たなびく戦旗の下に
フリアノ軍総司令官ジスカルの姿
4 フリアノ陣営にて
スーシの街は中央平原のほぼ真ん中にある。その街には平原を南北に縦断するイキ街道、平原を東西に横断するリマ街道がちょうど交わっている。その為交易も盛んでたいへんにぎやかな街である。イキ街道を北に行くとベネット子爵領があり、さらに北へ旅を続けると北海に出る。この街から南へ行けば豊かな南の海ミドル海につながる。リマ街道を西へ行き中央平原が終わるところに大河ターグが流れ、そこにフリアノ王国の王都リマがある。街道をスーシから東へ行き、中央平原を過ぎれば東部丘陵。さらに東へ行けばカリガン王国との国境をなしていたムース川に達していた。
フリアノ軍はスーシの街から東へ徒歩で一日ほどの距離にある野原に、カリガン軍を迎え撃つべく、陣営を設営していた。その中に一際目立つ背の高い男がいた。年の頃は四十代。豊かな黒髪は深い闇を思わせ肩の辺りに切りそろえられていた。ものを見通すような鋭い眼をその髪で隠し、陣中を歩いていた。兵士達は彼の姿を見かけると不動の姿勢で敬礼をおくるのだった。彼はときおり兵士達に声をかけ、陣営の端から端まで歩き続けた。
「御大将!」壕の底から声をかける兵士がいた。ジスカル壕の端に立ち止まり、声をかけた兵士を見た。兵士は上半身裸になって、鍬を持って立っていた。頭のはげ上がった小太りの男だった。
「ベップか。俺はてっきり王都の娼館で、女に刺されて死んでいると思っていたぞ」
「ひでえ!せっかく戦だからって来てやったのによ。ひでえ言われ方だな」
ジスカルは笑いながら次の言葉を待った。
「戦いだって来たのに、やっているのは穴掘りと大工仕事だ。敵はどこにいるんですかい?・・・いい加減飽きましたけど」
「なーに、心配するな。後でたっぷりと戦うことになる。しかしお前がそんなにやる気になるとは、頼もしい限りだ」
「別にやる気ってわけじゃないんですけど。休みの日に古参兵招集だって、わざわざ隊長がオレがやっと落とした女としけ込んでいた部屋にやってきたんですよ。夜襲・・・じゃないな、朝襲というか、昼前襲というか。・・・隊長、優しく起こしてくれたいいものを、オレの裸のお尻を蹴飛ばしたんですよ。軍靴で蹴飛ばしたんですよ。思いっきり。お陰でアザができちゃいましたよ。見ます?・・・御大将」
「はっはっは!見たかねえよ。テメエの尻なんて・・・」
その時、馬を急がせてやってくる者がいた。騎兵はジスカルを見かけると、すぐに下馬し彼に近づき敬礼した。
「司令官殿。士官達が集合しました。会議の時間です」
「わかった」ジスカルは短く答える。そして壕の底にいるベップと兵士達に向かい、
「この壕はお前達を助けることになる。さぼらず作っておけよ・・・特にベップ」そう言って去って行った。
次はアラン王子の本陣