第7部*想い・偽り
あたしには
曖昧で不確かな記憶がある。
あの日、、
いきなり現れた男の子が、あたしの手をぎゅって握って
「僕が君のお兄ちゃんなるから、守るから」ということをいった事をうっすらと覚えている。
でも、
私の周りにはそれまでお兄ちゃんなんて呼べるような人なんていなかったはずなのに。
どうしてお兄ちゃんが現れたの?
今おもえば、
その日から
あたし達は4人家族として暮らしてきたんだと思う。
でも、
あたしは幼かったし
その記憶が曖昧でうやむやなものだったから
「お兄ちゃん」が、
「お義兄ちゃん」だという、ちゃんとした確信がなかった。
本当にあたしの記憶が正しいのかわからなくて‥
でも‥、どちらであろうとも、
一緒に暮らしている家族の中の
「お兄ちゃん」。
家族だからって思ったから区別を付けようと
「お兄ちゃん」
とはっきりよんだんだ。
線引きをしたかったの。
家族という輪の中にお兄ちゃんをいれるために。
作られた家族なんかじゃなくて、当たり前の家族として生きていこうと思ったから。
だから、期待させるようなことしないで。
お兄ちゃん‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
あの日、
酒に酔って水城の部屋に入った事件があってから、オレ達の
仲はギクシャクしている気がするのは気のせいだろうか、、
まあ、二人とも受験が近くなっているからだという理由もあるだろう。
ちゃんと謝って仲直りはできたものの、何かシコリが残ったような‥
「水城、受験勉強はかどってるかぁ‥?」
勉強の疲れのリフレッシュとして
オムライスをツツキながら、隣で昼食を食べている水城に問う
「うん、まあまあってとこかなぁ‥でも予定通りには進んでるよ
」
黙々とオムライスを食べながら答える。
そーゆーお兄ちゃんは?
と、問い返され、
「あーそうだな、まあまあ順調‥」
受験勉強にもあきあきしてきたとこ、
なんていうくらい勉強したわけではナイですが、、
「‥頑張ろうねっ」
そんな水城の応援の声に、
「そうだな」
とにこやかに返事をする。
そして午後からの勉強も頑張ろうと気持ちを切り替える。
そんな風に長いようで短い受験が過ぎて
僕らは春を迎えた。