくしには普通に見えたよ」

「アタシはアヤメだよ、クウ様。あのね、龍神様をセトラナダに縛り付けてるじゃない。だから、お願いって形に変えたんだよね」


 ヒムロが袖口から陣の描かれた布を出し、広間の床に広げ 同時に小さな氷を放つ。バルコニーに描かれた陣に似た絵柄が広がった。


「アヤメ、君が考案したのはこの辺りかい?素晴らしいよ。これなら契約をしても自由にセトラナダの外にも出られるよ」


 クウは外周の図柄をなぞるように眺め、アヤメを誉める。


「えへへ。みんなで考えたんだけどね。ラージャ様が自由にトレザへ帰って来られるといいなって」


 図形を確認した陣の布はシュラとヒムロが丁寧に畳んでいる。広間の扉が開き、台車に大人四人は入れそうな樽が乗っている。


「ルフトは気が利くね。ラージャにも会えた事だし祝杯だよ、さあアヤメも飲むといい」

「クウ様、アタシはお酒を飲むと すぐ寝ちゃうから、ご飯がいいな。あ、シュラもお酒は苦手だよね」


 既に食事の準備もされていたようで、

「そうだね。ルフト、アヤメたちの食事もこの部屋に運んでくれると嬉しいよ」


 クウの言葉に合わせるように、広間のテーブルには食器が並べられていく。

 

 アヤメがシュラにこっそり話す。

「あのさ、お行儀が悪いと鞭で叩かれる?」

「ルフトに聞くといい。私はルフトに随分 叩かれた」

 正確にはルフトの使用人達に叩かれた。アヤメが同じ事をルフトに確認しに行く。ルフトは慌てたように弁明してからシュラに向かって

「シュラは なんて事を言うんだ。好きなように召し上がってもらえ」

「本当の事を言っただけだ」


 困惑気味のルフトとシュラの態度は、気兼ねなく対話をする親子のようにも見える。実際にルフトはシュラを色々な形で支援している。


「うわぁ、スッゴい ご馳走。ねぇねぇ、早く食べようよ」

アヤメは早速テーブルに向かう。使用人に椅子を引かれると、自然に上品な振る舞いで着席する。

 6人がけの広いテーブルにはアヤメの向かいにシュラ。アヤメの左にラージャ、右にクウ。シュラの隣にはラージャに向かい合う席にヒムロ、クウの正面にはルフトが着いた。


「ああルフト、この酒は全部飲んでも良いのだよね」

「勿論だ。シュラがアヤメをセトラナダに戻す前祝いだからな」


 クウは嬉しそうに乾杯の音頭を取り、それぞれに食事が給仕されていく。


「セトラナダにはヒムロを連れて行けぬな」

「そうだな」

 ラージャが呟き、シュラが応える。

「どうしてじゃ」

「クウの話しを聞いてただろう。ヒムロには生きて欲しい」

「ぬ?」

ヒムロは何を言われたのかわからない顔で、酒のグラスを両手で口に運ぶ。

「むん、やはり苦いのじゃ。私は発酵した果汁より、発酵する前の果汁が好きじゃのう」

とはいっても、注がれた酒は飲み干した。ラージャはチビチビと舐めるだけなのに対して、飲みっぷりは豪快だ。


「それで、だが。シュラはヒムロ無しで勝算はあるか?」

「……試してみなければ、わからない」


 兵隊を倒すだけなら何とかなる。しかしアヤメが陣の上に布を広げて 固定する間を守りきらなければ意味がない。

 あれこれ考え出したラージャへの不意討ちも、ヒムロあっての作戦ばかりだ。


「ラージャ、ヒムロはセトラナダに入れる筈だよ」

「いや、近付けば消えると クウが言ったのではないか」

「うん、わたくしは歳を重ねているからね、守りの衣も役に立たないのだよ。ヒムロはまだ子供だもの、大丈夫だと思うよ」

「信用して良いのか?」

「当然だよ」


 今 着ている服は、トレザで新しく作られた布で作られている。シュラとバムの意見で「普通の旅人」が着てる服になっている。勿論、肌には直接ヒムロの布で作られた衣装を着けている。


「だがクウ、わたしは まだ信用出来ぬ。トレザに居る本体と分身は、随分クウを探したのだ」

「ああ、すっかり忘れていたよ。トレザには酒が無いから、ラージャの本体に会える事すら忘れていたんだよ」

わたしの存在は酒以下なのか」

「そう言う訳じゃないんだけどね。ルフトの所に居れば酒が飲めるんだよ。わたくしは分身が作れないし、ここには人の『気』と酒があるから 離れられないんだよ」

 クスクス笑うがクウは すまなそうにアヤメに隠れてラージャを見る。


「俺は、まだ驚いているんだけどな」

ルフトは正面で笑うクウに言いながら肉を切り分けて口に運ぶ。

 アヤメはカトラリーを使って食事を進めている。久しぶりなせいか少々ぎこちないが、食事のペースは早い。ただ、対話には入れない。常に口の中がいっぱいだからだ。


「そうそう、酒が飲めずに絶望していた時にね ルフトが酒をくれたのだよ」

「全部飲みきるとは思わなかったから、本当に驚いたんだぞ」


 セトラナダで仕入れた上質の酒は、ショットグラスでも銀貨が取れる。

 まだ少年にも見える当時のルフトは小さな雑貨屋を経営し始めたばかりで 近いうちに居酒屋も始める計画を立てていた。資金は充分、手始めに雑貨屋の片隅で酒を提供しながら客の反応を見るつもりでいた。

