第4部*二人・密室
ごほん、けほっ
オレは朝から
咳が止まらず、しかも高い熱まででている水城の看病をしていた。
「水城、ご飯は食べれるか?」
「う、ん‥」
熱のせいでぼーっとした目線で答える水城。
「じゃあ、お粥作ってやる」
料理はあまりした事はないが、、煮るだけのお粥なら、食べれるような物くらいできるだろう。
そう思って・水城をベッドに寝かせてキッチンに向かう。
『ピンポーン。』
「はーい」
そういって玄関まで来客を出迎える、
「よーっす。遊びに来てやったぞ」
玄関にいたのは和也と流だった。
「お前んちでいいか?」
そういってジュースやらお菓子の入ったコンビニの袋を差し出してきた流。
や、よくないです。特に今日に限っては。。
せっかく水城と2人っきりの時間を過ごせると思ったのに。
こういう時に限ってやってくるのがこいつらだ。
「今日は水城ちゃんに会いに来たんだよー」
やっぱ水城目当てかっ!
「その水城が今日風邪で寝込んでるんだっつーの。だから帰っていただけるとありがたいんですが。」
丁寧にご帰宅を促してみるが、
「えー、そりゃ・水城ちゃんと遊びたいなぁっていう下心つきできたけどー、」
ペラッと鞄の中からプリント10枚ほどを出してオレに渡してくれる。
「これ、明日提出だったろ?お前教室に置いてったからわざわざもってきてやったんですけど。
しかもそれをやるのにオレらでさえ5時間はかかった。けど、今ならオレらの解説付きだぜ?!」
なんだか訪問販売の相手をしている気分になってきた。
っていうか、土曜日に持ってきてほしかったよ。。
とにかく場所を移動して話さねば。騒がしいのが水城の体に障ったら困る。
出かける事を伝えようと、
水城の部屋へいこうとしたらリビングで水城に会った。ふらふらした足取りが危なっかしくて駆け寄って支える。
「水城、オレ・ちょっと出掛けてくるけど‥」
「お兄ちゃん‥どっか、いくの?」
熱でうるんだ瞳でオレを見上げてくる水城。
‥‥‥‥。
「‥行きません。。」
そんな言葉がぽろりと口からでてしまう。
オレにとって大切な水城のいうことはとにかく無理をしてでも叶えてやりたい、というのはオレのエゴ。
「あ、でもオレの友達きてるんだ、騒がしい奴らだから外いって話してこようかと思ったんだけどー‥」
「いいよ、上がってもらってよ」
カスレ気味の声で水城が答える。
「一人で家にいるより全然いいよ」
にこっと熱を帯びた笑顔をみせる。
義妹じゃなかったらオレはベッドに押し倒していたかもしれないよーな笑顔。
オレの気持ちもしらないで、、
‥無防備すぎるっつーの、バカヤロー。。
「…というわけだから。
これからオレは水城にお粥をつくってやるんだ。忙しいから静かにしてろよ」
野郎共2人をリビングにあげて、注意を促す。
「あ、お粥つくるならコレもいれると良いんじゃないかなぁ。」
人様の家の冷蔵庫の中身を探りながら和也。
「大根の桂剥きなら得意だ」
いや、お粥に大根なんていらないから!どろどろなご飯にシャキシャキが入ってたら嫌です!
そんなこんなで男3人のクッキング☆が始まった。
1時間後、、
…なぜかお粥をつくるのに1時間もかかった。
ご飯を塩や野菜をいれて煮るだけの作業に1時間、、
しかもやけにどっと疲れた。もう、
「.疲れた」。
「じゃ、水城に渡してくる」
そういい2人をリビングに待機させ、できたお粥を水城の部屋へ運ぶ。
トントン、とノックをして水城の部屋へ入ってドアを閉めようとしたら。。
「こんにちゎー」
「失礼する」
って、何故か後ろからついてきた和也と流がひょっこりと水城の部屋のドアを開けてのぞいていた。
『乙女の部屋覗いてんじゃねーよ★』
なんて、
水城が毒舌をかますはずもなくー…
「初めまして、こんにちはっ」と失礼な二人組に、丁寧な挨拶を返した。
「君が、壱の妹?可愛いね」
おい、オレがいる前で口説いてんじゃねーよ、和也!
「本当に。これじゃあ壱がロリコ…いや、シスコンになるのも無理ないよな」
明らかにシスコンをロリコンと言って、言い直していた流。
違う、オレはシスコンだ!っていうかコンコンうるせー…じゃなくてっ、どっちでもないっつーの。
「あー、もういいだろう?」
部屋に男3人、しかも水城は無防備にもパジャマ姿だ。薄い布は、肩の細さや腕の細さまでを強調してしまう。
それに、
水城が他の男に笑顔を向けているところなんてみたくない。
「じゃー、またなんかあったらすぐ呼べよ」
そういって水城の部屋から和也と流を外へと押し出す形で出る。
「つーかお前等似てないな。」
唐突に流がそう言った。
冗談か本気かわからないが、壱にチョコを渡そうとする女子がいるわけだから、そこそこもてるような容姿をしている壱。
一目みて可愛いと思えるようなパッチリとした目、元気なツインテールの水城。
まず、目元からして似ていないわけで…他人からみても一目瞭然、なのだろうか。
本当の兄妹なんかじゃないんだから当たり前だが。
「…稀にそういう兄妹もいるだろ。」
そういって話題を変える。
「プリント手伝ってくれるんだろ?」
はいはい、といって黙々と解答を埋めていった。
「終わったー!!」
2人が解説をしてくれたおかげでプリントは3時間程で終えることができた。
気分転換に、ジュースでものもうと2人がもってきてくれたビニールの中からジュースを取り出す。
プシュッと小気味いい音をたてて缶をあけ、ごくごくと飲んだ。
が、なぜだか喉が熱くなる。頭がくらっとして、床に倒れた。
意識が遠のいていく中、和也と流の心配そうな声が聞こえた。
「おい、壱!?」
「大丈夫かよ?!ってかコレ、発泡酒じゃん?」
は、酒?オレ酒飲んだ、のか…
そこで、意識がとぎれた。
Σどかっ
床に叩きつけられたかのような衝撃で壱は飛び起きた。
「んな!?」
驚いて頭を上げるが酒の酔いが続いているのかくらくらした。
状況を把握しようと辺りを見渡すと、水城の部屋だった。
なしてオレはここにいるんでしょか?
理解できず、クエスチョンマークだけが頭に浮かぶ。
直後、
「お兄ちゃんの・ばかああーっ」
水城の声が上から降ってきた。
へ?見上げると、水城が枕をぶん投げてくる所だった。
そしてオレの顔に命中、、
訳もわからずオレは水城の部屋から逃げるように飛び出し、一旦・自分の部屋へ避難する。
ズキズキする頭で思考を整理しようととりあえず時間を確認する。
携帯を開けると、午後6時だった。
和也と流からは、帰る、というメールが4時30に入っていた。
この空白の時間に何があったのか、まったく記憶がない。
でも水城の様子がおかしかったわけで。
顔を火照らせ、しかも目が潤んででいたような…??
果たしてそれは風邪のせいだけだったのだろうか、、?
そして思う。。
…オレは一体、水城になにをしたんだろうか