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龍の居る世界     作者: 子萩丸
13/59

感傷

 これで何とか冒頭が終わったような感じです。

 昭和に書いていた頃の話と大筋は同じように動いていますが、セリフのあったモブが濃いキャラになりました。

 ユタさんはヒムロに森で迷子になった所を助けられた子供でした。そして土砂降りの中で踊るヒムロを見つけた時は老人でした。おや?と思っていたら、今回は随分と仕事してくれた人物ですね。

 そしてクウ、老獪ろうかいな先達の助言が欲しかったのです。名前の無かった賢い龍神様は、まさかの酒豪になりました。押し花は大切なんだそうです。

 サラもセリフは無かったはずだし動けなかったのです。しかし人だった神の設定だけが変わらず、踊るし強いし、驚いています。


 文才が足りないのか、表現力が足りないのか、個性が強くてやりたい放題に生きる彼等を追い掛けきれずに、この世界ばかりが広がってとても追い付けません。脳内旅行は楽しいのですが、多分、私が表現力迷子になっているのでしょう。仕方ないので、地図を作ります。シュラは書いてくれるでしょうか。あとは人間関係図も欲しいですね。セトラナダの年表をください、アヤメ先生。


 きっと好き放題に動くキャラの皆さんは、笑って私の気持ちなんて置き去りにするのだね。

 と、いう訳で。ノートに地図とか年表とか、色々と書き出したいので、毎週の公開では追い付けそうにありません。でも近いうちに再開出来ると思います。


 貴重な時間を楽しく過ごして頂けると嬉しいです。





 星空の下ではヒムロが次々と氷を作り出してラージャにコンと軽く叩かれ崩れていく。月に照らされて壊れた氷がキラキラと消え、異質な美しさが草原で見られた。

 シュラは横になったまま、ラージャとヒムロの対決を眺めている。とっくに回復しているのだが、心が折れて動く気になれない。逃げ出す事も出来ずに悲鳴を上げて、大人達からいたぶられていた姿を、出会って日の浅い神々に包み隠さず見られたのだ。

 しかも手加減したサラに一撃も出来ず、ヒムロは新たなわざを自分のものにしようと奮起している姿を見て、おのれの弱さに心が沈んでいく。このまま身体ごと大地に埋まってしまいたい。

 サラの手が優しくシュラの髪を撫でる。

「シュラは強くて優しい子よ」

 少し驚いた表情で見上げれば、サラはシュラのそばに座って視線はヒムロを追っている。

 あえて視線を逸らしているのだろう、シュラは大きく息を吐いて体を起こす。それに気付いたヒムロが駆け寄って来ながら大きな氷の剣を投げつける。

 シュラが咄嗟とっさに小刀のつかで受けると、硬い音がして氷にひびが入り、勢いが落ちた氷の剣はその場で落ちて壊れた。

「シュラにも効かぬのか」

 座り込んだヒムロの頭にラージャが手を乗せて

「今のセトラナダは分身との連絡を絶っているので詳細しょうさいは解らぬが、それでも向かうか?」

 ヒムロは黙って頷くが、シュラの気持ちは揺らいでいる。今の実力では何も出来ずにアヤメが捕らえられてしまうだろう、勿論シュラも同じように。

 あと数年もすればシュラは成長というより老いて行く。人が相手なら充分に勝算はあると思った。しかし相手がラージャだと解れば別だ。


 鮮明に見た悪夢から、まだ離れられない。


「とうっ!」

 ヒムロが助走を付けてシュラに跳び蹴りを仕掛けてきた。膝立ちになって左腕で受け、右手は鞘に入ったままの短刀で斬る。ヒムロは宙返りして太刀筋たちすじを避けて着地する。

 ヒムロの攻撃を見切ってかわすだけでシュラが攻撃に転じられる隙がない。

 たまに風がそよぐ程度で、ヒムロとシュラが訓練する音だけが動く。


「隠していた訳ではなく、忘れたかった事だったとは、誤算だったか。心の動きまでは解らぬからな」

 心の動き以前に、人との接触が少なかったラージャだ。感情の変化に鈍いというか、疎い。セトラナダに行く気が満々だったシュラは鮮明に見た記憶のせいで、すっかり行く気が失せている。

 民の願う『気』に敏感で、上手く民の願う方向に導く事にけているヒムロの在り方をラージャは少し離れた所で観察するように眺めているうちに、空が白んで来る。


「シュラは氷の剣を出させてくれぬのじゃ」

 少し不機嫌なヒムロにシュラは淡々と氷の剣を出すヒムロの仕種しぐさを話す。ほんの数秒だけ間があるらしい。最終的に両手を広げて振り下ろす前に仕掛ければ、氷の剣を作り出すのは防げる。