 安い酒を仕入れた時に、砂漠の宿屋で盗まれた事があり 徒歩で宿屋から離れた砂漠を歩いている途中でクウを見つけた。

 呆然と座り込む軽装な女性は、とても不自然で声を掛けずにいられなかったのだ。


 華奢な女性が、とても砂漠を横断する装いではなく、夜の人が通らないような所で両腕で上半身を支えるように座り込んでいた。

「おい姉さん、歩けるか?」

ルフトは雪車そりのように砂の上を滑る荷車を引いたまま近付いた。

 歩けないようなら、ある程度の荷物を背負って荷車に乗せて女性を運ぶつもりでいたからだ。


「ああ、わたくしを心配してくれるのだね」


 暗がりだと言うのに、ルフトへ返事をする女性の笑顔が眩しい。


「人ではないな?精霊とか、そういうやつか」


 初めて見る龍神の正体など気にせず、近くの宿屋で休むように連れて行く準備を始めた。荷車に乗せてた荷物をある程度背負えば、小さな酒樽が二つになる。上に座れば良いだろうと、荷車を指すと


「おや、これはセトラナダの酒だよね。こんな所で会えるとは」


 クウはスッと近付いて酒樽に頬擦りする。ルフトは素早い動きに驚きながら、嬉しそうに酒樽を撫でる女性に


「少しなら、飲んでも良いけど……」

言い終わらないうちに酒樽が一つ空になった。


「嬉しいよ。わたくしはクウ。君の望みを聞かせておくれよ」

「俺はルフト。いつか、この砂漠に でっかい宿屋を造るんだ。今は まだ小さな雑貨屋だけどな」

「わかった。では、ここに水を引けば良いかな」

「え?」


 大男でも酒樽を空ければ倒れるほど強い酒だ。軽々と持つのは見間違えかと理解が追い付かないうちにクウの目の前に水が湧き出した。


「ここから溢れる分は砂に吸われてしまうけど、水を通さない囲いはルフトが作っておくれよ」


 信じられない出来事に、目の前の水を手で掬い上げ飲んでみる。

 計画変更だ。居酒屋を造る資金は、ここに宿屋を建てる資金に充てる。ただ、正確な位置がわからない。ルフトが離れている間に誰かが この湧水を見つけたら確実に奪われる。


「どうしたら いいんだ」

「ああ、ルフトは適当に宿屋を迂回してたのだよね。この湧水はわたくしが見張って おくよ。準備が整ったら来るといいよ」


 クウの言葉にルフトは急いで荷物を下ろし荷車に砂漠を渡りきれる食料だけを乗せて走り出した。


「もう一つの酒も置いていく。クウが好きに飲め」


 言い残して経営する雑貨屋へ向かう。

 途中から馬車を使い、急いで戻り 雑貨屋に残していた 信頼できる従業員数名に声をかける。

 急な予定変更だが、それでも 付いて来られる者はいる。居酒屋が宿屋に変更するだけだ。居酒屋で資金を増やす手間が省けたと、豪快に笑う従業員が建築士を砂漠に向かわせる手配を済ませた。