 実際に氷の剣を幾つも出されては、訓練中に殺されると思うと付け加え、徹底的にヒムロが覚えたての技を封じるだけで必死だったと一人で湖に向かった。


 シュラは荷物だけ置いて、服のまま湖に飛び込んだ。透き通った湖に潜り、魚を捕まえて荷物を置いた場所に二匹投げた。ビチビチ跳ねているのが見える。湖の水が火照った体に気持ちいい。明るくなってくる空を見上げて湖に浮かんで、思い返す。

 何故なぜアヤメを連れて旅を続けようと思ったのだろう。自分一人で手一杯だったし、一人なら食糧を調達するのも苦労しなかった。雨風をしのげれば、警戒しながら何処どこでも眠れた。

 最初に泊まった宿屋にアヤメを置いて出ようと思った。しかし、当たり前に誰でも出来そうな事が自分で出来ないアヤメが心配になったのだ。身の回りの事が出来るようになった頃を見計らって、置き去りにしてみた事が何度かあった。だがその度に気になって様子を見に行けば、必死で着いてくる。

 そうだ、放っておけなかったのだ。

 元々の身分を考えると預けられそうな大人は少なかったし、アヤメの父親を暗殺する計画を知っていた負目もあったと思う。

 最後に光っていた星が見えなくなって荷物の方を見ると、随分岸から離れていた。泳いで岸に向かうと衣類に流れ込んで来る水で少し重たい。アヤメを抱えて泳いでいるみたいだと思った瞬間、フッと笑って岸に上がると濡れた服を脱いで固く絞る。近くの枝に広げて荷物の中の着替えを羽織ると、魚を持って兵士達が作業している場所に向かう。


 早朝から作業が始まっていた。水門の案が幾つか模型で作られていて、まだ作成途中の模型もある。実際に取り付けるならどの形が良いのか、皆で話し合う為だという。シュラは初めて見る模型に少しばかり心を奪われつつ、トーナの書いた報告書に目を通しながら模型を確認して思い付いた事を幾つか質問していると、トーナが

「この書面では理解し辛いのか?」

 少し気落ちしたようにシュラに尋ねる。

「いや、とても解りやすく書かれている。何故この工程になったのか疑問に思った事を聞いただけだ」

 トーナはシュラの感じた疑問点も次からは出来るだけ記載しようと考えながらシュラの質問事項に耳を傾ける。


 ユタの家で治療を続けていた兵士は、かなり回復して湖での作業に入るらしい。ユタとトトが同行して来た。

 トトが意外な事に右腕を失くした兵士と普通に対話している姿にシュラは驚いた。シュラならきっと治療もせずに見殺しにしただろう。ユタもそうだがトトも強い意志を持っていると感心する。

「利き腕が無いし、完全に治っているわけではないのだから、調子が悪いと思ったらすぐに来なさい。動けなくなる前に来るように」

 ユタが周りの兵士にも無理しない範囲で仕事に参加させるよう伝えていた。

 

 ユタ、トト、シュラが湖を後にして家に向かう。

「シュラ、肩車してよ」トトが見上げて言うので、シュラは歩きながらトトを肩に乗せる。

「父さんより見晴らしがいいや。俺も大きくなりたいな」

 シュラの肩ではしゃぐトトを見上げてユタが

「落ちるなよ」

「大丈夫だよ、しっかりつかまってるし、シュラも押さえてくれてる。あっ誰か飛んでる」

 トレザで空を飛べる者は神々しかいない。そう思っているとヒムロが目の前におりたって

「のうオサ、トトの手はいつ生えて来るのじゃ?」

 ヒムロは失くした体が元通りになると信じていたようで、傷口が塞がっても生えて来る事が無いと言われて困ったような顔をする。

「人の体は不便よのう。私は脱皮すれば元通りじゃ」

 後でシュラを迎えに来ると言って去って行く。



 昼を過ぎてもヒムロが来る気配は無い。シュラが土の上に城の見取図を細かい所まで書くと

「なんでシュラがこんなに詳しく知ってるのさ?」

 アヤメが覗き込んで、城で会食に使われていた広間から自分の生活していた部屋までを、指でたどる。広い見取図の中で、あまり離れていなかった場所だったようだ。シュラはアヤメの質問に応えずに、貴族街の地図も書き始めた。そして、見下ろして地図全体を眺め、しばらく考えてから城の見取図の隣に天井てんじょう裏の抜け道を付け加える。これはシュラが通り抜ける為に知った一階の分だけで、他の階は見ていない。知っている部分だけを書き記した。

 アヤメがしきりに聞いて来るが、うっかり余計な事まで言いそうで、シュラはずっと黙ってアヤメの言葉を聞き流していた。

 ヒムロとラージャがゆっくりに見える優雅な歩き方で、姿を認識できたと思えば、すぐに近くまで来ていた。

 地図や見取図を見ているアヤメに気付いたヒムロが

「セトラナダに戻って王にならないか?」

 軽い調子でアヤメに問い掛ける。

「ならないよ」

 笑顔で軽く拒否するアヤメを肯定するように、シュラも黙って笑顔で頷く。

「しかしセトラナダに向かうつもりだったはずであろう?」

 ラージャの言葉に反応したアヤメがシュラを睨み、

「勝手に決めるなよ」

 アヤメ自身が良く覚えていない故郷ふるさとだ。いずれは訪れてみたいと思っていても、いきなりでは心の準備が出来てない。それに、セトラナダでは何度かシュラから置いてきぼりにされた不安な記憶だけはある。また置き去りにされるような気がして、シュラの胸座むなぐらを両手で掴んで見上げ

「いつも私に何も知らせてくれない。シュラだけ何でも知ってて、今だって私が聞いた事に何も答えてないじゃないか」

 噛み付いて来そうな強い視線から目をらす事も出来ずに

「まだ、行くと決めた訳ではない」

 それだけ言ってアヤメの手をほどく。本当ならアヤメに行き先を伝えずに向かうつもりではいた。王城のある街に滞在し、場合によってはアヤメだけを宿屋に宿泊させて王城の中や情勢を探るつもりでいた。

「セトラナダでは何をするつもりだったのだ?」

 ラージャに答えたシュラが

「アヤメを親に会わせようと思っていた」

 現地で状況を判断しながら城に潜入する方法を考えようと、取り敢えずセトラナダの宿屋での宿泊費を半年分くらいは準備するつもりでいたと話し始めた。ユタやその家族に会える事とトレザの薬草は高値で取引できるのが理由で立ち寄った。

 まさかここで龍神に出会う予定は無かったし、今後の販路を考えればタタジクを水没させるのも都合が悪かった。この数日でシュラとしては大きな予定の変更も無く、昨夜はセトラナダの情報が得られると喜び勇んでヒムロの後を着いて行ったのだ。

 そして実力を知った今は、まるで目的を見失ったように何をするにも集中出来なくなっている。話し掛けられても、言葉の意味が心を通り抜けていくような、不安に似た感情に押し潰されていた。

「シュラ、あたし母さんに会いたい」

 シュラは小さく息を吐いて、首を横に振った。

 明らかにガッカリしたアヤメにヒムロが知ったセトラナダの現状を伝え始めた。今の王とのケーヤクでシエキされているラージャの事を伝える。

「契約の陣を書き替えたのかな?バルコニーの陣は城で一番に清められているはずなんだけど、血で汚したままなんて許せないな」

 アヤメが儀式で一度だけが見た陣を思い出しながら呟く。とても美しい紋様もんようだった。部屋に戻ってから紋様の見本を真似て、同じように書けるまで練習した事は、良く覚えている。ちなみに契約の陣を改造されても気付かないラージャにもアヤメは少し驚いた。龍神は何をするにも完璧な存在だと思っていたからだ。

 言いづらそうにラージャが

「トレザの儀式が簡素化されて行ったように、セトラナダの儀式も人によって変化するのだと思い込んだのは失敗だったのだ」

 しかし、現在の王に使役されているのがラージャでは、簡単に忍び込む事すら出来ないだろう。アヤメも少し納得したが、心配な事を口に出す。

「母さん、生きてるのかな」

「コアはずっと伏せっていると聞いた。城の中に気配はあるが、アヤメが居なくなってから会っておらぬ」

「病気なの?」

 シュラが覚えているゾーベの計画では、コアは幽閉されているはずだ。多分、病気ではないが、何故なぜそれを知っているか聞かれても困る。アヤメの父親を暗殺する計画から知っていた事実を話す事になりそうで、黙って見ているしか出来ない。

 シュラはずっと無事に生き延びる事ばかり考えていたようだ。勿論、生きる事は最低限必要だ。ただ、アヤメのように楽しみながら自分の知識を広げる事はあっただろうか。トトのように片手を失くしても相手を許せる心は持っているだろうか。ユタのようになりたいと目標を持つムウや、旨い肉の為なら危険な動物を狩るイイス、皆に置いていかれた気分になって小さく息を吐いて呟く。

「私は図体ずうたいばかり大きくなった、ただの子供だ」

 聞こえていたであろうラージャとヒムロが目を合わせ、見守る眼差しでシュラに頷いた。





 お疲れさまでした。

 すぐに終わると思っていたプロローグ部分が、やっと終わった感じです。

 これで冒頭?そうなんですが、少しばかり満足したのか、それともシュラと一緒にやる気が無くなったのか、心の中で膨張していたお話が綺麗に消えました。

 続きの場面が所々は思い浮かぶし書きたいのですが、また、そのうち書きますね。

 取り敢えず紙媒体に書き込んで、少し整理して、順序を考えてからにしようと思っています。

 何しろ、小学生の頃から作文は苦手でしたからw

 

「何がしたい?」

 明確な答えが実は私の中に無いようで、いまだにあれもこれもやってみたい事が沢山あります。

 あなたは何をしたい?

 


 また、そのうち続きを公開していけると良いと思っていますが、まだ予定がたっていません。でも、またお会い出来たら嬉しいです。


 ここまで目を通していただいて、本当に有難うございました。

 どうぞ、再会の時まで御自愛くださいませ。



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