 ほんの数日。だが、砂漠に向かう建築資材と共にルフト達も馬車で向かう。クウが居る場所には迷わずにたどり着いた。


「ルフトが戻るのは、もっと先になると思っていたよ」


 笑顔で迎えるクウには、居酒屋で出す予定だった安い酒を渡し、

「この前の酒は仕入れが大変なんだ。これで我慢してくれ」

「いやわたくしは酒なら なんでも好きだよ」


 井戸は囲うだけなので、すぐに完成した。

 宿屋も着実に骨組みが建てられていく。数ヶ月で居酒屋を兼ねた宿屋が完成した。


「ルフトに迷惑でなければ、わたくしはここに居ても良いかな。そうだな、宿泊者の未来を少し助言する仕事でもしようか」

「クウには未来もわかるのか?」

「未来は幾つも在るんだよ。だから確実ではないし、変える事も出来るのだよ」


 精霊が占う未来は、客に評判が良かった。更に酔った客に絡まれても、逆にクウから呑み比べを吹っ掛ける。


わたくしが先に酔い潰れたら、飲み代はわたくしが支払うよ。なんならわたくしを好きに扱っても良いよ」

「お客さん、お手柔らかに。負けた方が払ってくれるので、宿としては どちらが勝っても良いのですが、大事な占い師ですから」


 どう考えてもクウが勝つ。宿屋の収益が異常に上がったのは、クウに呑み比べを挑む猛者が後を経たないからだ。特に色目を使う男たちが。

 二年も待たずに、隣に大きめの宿屋を建築し始めた。その頃からクウはセトラナダに在る貴族の城と同じ設計図をルフトに見せる。


「そうだな、これだけデカイ宿屋なら、貴族どころか王だって泊まれる」


 雑貨屋も着実に売上を伸ばし、商売は着実に拡大していく。かなり危険な商売もした。特にシュラを売った時は予想外に拘束される事になったし、逃げ延びたものの命を狙われた。


わたしの存在は、クウにとって酒以下なんだな」

「そんな事は無いよ。ラージャとヒムロがわたくしに会いに来る未来は見えていたんだよ。だから、早くルフトに城を建てて欲しかったんだよ」


 未来は漠然としていて、確実ではない。クウの見る未来は万通りもあり、その中でも最善に進む方向は多くない。小さな宿屋でラージャと再開した先は、最悪なものだった。

「この部屋で、ラージャとヒムロ、アヤメとシュラが揃うのは、最善の方向に最も近いんだよ」

「未来か……。わたしには全くわからん」

「ラージャは若いもの。それにトレザへわたくしが行く時期によっては、わたくしもラージャと一緒に信仰の無い民ごと崩落させて アヤメに出会う機会を無くしたのだよ」


 未来は些細な偶然が重なり、近くにも遠くにもなる。全く違う結果に繋がる原因は、それこそ蝶の羽ばたき一つだった という事もあるのだ。


「クウは、今の状況なら最善だと断言できるのか」

「すまないね、ラージャ。断言はできないんだよ。皆の世界が調和した先の出来事だからね」

「可能性だけは、あるという事だな」

「そうだよ。今の場面は 少ない最善の方向に向かう場面と同一なのだよ。確実ではないけど、わたくしの望む未来にも繋がっている」

「少ない最善……か」

「良かったのうラージャ。全滅の未来しかないと言われたら、上手くシュラにラージャを言いくるめて貰って 逃げた先を観光でもしようと思っていたのじゃ」


 コロコロと笑いだしたクウにヒムロが怪訝けげんな顔をするが、空気はやわらぐ。


わたくしもね、ラージャに会う迄は この部屋を出るつもりは無かったけど、好きに出歩けるようになったよ。ルフト、この子たちが休めるようになっているのかな」

「抜かりないぞ。湯浴みも寝室も整っている」


 食後の甘味は果汁をプルプルに固めた物で、透き通る色合いも 味も 食感も 初めて味わうアヤメとシュラは、食べるのに夢中だ。

 甘味が無くなると、皿を手に取ったアヤメが

「舐めてもいい?」

小さく聞き、ラージャも豪快に笑いだした。

 ルフトが指示を出し、アヤメとシュラの甘味を追加した。落ち着いて食事をしているように見えても、本当は子供なのだ。シュラは黙っているが、目は甘味に釘付けで 丁寧な仕草でプルプルの甘味を味わう。

 

「シュラは湯浴みが済んだら俺の部屋で仕事させてやる、楽しみにしとけよ」

「なっ?」

「宿代を気にしてただろ?」


 ルフトに言われて返答に困惑する間に、湯浴みの出来る部屋へ案内されてシュラとアヤメは退出した。


「クウが龍神とは知らず、随分 働かせてしまったが、給金は足りたのだろうか」

「キュウキン?ああ、ルフトからは沢山貰っていたね。わたくしは酒も沢山貰ったし 人の『気』も得られたから充分だよ。何しろ金を使う所が無い」

「そうか、安心した。じゃあ俺達も部屋を出るとしよう。用事があったら その鐘を鳴らしてくれ」

「そうだね、再開して語り合いたい事も多いんだよ」


 ルフトと使用人が全て退出した部屋にはクウとラージャ、ヒムロだけが残った。

 ヒムロが誕生した時に立ち会って以来の再開。まだ人の姿になれなかった当時のヒムロは対話にも入れなかった。

 現在はトレザの民が龍や土地神を深く信頼している事をヒムロの言葉で伝える。信頼される信仰の念で出来る事が増え 少しつのが伸びた事、他の土地を見て周りたい事、まだまだ知りたい沢山の事に夢が膨らむと話す。

 キラキラと頷くクウも、

「これが落ち着いたらわたくしもトレザに行くよ」


 そして、これから向かうセトラナダの対策を話し始めた。







パラリンピック、始まりましたね。

色々な意味で世界の歴史に残りそうですね。


また近いうちに(?)更新します。

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